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日豪のRAAはグローバルNATOを念頭に置いたロシアや中国との戦争準備
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2020.12.05 櫻井ジャーナル
アメリカ、オーストラリア、インド、そして日本の4カ国の海軍が北アラビア海で艦隊演習を始めた11月17日にオーストラリアのスコット・モリソンは東京で菅義偉首相と会談、その後で両者は日本とオーストラリアが相互アクセス協定(RAA)の大筋で合意したと発表した。
この協定は日本とオーストラリアの軍事演習や軍事作戦を迅速に行うためのもので、グローバルNATOを視野に入れている。NATOの事務総長を務めるイェンス・ストルテンベルグはNATO2030なるプロジェクトを始めると今年6月8日に宣言、NATOの活動範囲を太平洋へ広げ、オーストラリア、ニュージーランド、韓国、そして日本をメンバーにする計画を明らかにした。RAAはNATO2030と結びついているはずだ。
ところで、NATO(北大西洋条約機構)は1949年4月に創設された軍事同盟。最初のメンバー国はアメリカ、カナダ、イギリス、フランス、イタリア、ポルトガル、デンマーク、ノルウェー、アイスランド、ベルギー、オランダ、そしてルクセンブルク。北米の2カ国とヨーロッパの10カ国だ。
その半年後に中華人民共和国の建国が宣言されるが、その後に太平洋地域でもアメリカは軍事同盟を作り上げた。1951年9月1日にアメリカやオーストラリアやニュージーランドとサンフランシスコのプレシディオでANZUS条約に調印、同年9月8日に日本とアメリカは同じ場所で安保条約に調印している。このふたつの軍事同盟をアメリカは一体化させようとしているのだろう。
NATOが組織された目的はソ連軍の侵攻に備えるためだとされたが、当時のソ連には西ヨーロッパへ攻め込む能力はなかった。ドイツとの戦闘でソ連の国民は2000万人以上が殺され、工業地帯の3分の2を含む全国土の3分の1が破壊され、惨憺たる状態だったのだ。第2次世界大戦でソ連は倒されなかったものの、攻め込んだドイツと同じように疲弊していた。
この大戦で西ヨーロッパの国々は事実上、ドイツと戦っていない。西側で戦ったのはレジスタンスだが、その主力はコミュニスト。レジスタンスの活動が活発だったフランスやイタリアでコミュニストの人気が高かったのはそのためである。
そうした西ヨーロッパを支配するためにアメリカやイギリスの支配者の作り上げた組織がNATOにほかならない。大戦末期にアメリカやイギリスの情報機関はレジスタンス対策でジェドバラというゲリラ戦用の部隊を編成、大戦後にはその人脈を軸にしてウォール街はOPCを組織、後にそれがCIAの破壊工作部門になる。
そうした秘密工作を実行するための組織はヨーロッパでも作られ、NATOができるとその中へ組み込まれ、CPC(秘密計画委員会)の下で活動し始める。1957年になるとCPCの下にACC(連合軍秘密委員会)が創設され、ここが軸になったNATO加盟国に秘密部隊のネットワークが編成された。中でも有名な部隊がイタリアのグラディオ。1950年代から80年代にかけ、極左を装って爆弾テロを繰り返している。
NATO2030の考え方はハルフォード・マッキンダーが1904年に発表した世界制覇戦略と矛盾しない。イギリスを支配していた人々の戦略をまとめたのだろうが、それはともかく、彼はヨーロッパ、アジア、アフリカを「世界島」、イギリスや日本を「沖合諸島」、そして南北アメリカやオーストラリアのような「遠方諸島」、世界島の中心をハートランドと名付けた。ハートランドを支配できれば世界の覇者になれるというのだが、このハートランドはロシアを指している。
制海権を握っていたイギリスはユーラシア大陸の周辺部を支配、そこから内陸部を締め上げていくという戦略で、西端のイギリスから中東、インド、東南アジア、朝鮮半島を結び、東端が日本だ。イギリスは中東の空白地帯にイスラエル(1948年)とサウジアラビア(1932年)を建国、日本列島を侵略の拠点にし、日本人を傭兵として使うために働きかける。それが明治維新だと考えるべきだろう。イギリスからユーラシア大陸の周辺部を結び、日本に至る三日月帯を支配するためにグローバルNATOは作られようとしている。
2015年6月、首相だった安倍晋三は赤坂にある赤坂飯店で開かれた懇親会で「安保法制は、南シナ海の中国が相手なの」と口にしたという。安倍はアメリカの支配者が行おうとしていることを理解していた。そうした発言の直前、安倍と会談した中国の習近平国家主席は軍部に対し、南シナ海と台湾の監視を強め、戦争の準備をするように命じたと伝えられているが、習近平もアメリカが行おうとしていることを理解したということだろう。
その直前、アメリカのバラク・オバマ政権はウクライナでネオ・ナチを使ったクーデターで民主的に選ばれた政権を倒し、香港では反中国運動、いわゆる佔領行動(雨傘運動)を組織して中国を揺さぶっている。2015年以降、中国とロシアが接近して戦略的同盟関係に入ったのは当然だ。沖縄で起こっている出来事の原因もここにある。
ドル体制を柱とするアメリカの支配体制が揺らいでいると少なからぬ人が指摘している。このまま手を打たないと2030年まで持たないだろうという。それまでに体制を「リセット」する必要があるのだ。
すでに政治、経済、技術の分野を舞台にした戦争は始まっているが、軍事的な衝突が始まる可能性もある。そうなれば多くの人も気づき、反対の声を上げる人も出てくるだろう。そうした「反戦」の声を封印する準備をする必要もある。彼らにとって好都合なことに、世界では現在、「新型コロナウイルス」なる悪霊への恐怖によって収容所化が進んでいる。戒厳令が敷かれつつあるとも言えるだろう。
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