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※2021年1月19日 日刊ゲンダイ1面 紙面kリック拡大
※2021年1月19日 日刊ゲンダイ2面
【悪夢の自民党・菅政権】
— 笑い茸 (@gnXrZU3AtDTzsZo) January 20, 2021
国民に広がる「不安」と「絶望」
しゃべればしゃべるほど国民感情を逆撫で pic.twitter.com/PNyfzisx89
※文字お越し
一体なにを言っているのか。18日行われた菅首相の施政方針演説。やたらに「安心」と「希望」が強調されていたが、国民は怒り、呆れ、絶望したのではないか。
深刻化するコロナ禍に対して、どんな手を打ち、どんなメッセージを発するのか注目されたが、最後まで楽観論に終始し、具体策はゼロだった。しかも、相変わらずの棒読みである。
呆れ返ったのは、この4カ月間、新型コロナウイルスの感染爆発を招いた“戦犯”のくせに、冒頭から「政権を担って4カ月、全力で駆け抜けてまいりました」と自画自賛したことだ。さらにつづけて、「私が、一貫して追い求めてきたものは、国民の皆さんの“安心”そして“希望”です」と、ヌケヌケと言い放った。さすがに野党席からは「対策が後手後手だろう!」「スピード感がない!」とヤジが飛ぶ始末。実際、「Go To」に執着し、「緊急事態宣言」の発令を最後まで嫌がり、国民を不安のドン底に落としながら、よくも「安心」などと口にできたものだ。
肝心のコロナ対策も、「徹底的な対策を行っております」「一日も早く収束させます」と豪語したが、並んだのは「飲食店への時短要請」「20時以降の外出自粛」など。目新しい対策は全くなかった。
総理就任後、初の通常国会に臨む施政方針演説が、この程度とはどうしようもない。
「長年、裏方を務めてきた菅首相は、もともと表に出て堂々と話ができるタイプではありません。ただ、それにしても中身がなく、国民の耳目をひくような発言がなかった。コロナ対策を巡っても、明るい将来像を示すような言葉は皆無。いまだに東京五輪について『人類が新型コロナに打ち勝った証しに』と繰り返しているのだからどうかしています。過去、世界で蔓延した感染症を振り返ると、終息に2年はかかっている。本当に『打ち勝った証し』にしたいなら、『2024年以降へのスライド開催が可能か検証する』などと世界中がハッとする発言をするべきでした」(高千穂大教授・五野井郁夫氏=国際政治学)
さらに、演説の終盤では、唐突に政治の師・梶山静六元官房長官の言葉を紹介。「(国民負担をお願いする政策の)必要性を国民に説明し、理解してもらわなければならない」と言われたことを明かしたが、まったくの意味不明。あまりの唐突さにあっけにとられたのか、議場も静まり返っていた。
国民の思いと「乖離」
いま国民のなかには、「不安」と「絶望」しか広がっていないのではないか。なにしろ、感染者は連日、過去最多を更新し、医療崩壊は目前である。経済も動かない。これでは「希望」を持てるはずがない。
恐らく、多くの国民は、菅がしゃべればしゃべるほど、「覚悟が見えない」「説明が足りない」「メッセージが伝わらない」「イライラする」と、感情を逆撫でされているに違いない。それもこれも、国民の思いと、大きく乖離しているからだ。
国民が望んでいることは、ハッキリしている。先手、先手による徹底したコロナ対策だ。朝日新聞が昨年11〜12月に行った世論調査でも、「経済と感染抑制のどちらを優先すべきか」について、感染抑制が69%と経済の26%を大きく上回っている。なのに、菅政権は相変わらず「経済回復」に色気を持ち、コロナ終息との“二兎”を追っているのだから、どうかしている。医療崩壊が迫っているのに、経済を動かせるはずがないだろう。危機に臨むリーダーに求められるのは、正確な現実認識だ。菅は現実が見えていないのではないか。
「経済を回すというのなら、まずは新型コロナの脅威を徹底的に『撲滅』すること。それが早道です。そのためには、科学的な『安全』に加え、国民の『安心』が必要です。専門病棟の造成をはじめとした病床確保はもちろん、国民の『安心』を得るには、幅広いPCR検査の実施も必要でしょう」(五野井郁夫氏=前出)
ところが、菅政権は補償金が膨らむのを嫌がり、時短要請も緊急事態宣言の拡大にも躊躇している。現実を見ようともせず、ロクに説明もしない。これでは、国民がフラストレーションを強めるのも当然である。
民主党政権の方が危機対応はマシだった |
コロナ禍のような国家的な危機に直面しているのに、トップが菅首相なのは、最悪の巡り合わせだ。
そもそも自民党政権は、民主党政権の4年間を「悪夢だった」とおとしめているが、この8年間こそ悪夢だったのではないか。
本来、自民党は、庶民の声をすくい上げ、政策に反映させる政党だった。ところが、第2次安倍政権の誕生後、国民の声に耳を傾けなくなっている。声を聞くどころか、国民に向かって、安倍首相みずから「あんな人たちに負けるわけにはいかない」と敵意をむき出しにする始末だ。
安倍政治を継承した菅政権が、国民意識と大きく乖離しているのも、国民の声を聞こうとしないからだろう。
いま振り返ってみると同じ危機対応でも、よほど民主党政権の方が真摯にやっていたのではないか。たしかに、3・11の時の民主党政権の対応も褒められたものじゃなかった。菅直人首相は、メルトダウンした福島原発に乗り込み、東電社員に向かって「ここから撤退するのは認められない」とわめき散らし、現場を混乱させたと非難された。でも、なんとか原発事故を抑え込みたい、という熱意と責任感だけはあった。
共産党の小池晃書記局長も、最新号の「サンデー毎日」で、<そこは3・11の民主党政権より深刻だ。あの時は僕らも政権批判したが、彼らには受けて立つ構えはあった。記者会見を途中で打ち切るようなことはなかった。それに比べ菅体制の体たらくは正視に堪えない>と語っている。
法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)はこう言う。
「安倍首相にしろ、菅首相にしろ、新型コロナウイルスへの無策ぶりは目を覆うばかりです。よくも民主党を悪夢などと誹謗できたものです。3・11は巨大地震が発生したうえ、原発のメルトダウンという未曽有の危機だった。自民党政権でも対応は難しかったでしょう。もちろん、新型コロナウイルスも対応は簡単ではないですが、台湾や韓国は、感染拡大を阻止している。日本の感染拡大が止まらないのは、自民党政権が無策だからです」
社会の土台が破壊された8年間
この8年間、自民党がやってきたことは、ほとんどトランプ大統領の手法と同じだ。
トランプ大統領も、オバマ政権の実績をことごとく否定することで、支持基盤を固めてきた。
さらに、もう一つ同じなのが、外に仮想敵をつくることで求心力を高めてきたことだ。トランプ大統領は、中国を敵視し、アメリカファーストを掲げることで支持者を熱狂させてきた。
安倍政権も、中国、韓国、北朝鮮を敵視し、危機をあおることで支持者をつなぎ留めてきた。ヒドイのは、それほどの危機でもないのに、支持率が下落すると「北からミサイルが飛んでくる!」と、Jアラートを鳴らして危機を演出してきたことだ。
しかし、その結末は、日本もアメリカも惨憺たるものだ。どちらも社会が破壊されてしまった。
「トランプ政治の4年間は、支持者が議会に乱入し、5人が死亡した一件に凝縮されています。社会が分断され、フェイクニュースが飛び交い、民主政治のルールが破壊されてしまった。日本も同じです。総理大臣が国会で嘘をついても許され、公文書が改ざんされるなど、社会の土台が壊されてしまった。しかも、いざ新型コロナという“本物の危機”に直面した時、安倍首相も菅首相も、なにひとつ対策を打てない。やりたい放題やってきた、この8年間で危機対応力も衰えたのでしょう。完全に化けの皮がはがれた形です」(五十嵐仁氏=前出)
自民党政権は、民主党政権をコキ下ろしていれば、自分たちの無能を隠せると計算していたのだろう。しかし、とっくに国民は、自民党政権ではこの国難には対応できないと見抜いている。無能政権を代えないと、コロナ禍は拡大する一方だ。
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