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天国か地獄か。希望的観測が招く菅政権「将棋倒し」Xデー
https://www.mag2.com/p/news/480315
2020.12.29 高野孟『高野孟のTHE JOURNAL』 まぐまぐニュース
日本でも世界でも感染拡大の勢いが止まらないまま、新型コロナウイルスに大きく翻弄された1年が終わりを迎えようとしています。今回のメルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』では、ジャーナリストの高野孟さんが、2021年の日本と世界を占います。高野さんは感染状況を踏まえ、完全な形での東京五輪の開催は不可能と、商売優先でマスコミが口にしないことをまず指摘。菅政権の行く末は、GoTo事業の再開可否で最初の分れ道を迎え、安倍前首相との対立も加わって「将棋倒し」が起こる可能性に言及します。国際情勢については、バイデン新政権が目指すべき多国間主義のあり方について論じています。
2021年の日本と世界――コロナ禍の収まり具合が決める天国と地獄
2021年の世界と日本がどうなるかは、専ら、コロナ禍がいつどのように収まるのかそれとも収まらないのかにかかっていて、それがどうなるか皆目見当がつかないので、来る年を占うのはむずかしい。
止めようもない感染拡大
12月27日現在の世界の感染状況を、米ジョン・ホプキンス大学の集計に基づいてNHKのコロナ特設サイトがまとめているところによれば、100万人以上の感染者を出している最悪状態の国は米国(累計感染者1898万263人、死者数33万1909人)を筆頭に、ペルー(同100万5546人、3万7368人)までの17カ国で、そのうち年末・年始に向かって日々の感染者数発表がどんどん増え続けているのは米国、ブラジル、ロシア、イギリス、ドイツ、コロンビアなど。
他は横這いか下降傾向にあるものの、フランス、イタリア、スペインなどは乱高下を繰り返しており、これまでは対策の優等生とされていたドイツが10月以降、急激な感染拡大に見舞われるなど、一向に収まる気配を見せていない(図1)。
日本は27日現在、感染者22万1247人、死者3256人で、感染者の絶対数による世界ランキングでは41位あたりにあるが、年末・年始に向けて毎日のように感染者が「過去最高」を更新し続けている。つまりは増大を抑えることができておらず、米英露などと同じ失敗国家グループに属すると判定せざるをえない(図2)。これが止まる見込みがあるのか。
同じくNHK特設サイトでは11月に、AIでコロナに関する英語論文約20万本を全文読み込んで特に影響力が大きい世界トップクラスの専門家14人を選出し「収束は一体いつになるか」(図3)を問うた。すると、いずれも現在開発が進んでいるワクチンが有効であったという共通前提で、21年8〜9月と答えたのが4人、21年内もしくは末までが5人、22年の春〜夏が2人、22年内が1人、23年以降が1人、収束しないが1人だった。これ以降に、イギリスや南アフリカで新しい変異種が出現し日本にも波及し始めているので、今の時点で聞けば、さらに遠くまで収束予想が先送りされるに違いない。
五輪開催は到底無理
ということは、いま欧米で投与が始まったワクチンが重大な副作用など引き起こさず順調に普及し、日本にも来春以降に豊富に供給されるようになってたちまち効果を現したとしても、収まったと言えるようになるのはどんなに早くても来年8〜9月が精一杯。その数カ月前に国内で完全収束させて「さあ何の心配もありませんので、世界のみなさん、五輪にお出でください」と言える状況を作ることは不可能だということである。
仮に受け入れ国として日本がその状況を作り得たとしても、世界各国はそれぞれの事情を抱えて四苦八苦している真っ最中で、「我が国は残念ながら参加できません」といった表明が相次ぐであろうことは目に見えている。
つまり、五輪をまともな形で開くのが不可能であることは、すでに確定している。それをそうは言わずに「できる」という希望的観測を繋ぎ続けようとするのは、政府や東京都や組織委員会の立場としては、ある意味で仕方がないとして、マスコミまでが、これをまさに忖度というのだろう、その真実をズバリ語ろうとしないのは、彼らもまた五輪で稼ごうという思惑があるからで、まさに世も末の権力とメディアとの癒着状況である。
菅政権の先行きは不透明
菅義偉政権にとって、最初の分れ道は1月11日に訪れる。この日がGoToトラベルの一時全面停止の期限で、さてその先どういう施策を打ち出すのか。専門家や自治体からは、その時点までに何が達成されたらそれを解除し、そうでなければ延長するのか、事前に早めに基準をはっきりさせてもらいたいという要望が寄せられているが、菅はそれに応える用意がないので、ここで最初の混乱が起きるだろう。
本当を言えば、「経済活性化とコロナ対策の両立」と言いながら実際には経済優先でGoToキャンペーンに前のめりになってきた「いのちよりカネ」路線を切り替えて、「カネよりいのち」路線にきっぱりと転換することが肝心だが、菅にはそれはできない。それどころかむしろ、すべてが中途半端でメリハリが効かないのが菅流であることがますます露わになる中で、1月11日より先の展望をシャキッと打ち出して国民にキリッと覚悟を呼びかけるようなことは到底難しく、そこから政権の崩れが始まる可能性のほうが大きい。
本誌が最初から指摘しているように、この政権は「まあ何とかなるだろう」という希望的観測の連鎖で成り立っている。経済とコロナ対策の二兎を追うことを続けていても感染はそれほど酷いことにはならないだろう、そのうちにワクチンが間に合って夏までには収束に向かうだろう、そうすれば五輪はどんな形であれ何とか開催に漕ぎ着けられるだろう、苦難を乗り越えて五輪をやり遂げた首相ということであれば9月総裁選は無投票再選ということになるだろう、それを背景に10月総選挙に挑めば勝利は間違いないだろう……ということで、これが1月11日でコケれば、後は将棋倒しのようにバタバタと崩れていく。
剣呑さを増す安倍と菅の関係
正面でのコロナ禍対応だけでも潰れそうな菅にとって、もう1つの難問は背面での安倍晋三前首相との暗闘である。菅を後継指名したのは自分だと安倍は思っていて、それは何よりもサクラ疑惑をはじめ数々の薄汚いスキャンダルをこのまま蓋をしてくれるのは長く官房長官として仕えてくれた忠臣=菅しかありえないという打算に発したことである。
その安倍の上から目線の傲慢が、11月11日の「私なら1月解散」という、現職総理に対してこれ以上の無礼はないとも言える軽口になって表れ、菅はおそらくプッツンしたことだろう〔注〕。元々菅は安倍の言うなりになるつもりはなく、むしろ安倍傀儡のように思われるのが嫌だから、ことさらに安倍離れを演じようとしてきた。それがこの安倍暴言でプッツンし、サクラ疑惑での検察による安倍事情聴取、弁明記者会見、国会招致を止めようともしない官邸の態度となって発現したのだろう。
こうなると、安倍自身をはじめその応援団の右翼どもはいきり立って菅潰しを企てるだろう。すでにその兆候は、安倍熱烈支持の一部右翼雑誌には現れていて、狂ったような安倍礼讃が繰り広げられている。このため、菅を「安倍に忠実でない」という角度から批判して引き下ろそうとする力も働くことになろう(図4)。
〔注〕本誌は一貫して、首相が好きな時に衆議院を解散できるとする、憲法第7条4項の曲解に基づく「伝家の宝刀」論を廃棄すべきだと主張してきた。
バイデンは米国を救えるか
さて、1月には米国でバイデン政権がスタートする。トランプがブチ壊したすべてを修復するのは容易なことではないが、少しずつでも米国の内外政が正常な状態を取り戻せるよう取り組むしかない。対外政策で言えば、温暖化防止のパリ協定への復帰、世界保健機関(WHO)への復帰、イラン核合意へも復帰、世界貿易機関(WTO)や北大西洋条約(NATO)への嫌がらせの撤回、ロシアとの新戦略兵器削減条約の延長などが「正常化」の中身で、それを通じてトランプの「米国第一主義」という名の単なる我が儘路線から撤収して「多国間主義」の同盟国重視路線を追求することになろう。
問題は中国との関係がどうなるかである。日本でほとんど常識のように行き渡っている見解によれば、そのように日欧など同盟国と協調したり国際機関を尊重したりする多国間主義には転換するが、中国に対してはその主義は適用されず、トランプ時代と変わらぬ厳しい態度が続くものとされている。
例えば、日本経済新聞12月25日付「大機小機」欄は「バイデン政権でも変わらないのは、米中の覇権争いだろう。とりわけ米欧連携を背景に、人権問題で対中姿勢を強化することになる」と述べている。あるいは、バイデン政権の環境政策を論じた朝日新聞12月25日付の山内竜介記者の解説は、バイデンによって「“脱炭素”に向けた多国間協力の機運が高まる」けれども、「一方、主導権争いや取り組み方針などを巡って溝が出来れば、米中対立の新たな火種につながる」と述べている。
「多国間主義」の正しい理解
しかし、こういう言い方の中に大きな間違いがいくつか含まれている。第1に、トランプ時代の後半に米中対立が激化したのは事実だがそれを「米中覇権争い」と安易に呼ぶのは間違いである。なぜなら、16世紀のポルトガル、17世紀のオランダ、18〜19世紀のイギリス、20世紀のアメリカという、圧倒的な軍事力(特に海軍力)を持つ国こそが巨大な経済力を持つことが出来たという覇権主義の時代は、資本主義がグローバル化を競い合いフロンティアを奪い合うことができた一時期のみの属性であり、「資本主義の終焉」(水野和夫)と言われる今日では、米国が最後の覇権国であるにもかかわらず未だに自分をそう納得させることが出来ずにもがき苦しむ一方、中国は台頭しつつありやがて経済力で米国を追い越そうとはしているけれども、軍事力によるフロンティア強奪という旧来の方法によってそうなる訳ではないことを十分に自覚している。
従って第2に、今日における「多国間主義」とは、2つのことを意味していて、1つには、米国が自国がもはや突出したナンバー・ワンでも特別な地位を保障されているわけでもない、十分に強大ではあるけれどもいくつもある強大国の1つ、つまりワン・ノブ・ゼムでしかないという自己認識に立って自国を運営できるようになること。もう1つは、中国に対する徒らな恐怖心、警戒心、猜疑心、嫉妬心を捨てて、21世紀の新しい国際秩序の責任ある一員として中国を敬して招き入れることである。
バイデンの多国間主義がこういうものでないとすると、それは単に、日欧など既存の“同盟国”とのみ協力して中国包囲網を形成するという、安倍晋三の知性レベルと同程度の営みになって、米国の再生に失敗することになる。1月27日のバイデン初の一般教書演説でそこが見えるはずである。
さて、そこで、本来日本は、米中間の意味のないゴタゴタを調整し、真の多国間協調主義の原理に立つ21世紀的な国際秩序の形成に貢献しなければならないが、菅の知性欠如ではそれは到底無理と言わざるを得ない。
image by: 首相官邸
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早稲田大学文学部卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。現在は半農半ジャーナリストとしてとして活動中。メルマガを読めば日本の置かれている立場が一目瞭然、今なすべきことが見えてくる。
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