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※2020年12月4日 日刊ゲンダイ1面 紙面クリック拡大
※2020年12月4日 日刊ゲンダイ2面
【「秘書の略式起訴」では犯罪者天国】
— 笑い茸 (@gnXrZU3AtDTzsZo) December 5, 2020
逃げ回る安倍 ワルがのうのうの世も末 スットボケ菅
日刊ゲンダイ pic.twitter.com/SFpsZuhIQJ
※文字お越し
7年8カ月もの長期政権の終焉から、3カ月足らず。こんな短期間で歴代最長記録を塗り替えた前首相が、東京地検特捜部から呼び出しを受けるとは前代未聞だ。
「桜を見る会」前夜祭の費用補填を巡り、特捜部は安倍前首相の公設第1秘書を立件する方針を固めた。安倍本人にも任意の事情聴取を要請したという。
安倍は3日、聴取要請について「聞いていない」と国会内で記者団にシラを切ったが、どうせ聴取にも「秘書のせい」で押し通すに違いない。
布石はもう打ってある。大手紙に「安倍氏周辺」とやらが吹きまくったリーク情報だ。昨年末に安倍が国会答弁に備え、秘書に「会費以外の支出はないか」と念を押すと、秘書は「払っていない」と虚偽の報告。秘書は「政治資金収支報告書に記載すべきなのに、していなかったため、安倍氏に(補填はないと)答弁してもらう以外ないと勝手に判断した」と話しているといった説明のことである。
つまり安倍本人は「寝耳に水」と訴えたいようだが、こんなマヌケな話があるものか。「安倍氏周辺」の主張を真に受ければ、安倍は1年以上も秘書にダマされていたことになる。これほど危機管理能力の薄い首相に、国民は7年以上も命を預けていたわけだ。それだけでも非常に危うい。
また、補填額は昨年までの5年間で計916万円に及ぶ。それだけの金の工面を議員に何の相談もせず、一介の秘書の独断でできるのか。誰もが耳を疑う筋書きでも、安倍一味は乗り切れると、タカをくくっているのだろう。
なぜなら、安倍政権時代に立て続けに勃発した「政治とカネ」を巡る疑惑を散々、特捜部は見逃してきたからだ。
「ドリル優子」の二の舞だけは御免だ
中でも、今回と近いのは、2014年に発覚した小渕優子元経産相の政治資金事件だ。罪に問われたのは、安倍の秘書と同じ政治資金規正法違反。地元有権者を都内に招いて開催した「観劇会」などの実費と、収支報告書の記載にはナント3億円以上ものズレがあった。特捜部の捜索直前にパソコンのハードディスクをドリルで破壊し、証拠隠滅も図っていた。
当時、小渕は「私自身、分からないことが多すぎる」と他人事のような弁明に終始。3億円ものカネの動きを本人が把握していないとは不自然すぎるが、検察捜査は大甘だった。小渕本人を任意で聴取したものの、「関与が認められない」として不起訴処分。結局、報告書の作成に関わった元秘書2人を在宅起訴しただけで“一件落着”にしてしまったのだ。
それでも、虚偽記載額の大きさや悪質性を考慮し、刑事裁判に持ち込んだだけ、マシかもしれない。前夜祭の一件は、法曹関係者からも「検察官が簡易裁判所に略式命令を請求。非公開の書面の審理だけで刑を言い渡す『略式起訴』になるのでは」との声が上がる。
歴代最長首相の任意聴取といえど、しょせん“ドリル優子”と同じ単なるセレモニーで終わるのか。あとは毎度のシッポ切りで秘書を略式起訴。公判も開かず真相は「やぶの中」なんてことになれば、この国はますます犯罪者天国になるだけだ。
不起訴連発でタガが外れた無法集団 |
前夜祭問題を告発した全国の弁護士有志らは収支報告書の不記載だけでなく、公選法違反の捜査を求めている。安倍側が選挙区内の有権者の参加費を補填すれば、公選法が禁じる「買収」にあたるとの見立てだ。
公選法違反に問われれば、政治家本人にも累が及ぶのは河井夫妻の事件を見ても明らか。だが、特捜部の捜査は現状、不記載にとどまり、本気度が疑わしい。政治資金に詳しい神戸学院大教授の上脇博之氏が言う。
「いくら非常識な安倍氏とはいえ、高級ホテルの立派な宴会場で有権者を飲み食いさせれば、1人5000円の会費で賄い切れないと感づいたはず。自分は一切、何も知らず秘書に罪をかぶせるのは、あり得ません。そもそも1000万円近い補填の原資はどこから捻出したのか。説明できないカネなら新たな罪が芋づる式に出てくる可能性もある。だからこそ、特捜部には徹底捜査と正式な起訴が求められます」
大体、今の検察には、政治の恐るべきモラル低下を生み出した自覚はあるのか。18年10月から昨年9月まで安倍政権の農相だった吉川貴盛衆院議員が、鶏卵業界から便宜を図ってもらう目的で現金500万円を提供された疑いだって、その一例である。
今回の疑惑は、検察が河井夫妻事件の関係先として大手鶏卵会社を家宅捜索したのを機に浮上したというから、まさに自民の腐敗は芋づる式。吉川は大臣在任中に大臣室で、2度も現ナマを受け取った疑いがもたれているから、ア然だ。
この報道に触れ、安倍の側近中の側近の顔を思い浮かべた人も多いだろう。特捜部があっせん利得処罰法違反で強制捜査に乗り出しながら、不起訴処分とした「元祖・現ナマ大臣」の甘利明元経済再生相のことだ。
倫理観を失った社会は必ず滅びる
16年に甘利事務所が千葉県内の建設業者から都市再生機構の補償交渉を口利きした見返りに現金を繰り返し受け取った疑いが浮上。秘書と業者側のやりとりは全て録音され、甘利自身も大臣室での現ナマ授受を認めた。これだけ証拠が揃いながら、交渉を担った秘書を含めて立件が見送られればタガも外れる。
大臣辞任以降、「睡眠障害」とうそぶいて国会を長期欠席した甘利に倣い、吉川も「不整脈」を理由に雲隠れとモラル喪失の連鎖だ。
前出の上脇博之氏はこう言った。
「黒川弘務元東京高検検事長の暗躍も指摘される甘利氏の不起訴が、『悪しき前例』となったのは疑いようもありません。今の自民党は現職大臣が平然と大臣室で現ナマを受け取れるほど、モラル崩壊が進んでいます。隠蔽、改ざんが当たり前だった安倍政権下では類は友を呼ぶで、倫理観を失った政治家がこぞって集い、大臣を選んでいた。2年前の総裁選で石破元幹事長が掲げた『正直、公正』という当たり前のスローガンを寄ってたかって潰しにかかったことからも、自民党のモラル崩壊は歴然です」
いくら法律上の罪に問われなくとも、安倍の道義的責任は消えない。補填の原資はもちろん、あれだけ国会で追及を受けながら、本当に秘書任せで事実関係の確認を怠ったのか。直接、ただすべき疑問点は山積なのに、安倍本人はいまだに記者会見も開かず、説明責任から逃げ回る。数えきれないほど虚偽答弁を繰り返しても、自民は「捜査中」を理由に野党の国会招致要求を拒み、臨時国会の幕引きを急ぐ。
官房長官時代に安倍に追随して嘘を連発した菅首相も「前首相に確認して答弁した」とスットボケ。菅の言い分は安倍を通じて一介の秘書にダマされ続けたと認めたも同然。2代にわたって危機管理に欠けた首相とその政権下で暮らす国民は、命がいくつあっても足りない。
政治評論家の森田実氏が言う。
「政治指導者の嘘は最大の罪。国会軽視は国民を愚弄するのと同じです。国会で嘘を重ねた安倍前首相と菅首相の責任は免れませんが、野党と大マスコミはあまりにも無力すぎます。特に野党は解散を恐れて内閣不信任案の提出をためらっている場合ではない。このコロナ禍で庶民が日々の暮らしで精いっぱいなのを尻目に、ここまで政治を腐敗・堕落させた張本人、安倍政権の中心人物たちが今なお、のさばっているようではいけません。モラルの崩壊した社会は必ず滅びます」
ワルが「のうのう」の世も末を許したら、取り返しのつかないことになる。この国を終わらせたくなければ、国民はストレートに怒りを政治にぶつけるしかない。
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