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※週刊新潮 2020年12月3日号 紙面クリック拡大
「桜を見る会」騒動、「安倍前総理」起訴される可能性を元特捜部が解説
https://www.dailyshincho.jp/article/2020/12060557/?all=1
2020/12/06 (Sun) 14:53:20 デイリー新潮 週刊新潮 2020年12月3日号掲載
“桜”と縁が切れない
「桜を見る会」騒動から1年の時を経て、その「前夜」の疑惑が新たな火種となりつつある。東京地検特捜部はすでに安倍晋三前総理の秘書にも事情聴取を敢行。検察の威信をかけた捜査は実を結ぶのか、花と散るのか。
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果たして、季節外れの桜は再び永田町に舞うのか。
読売新聞の1面に、〈東京地検 安倍前首相秘書ら聴取〉〈「桜」前夜祭 会費補填巡り〉という文字が躍ったのは11月23日のこと。
桜を見る会を巡る騒動についてはまだ記憶に新しいところだが、今回取り沙汰されているのは、その“前夜祭”についてだ。
昨年4月13日に行われた桜を見る会の前日、都内のホテルニューオータニで安倍晋三後援会が主催する前夜祭が開かれた。会場には、安倍前総理の地元・山口県下関市などから後援会関係者ら約800人が集まった。会費は〈お一人様 5千円〉である。
この前夜祭に“違法行為疑惑”があるとして、今年5月21日、法曹関係者が東京地検に告発状を提出。特捜部はこれを受け、後援会の代表でもある安倍前総理の公設第1秘書や、地元の支援者に任意で事情聴取を行っているという。
告発の呼びかけ人にも名を連ねる、神戸学院大学法学部教授の上脇博之氏が解説するには、
「ニューオータニのパーティープランは最低価格でも1万1千円とされ、会費の5千円は半額にも満たない。その差額分を後援会が補填したのなら、公職選挙法199条の5第1項に規定される“寄附の禁止”に違反します。また、政治資金規正法は、政治団体が会費制の催しを開いた場合、政治資金収支報告書に収支を記載することを義務づけている。同様の前夜祭は2013年から昨年まで過去7回開かれてきましたが、現在公表されている後援会の収支報告書には一切記載がありません。この2点の疑惑について、2018年分を東京地検に告発したのです」
「桜」問題が連日のように報じられていた昨年11月、安倍前総理は会見で、次のように釈明している。
前夜祭の会費はあくまでも〈ホテル側が設定した価格〉であり、〈受付で事務所職員が集金し、ホテル名義の領収書を渡した上で、集めた現金をホテル側に支払っている。支出は発生しないので政治資金規正法上の違反には全く当たらない〉。さらに、国会答弁では〈事務所側が補填したという事実は全くない〉とも述べている。
だが、上脇氏はこう言う。
「政治団体がホテルと招待客の間に介在したのは間違いなく、しかも、事務所が一旦、現金を受け取ったのなら収支報告書に記載がないとおかしい。それがない場合、政治資金規正法の不実記載罪に該当する疑いが濃くなります。仮に、勘違いなど、故意ではなく過失で報告書への記載を怠ったとすれば、不起訴となる可能性もある。しかし、前夜祭は長年にわたって常習的に不記載が続いていたわけですから、さすがに過失の弁明は通用しないでしょう」
加えて、読売の報道によると、特捜部は安倍前総理側から出納帳を、ホテル側からは明細書の提出を受けているという。
「特捜部が差額の補填に関する客観的な証拠を入手したのなら、秘書らが起訴されて有罪となることも十分考えられます」(同)
さる司法記者も、「特捜部は安倍前総理や公設第1秘書と共に告発状に名前を記された、後援会の会計責任者の立件を視野に入れているようだ」と明かす。
当の安倍事務所は11月23日、「刑事告発されたことを受けて説明を求められたので、捜査に協力し、真摯に対応している」とのコメントを発表した。
では、検察はどこに着地点を見定めているのか。
「不起訴」の可能性も
かつて東京地検特捜部で副部長を務めた、弁護士の若狭勝氏に尋ねると、
「今年5月の告発を受けて捜査を進めてきたのなら、年末までに処分がなされてもおかしくありません。ただ、政治資金規正法の不実記載は第一義的に会計責任者の責任が問われるため、具体的な関与が立証されない限り、そこから先にたどり着くのは難しい。また、政治家の責任を問うのなら公選法違反の方がやりやすいですが、前総理やその秘書を処罰すれば現在の政権にも影響を及ぼしかねません。正直なところ、いまの特捜部がそこまで腹を括れるのか疑問が残ります」
公選法違反の場合、費用を補填した目的や、誰の意図かを明らかにする必要があるためハードルは高く、徹底した捜査が求められる。
「検察審査会に申し立てをされる恐れもあるので、今後も特捜部は幅広く関係者への聴取を続けるはずです。とはいえ、前総理や秘書は不起訴処分となる可能性が高いのではないか。もし、秘書だけでも在宅起訴して罰金刑にできるなら、政治と距離を置く検察本来の秋霜烈日の姿に戻ったと、むしろ嬉しく思いますけどね」(同)
他方、国会で“桜”が返り咲くのは疑いようがない。
検察の覚悟が問われる(写真は林眞琴検事総長)
政治部記者によれば、
「野党にとっては願ってもないネタですよ。菅政権の発足以来、内閣支持率は50%以上で推移している。学術会議問題も支持率にはほとんど影響していません。もし年明けに衆院の解散があれば、野党は敗色濃厚のまま選挙戦に突入することになる。そのため、野党側はこの機に乗じて“桜問題”を蒸し返し、“反安倍”ムードを再燃させようとするでしょう。もちろん、安倍前総理に国会での説明を求めたところで、安倍政治の継承を掲げる菅総理がおいそれと応じるはずがありません。それでも野党側は“結局、菅政権も隠蔽体質だ!”と騒ぎ立てて支持率ダウンを狙うと思われます」
だが、昨年のような“バカ騒ぎ”が続くとは考えにくいとの指摘もある。
「安倍さん本人が起訴されるとは思えないし、前総理を追及したところで決め手に欠ける。そもそも、時系列が“逆”なのではないか」
とは政治部デスクである。
「今回の報道で特捜部がこれまで前夜祭の内偵を続けてきたことがはっきりしました。ただ、安倍さんが総理在任中からその動きを察知していたとすれば……。退陣の直接的な理由は体調問題ですが、それに加えて、検察による捜査の手が周辺に及ぶ前に職を辞したという考え方もできる。奇しくも、告発状が提出された5月21日は、“官邸の守護神”と呼ばれた黒川弘務・元東京高検検事長が、安倍前総理に辞表を出した日でもあります」
突如として浮上した検察の捜査は大輪の花を咲かせるか。はたまた形だけの徒花に終わるか……。
特集「『安倍前総理』桜前夜祭で検察捜査の着地点」より
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