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※2020年11月9日 日刊ゲンダイ1面 紙面クリック拡大
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“トランプと蜜月”のツケ バイデン政権で日米どうなる <後>
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/281050
2020/11/09 日刊ゲンダイ
環境で攻められたら、にわか仕立ての菅政権は立ち往生 |
バイデンの看板公約は2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにすることだ。大統領就任初日に、トランプが離脱した「パリ協定」に復帰すると宣言。環境問題は外交の優先課題でもあるのだ。
菅も就任後初の所信表明演説で、2050年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにする「脱炭素社会」実現の目標を打ち出したが、その本気度には疑問符がつく。
「バイデン勝利の可能性があると伝えられ、“保険”の意味で盛り込んだ政策目標で、具体策があるわけではない。来年1月に召集される通常国会の冒頭で成立させる予定の3次補正には、再生可能エネルギーや省エネ関連投資の予算が計上される見込みですが、総理自身、これまで環境問題に熱心に取り組んできたわけではありません」(官邸関係者)
それは、2日の衆院予算委で菅が「温室効果ガス」を「こうしつおんかガス」と言い間違えたことからも分かる。肝いり政策なら、あり得ない。本音では興味もないのだろう。
「バイデン氏の背後にいるのは金融資本とグローバル企業、軍産複合体と考えられますが、環境や人権問題も重視しているのが特徴です。バイデン支持層の左派は、気候変動問題は『存在しない』と目を背けてきたトランプ大統領の反知性主義を厳しく批判している。国際社会から見たら、トランプの家来とみなされてきた安倍前首相の亜流が菅首相で、日本学術会議の問題では、英国の科学誌にトランプやブラジル大統領とともに反知性の代表として扱われていました」(孫崎享氏=前出)
バイデンは、温室効果ガスの排出削減目標を満たさない国からの輸入品に「炭素調整料」を上乗せすることも公約している。
環境問題で、ゴリゴリに攻められたら、にわか仕立ての菅はひとたまりもない。
バブル後最高値の株価は一瞬の幻か、さらに伸びるか |
マーケットが沸いている。米株式市場は1週間で7%、計1800ドル超の急上昇。つられて日経平均もバブル崩壊後最高値を更新した。実に29年ぶりの高値で、4日間の上昇幅は計1300円以上。バイデン当確による政治空白リスク後退などが要因とされるが、市場の期待通り年内に2万6000円を突破するのか。お祭りムードはいつまで続くのか。
「株式と債券が投資の2本柱ですが、世界的な金融緩和で債券では利ザヤを得られない。ジャブジャブとなった投資マネーは相対的に有利な株式市場になだれ込み、株価を押し上げている状況です。企業価値を度外視したマネーの動きなので、第1波、第2波を上回る新型コロナの感染拡大や、大統領選をめぐる前例のない展開など、ショッキングな材料が出てくれば一気に不安定化するでしょう」(経済評論家・斎藤満氏)
感染が再燃した欧州の主要国はロックダウンに再突入。大統領選でヒートアップした米国では新規感染者が過去最多の13万人を上回った。その上、完全決着はまだ。トランプは「敗北宣言」を拒み続け、法廷闘争の時間稼ぎで逆転勝利を狙っているからだ。
マーケットの節目は12月14日の選挙人投票。年明け1月6日に連邦議会で行われる選挙人投票の開票、そして、同20日の新大統領就任式だ。
「東京市場は大統領選を巡り、生じる可能性のある大混乱を織り込んでいません。大統領のイスを争う前代未聞の闘争が長引けば、分断はますます深刻化。両候補の支持者がそれぞれデモを繰り広げ、衝突を誘発する事態になれば、内乱状態に陥るリスクもはらむ。そうなれば、マーケットはパニック必至です」(斎藤満氏=前出)
市場も常識で測れない未知のゾーンに入るのか。
「分断」を煽るスッカラカン 政治への絶望が広がる予感 |
「青(民主党)も赤(共和党)もない。白人も黒人もアフリカ系もアジア系もない。すべてのアメリカ人の大統領になる」
「国民を分断するのではなく、団結させる」
バイデンは「勝利宣言」の演説で、何度も「分断の傷を癒やす時だ」と語った。それだけ米国内の分断が深刻化しているということだ。
大統領選に負けたとはいえ、約半数がトランプに投票したことを忘れてはいけない。「親トランプ」と「反トランプ」の対立は簡単には解消されず、今後も混乱が続く可能性がある。
だからこそ、トランプ政権で分断され、傷んだ米国社会を癒やし、統合し、再び立て直そうとバイデンは国民に語りかけた。
「大統領にふさわしい知性と品格にあふれたスピーチでした。しかも、用意された原稿を読んでいるのではない。プロンプターも使っていない。彼我のトップの知性の差に愕然としてしまう。一国の大統領が国民の分断を煽って、自分の権力を強化する手法は民主主義国家として異常だし、そういう大統領に媚びへつらう日本の首相もどうかしているのです。米大統領選では、民主主義の底力が示された。民意の強さを日本国民も学ぶべきです」(法大名誉教授の五十嵐仁氏=政治学)
トランプの悪夢は4年間で終わりを告げるが、この国では異論を排除し、批判の声は敵とみなして攻撃し、自画自賛を続ける安倍前政権からの8年間の流れは、菅政権に引き継がれ、まだ続くのだ。
国民を納得させる言葉を持たないスッカラカンは、分断を煽ることでしか権力を維持できない。それで世界の潮流から取り残され、絶望だけが広がる日本でいいのか。未来は選挙で変えられる。国民が民意の力を信じられるかどうかだけだ。
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