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今年、菅政権と自民党の「終わりの始まり」がやってくる8つの理由 混乱の時代が幕を開ける
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/78945
2021.01.02 松岡 久蔵 ジャーナリスト 現代ビジネス
期待外れもいいところ――。おそらくこれが昨年、安倍晋三前首相から政権を引き継いだ菅義偉首相に対する国民の嘘偽らざる評価だろう。「叩き上げの田舎者」「凄腕の官房長官」などの報道で塗り固められたプラスイメージは、いざ菅氏が政権を担ってみると、答弁の拙さや政権運営のあまりの強引さなどにより一瞬で瓦解した。
新型コロナウイルス感染拡大にも歯止めがかからない中、今年は東京五輪が1年間の延期を経て開催される重要な年となる。菅政権への逆風が強まる中、2021年の政治がどのように動くか、8つの疑問に答えながら大胆に予想する。
解散総選挙はいつか?
今年の政局の最重要ポイントは、菅氏がいつ解散総選挙に踏み切るか、に尽きる。結論から言うと、今年7〜9月に開催される東京五輪終了後から10月21日に実施される予定の衆院選の間、自民党総裁選任期が終わりを迎える9月に行われることになるだろう。
昨年9月の菅政権発足当初から、(1)翌10月の臨時国会直前、(2)今年1月の通常国会開会招集日、(3)3月下旬ごろの21年度予算成立後、(4)7月の東京都議選とのダブル選、(5)東京五輪後の9月、という5つの解散シナリオがささやかれてきた。
まず最有力シナリオとされたのは(1)だが、組閣後の支持率が高かったため、またコロナ対策を優先し混乱を避けるため、見送られた。次に新年早々の解散に踏み切る(2)が議論されたが、安倍前首相の「桜を見る会」での政治とカネの問題、コロナ対策での指導力のなさによる支持率急落で解散どころではなくなった。
ここ最近浮上している(3)のシナリオについても、支持率が急回復しない限り現実味は薄い。(4)については、自民党と選挙協力する公明党に、人員やエネルギーの負担が大きくなる都議選と衆院選のダブル選挙を避けたい思惑があり、同山口那津男代表も否定的な考えを示していることから、菅氏がゴリ押しするとは思えない。
となると残るのは消去法的に、衆議院議員の任期満了に伴う今年9月ごろの解散――というわけだ。
支持率はどうなるか?
もっとも菅氏からすれば、(3)のタイミングで解散したいのは山々だろう。そうでなくとも、6月までの通常国会の会期中に解散できるのなら、したいはずだ。
理由はシンプルだ。現在の菅政権は、安倍氏退任後の自民党幹部の「密談」で生まれたものであり、菅氏本人の人気や実力に裏付けられたとは言い難い。永田町だけでなく、日本国民の信任も受けていないからである。
昨年9月、安倍氏が退陣を表明した翌日、自民党の二階俊博幹事長、森山裕国対委員長、林幹雄幹事長代理が菅氏と会談し、二階派が菅氏を支持。それを他の主要派閥も追認する形で菅政権誕生の流れができた。
総裁候補で唯一脅威とみられていた石破茂衆議院議員については、二階幹事長が総裁選での党員投票の手続きを省略し、当選の芽を潰した。こうした経緯から、菅政権は「密談政権」だとの批判がついて回る。菅氏からすれば、解散総選挙に打って出て国民の信を得、改めて政権の正統性を獲得する必要があるというわけだ。
しかし、筆者の見立てでは、通常国会の会期中に解散して勝算が見込めるほどの支持率を、菅政権がこれから獲得できるとは思えない。事実上の「自民党二階派+公明党政権」である以上、菅氏個人の色を出した政策を展開できる余地が「一丁目一番地」である総務省管轄の携帯電話料金やNHK受信料くらいで、あまりに少ないからである。
前述した「密談」の参加者である二階氏、林氏は二階派のトップと幹部で説明するまでもないが、森山氏も石原派に籍を置いているものの、実質的には二階派の重鎮であることはもっと知られていい。つまり、菅政権は「二階派政権」として発足したということだ。真っ先に菅氏支持を表明し、政権誕生の流れを作った功績のある二階氏と二階派からの要求を、菅氏が飲まざるを得ないのは言うまでもない。
これが最も顕著に出たのが「Go Toキャンペーン」の停止をめぐる騒動である。このキャンペーンは、そもそも観光族のドンである二階氏の働きかけにより生まれたものであり、当然ながら、可能な限り長期の存続が求められていることは言うまでもない。
板挟みの立場に置かれた菅氏は、コロナ感染拡大で年末年始のキャンペーン停止を決断したが、根回しが不十分だったために二階派幹部からは「勝手なことしやがって」と批判される始末。今年もよほどの感染拡大に見舞われない限り、Go Toの「中止」は検討されず、「再開→感染拡大→一時的な停止→再開→……」のループを繰り返すとみられる。その間、国民からの「結局、二階氏の言いなり」「カネの方が人命よりも大事か」といった批判は消えず、支持率をジリジリと引き下げる要因となるだろう。
バイデン政権と上手くやれるか?
外交面でも、米国では今月20日にも対中国外交で強硬な姿勢を示すバイデン政権が誕生するが、親中派筆頭の二階氏を政権の後ろ盾とする菅氏が、歩調を合わせるのは難しい。尖閣諸島周辺などでの中国の膨張主義が激しさを増す中、目に見える形で抗議もしない日本の姿勢に、米国は納得しないだろう。
そうなれば、表面上は親密さをアピールすることはできても、外交的な協力を得るのは困難になる。これが陰に陽に「外交下手の菅政権」との評価につながるのは間違いない。菅氏は東南アジア諸国などとの関係を強化し、外交能力をアピールしようとするだろうが、支持率向上の材料としては弱い。
ウルトラCとして、菅氏のライフワークである北朝鮮拉致問題の解決に向け、日朝首脳会談開催にこぎつけるというシナリオが考えられるが、少なくとも東京五輪開催までは山積みの政策課題と向き合わねばならず、慎重な政権運営を求められる中、実現性はゼロだろう。
公明党との関係はどうなるか?
公明党については、今や「公明の選挙協力なしでは、衆院選での自民党の単独過半数は怪しい」(全国紙政治部記者)と言われ、解散総選挙を控える菅氏が逆らえるはずもない。それがよくわかるのは、直近の「後期高齢者医療制度」をめぐるやり取りだ。
75歳以上の後期高齢者の医療窓口負担を1割から2割に引き上げる所得基準について、菅氏は「170万円以上で絶対に譲らない」という姿勢を示したものの、公明党が「240万円以上」で譲らず、最終的に「200万円以上」という折衷案での大筋合意に追い込まれた。
菅氏が最も重要視していた「将来世代に負担を残さない」という政治的信念ですら、低所得者や高齢者の支持が厚い公明党の要望の前には、突き通すのは難しいことが証明された。安倍政権における集団的安全保障の議論でも公明党の存在感が目立ったが、このように「与党内野党」としての公明党がいる以上、「少なくとも今年の秋までは、公明党の政策要望を丸呑みせざるを得ない」(自民党ベテラン議員)のが実情だろう。
総選挙、自民党の議席数は?
菅氏が携帯電話料金とNHK受信料の値下げを強引に進めているのは、単純に「自分の成果」として誇れるのがそれしかないからだ。不妊治療の助成金引き上げも、社会的には意義のあるテーマだが、政権支持率の引き上げには寄与しないと言わざるを得ない。脱炭素は目標を掲げただけで、実現は当面先であり、短期的には政権にとってプラスにもマイナスにもにならない。
そうなると、「通常国会を乗り切り、東京五輪を成功裡に終わらせた実績を携え、目玉政策であるデジタル庁の9月発足による期待感を解散総選挙のバネにするシナリオ」が最も合理的となる。
とはいえ、通常国会でも政治とカネの問題が追及されるのは間違いなく、「伝える力」を著しく欠く菅氏が守勢に立たされるのは避けられない。菅氏本人のカネ絡みの話が出てくれば、途端に窮地に追い込まれるのは目に見えている。
「無難に乗り切る」ことですら、今の菅氏には非常に高いハードルであり、困難な国会運営を強いられることになるだろう。
その秋の解散総選挙の結果だが、筆者は「現有の282議席から20〜30議席は失うものの、自民党の単独過半数は維持される」とみている。
菅政権の現状を、発足時には高い支持率を誇ったにもかかわらず、リーマン・ショックの影響を受け、解散総選挙に大敗し下野した麻生政権に似ているとする向きは多いが、当時は野党として旧民主党が存在した点が決定的に違う。
民主党が力量不足を露呈し、第二次安倍政権が誕生して以降、政局とは「自民党内の政局」を指すようになったほど、野党不在の状況が続いてきた。コロナの収束がたった1年で見通せるとは思えず、国民も「混乱」より「安定」を求める中で、今秋時点での政権交代など起きるはずがない。
「安倍再々登板」はあるのか?
さて、解散総選挙の結果、ひとまず菅政権が続くことになるだろうが、菅氏にとって本当の勝負はそこからだ。東京五輪の成功という大目標があってこそ、他派閥は「菅下ろし」に動かないだけであって、細田派・竹下派・麻生派の3大派閥が菅氏と一定の距離を保っている現状に変わりはない。81歳の二階氏がカネの差配と公認権を含む人事権を握る幹事長ポストに、歴代最長記録を更新しながら就任し続けていることも、自民党内の軋轢を生んでいる。
2021年9月から2024年9月までの次の自民党総裁任期中は、現在のような「自民党一強体制」を維持し続けることが自民党の課題となる。昨年までは安倍、麻生、二階、菅の4人の存在が政府と自民党をブレなくまとめていたが、安倍氏が退場した今では、菅氏がかろうじて均衡させている状態だ。2024年までの3年間、この状態が続くとは考えづらい。
もし現在のような勢力図が2024年まで続くとすれば、安倍氏が短期リリーフで再々登板、というシナリオが有力だ。退任時の涙ながらの会見で安倍政権の支持率が急回復し、また後継の菅政権の支持率をも上昇させたことを考えると、評論家や報道関係者が考えるよりも国民全体の支持は低くない。自民党内で再び安倍氏を担ぐ機運が生じることも十分にあり得る。
また、今後3年間は二階氏の引退が本格的に現実味を帯びる。すでに幹事長の実務をこなすには体力的な限界を迎えつつある。二階氏の引退は二階派全体の分裂と自民党幹事長ポスト争いに直結するため、影響は甚大だ。
自民党全体の重石となっている麻生氏も、同じく80歳と高齢で、二階氏と同時期に引退する可能性が極めて高い。菅政権終了時が、自民党一強を支えた重鎮が一斉に引退する一つの契機となるだろう。
「ポスト菅」は誰なのか?
ポスト菅時代の2020年代後半は、自民党の人材不足が一気に露呈する時代となる。リリーフの可能性がある安倍氏を除けば、主な総理総裁候補になるのは(1)加藤勝信官房長官、(2)河野太郎行革担当相、(3)茂木敏充外務相と、いずれにせよ一気に小粒になる。
筋から言えば、菅氏から禅譲されるべき(1)の加藤氏だが、「事務屋として優秀なだけで、リーダーなど論外」(自民党ベテラン議員)との評価が定着しているため、首相は厳しい。(2)と(3)はとりあえず50代後半〜60代半ばの世代で目立っている2人だが、どちらも人望のなさがネック。河野氏は菅氏と同様、メディアがかなりプラスイメージに偏った報道をしていることから、もし首相となっても就任早々馬脚を現すのは間違いない。党内の状況を考慮すれば、どちらかといえば茂木氏が有力だが、いずれにしても短命にしかならないだろう。
こうした後継者不足に起因するゴタゴタの後、自民党の分裂プロセスがいよいよ本格化するだろう。筆者は、その流れが決定的となるのは小泉進次郎内閣退陣のときだと予想している。「若い世代のリーダー」として喧伝されてきた彼の能力と見識のなさは、一昨年の環境相就任直後から明らかになった。おそらく自民党は今後、どこかで小泉氏を看板として担がざるを得なくなるだろうが、国民の期待感が高いだけに、失敗に終われば自民党はいよいよ政権与党として立ち行かなくなるだろう。
そうなれば、小池百合子東京都知事が発足させた「希望の党」のような、ポピュリスト政党が一気に議席を獲得する事態が現実味を帯びる。そこに自民、立憲民主などの既成政党の一部が合流する形で「第三極」を形成することになる。
令和新選組が先の参院選で2議席を獲得したのは、その流れの先触れと言えるだろう。ロンドンブーツ1号2号の田村淳氏のように、政治や社会問題への意識が高い芸能人(特にお笑い芸人)が立候補し、新党立ち上げに参画すれば、一気に政局が動くことになる。コロナの影響もあり、本格的なネット選挙が2020年代半ばまでに解禁される可能性は非常に高く、これもポピュリズム政党の台頭を後押しするだろう。
公明党の動向にも要注意だ。高齢化が進んでおり、戦略の変更を余儀なくされるため、2020年代後半からは現在のように自民党一辺倒ではなく、他党との連携も模索してゆくだろう。公明党は東京都では都民ファーストの会、大阪では大阪維新の会と組んでおり、「権力をとれるのならどことでも寝る」(全国紙政治部記者)ため、最も注視しなければいけない政治勢力といえる。
日本は荒波を乗り切れるか?
日本国内の政局にとどまらず、2020年代半ば、2024〜2025年には世界的にも様々な大変化が訪れる。米国はバイデン政権の2期目を目指す再選選挙があり、ロシアはプーチン大統領の人気満了にあたる。
プーチン氏をめぐっては、2036年まで任期を延長できるように憲法改正がなされたため「終身大統領を目指すのでは」との憶測も出るが、「自らの出馬を制度的に可能とすることで求心力を保持し、政敵からの攻撃に備えるとともに、後継者争いを抑制して権力移譲のソフトランディングを図った」(外交筋)との見方を踏まえた2024年引退説を筆者は支持する。そうなった場合、日本は北方領土を含めた対ロ外交戦略そのものの変更を余儀なくされることになるだろう。
新年早々から、2020年代全体を見渡した自民党の分裂プロセスという少々気の長い話をさせていただいたが、おそらく大筋の流れは間違っていないはずだ。とりあえずは目先の東京五輪まで、菅政権が待ち受ける荒波を乗り切れるかに注目したい。
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