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NHKが学術会議問題で日本会議イデオローグ・百地章の任命拒否擁護論! 政権忖度、両論併記のために極右学者を起用する危険性
https://lite-ra.com/2020/11/post-5688.html
2020.11.01 NHKが日本学術会議問題で日本会議の百地章のコメントを紹介 リテラ
百地章のコメントを紹介した『ニュースウオッチ9』(番組HPより)
日本学術会議の任命拒否問題をめぐる菅義偉首相の答弁の支離滅裂ぶりが止まらない。任命拒否したことの理由として菅首相は「多様性が大事」などと言い出しているが、30日におこなわれた参院本会議では新たに「7つの旧帝国大に所属する会員が45%を占めている」と主張したのだ。
菅首相はいかにももっともらしく答弁したが、こんなものが説明として成り立つと考えたのなら相当な大バカだ。言うまでもなく、6人を任命拒否したところで旧帝大所属の割合が大きく変わることなどないが、それどころか今回排除された6人のうち3人は旧帝大所属でもないのだ。いや、「多様性」というのなら、旧帝大所属云々以上に割合を増やすべき女性である加藤陽子・東京大学教授を外したのか。
そもそも、菅首相は今回の任命拒否の根拠にしている2018年の内閣府による文書でも「会員候補者が優れた研究又は業績がある科学者であり、会員としてふさわしいかどうかを適切に判断しうるのは、日本学術会議であること」と明記しており、菅首相が口出しできる立場では断じてない。というか、推薦候補者の名簿を「見ていない」と言っていた人間が、どうしてそんな判断をできるというのだろう。
このように、国会論戦のスタートと同時に菅首相は何の説明にもなっていない答弁しかできていないのだが、問題なのは、この無茶苦茶ぶりを指摘するメディアがあまりに少なく、国民にほとんど伝わっていないことだ。
それどころか、公共放送である「みなさまのNHK」まで、とんでもない報道をおこなった。
それは29日放送の『ニュースウオッチ9』でのこと。NHKは今回、日本学術会議の前会長である山極壽一・前京都大学総長にインタビューをおこない、番組ではその模様を放送したのだが、そこで山極前会長は杉田和博官房副長官の名指しするかたちで、2年前にも官邸から人事介入を受けたことなどを告白。すでに山極会長時代のこうした人事介入については毎日新聞が報じていたが、山極前会長がはじめてカメラの前で証言をおこなったインパクトは相当に大きい。
しかし、問題はこのあと。山極前会長のVTRが終わると、この山極証言について坂井学・官房副長官にぶつけた会見の模様が流されたのだが、つづいて出てきたのが、なんとあの百地章・国士舘大学特任教授だったのだ。
■百地章は中曽根答弁から法解釈が変更されてないのに「首相に自由裁量がある」
本サイトの読者ならばよくご存じだと思うが、百地氏といえば日本会議のイデオローグであり、「美しい日本の憲法をつくる国民の会」の幹事長を務めるなど、安倍政権下での憲法改正実現のため先頭に立ってきた安倍政権の御用学者。憲法学者という以前に「極右運動家」と表現すべき人物だ。
そのことを象徴する出来事も起こっている。安保法制の国会審議がおこなわれていた2015年、衆院憲法審査会で自民党と公明党、次世代の党の推薦で参考人として呼ばれた長谷部恭男・早稲田大大学院教授をはじめ参考人の学者全員が安保法制を「憲法9条違反」と明言した際、当時の菅官房長官は「まったく違憲でないという著名な憲法学者もたくさんいる」と反論。しかし、その後、菅官房長官が名前を挙げた憲法学者はたったの3人しかおらず、そのうちのひとりが百地氏だったのだ。そして、このとき菅官房長官が挙げた3人は全員が日本会議や神社本庁と深い関係にあるウルトラタカ派改憲団体「民間憲法臨調」に属し、百地氏は同団体の事務局長だった。
そんな百地氏を、NHKは「憲法が専門の百地章・国士舘大学特任教授は、6人が任命されなかったことについて『任命拒否はありうる』として次のように指摘しました」などというナレーションで紹介し、「政府対応に理解示す意見も」とテロップをつけ、百地氏のこんな主張を垂れ流したのだ。
「首相の任命権というのはですね、学術会議の推薦に拘束されるものじゃありませんから、ある程度の自由裁量はあります。裁量権を行使してですね、そして全体の構成、バランス、政治的中立性等を配慮して、あのような拒否をしたということで、私は妥当だと思っております」
「首相の任命権は学術会議の推薦に拘束されるものではない」って、そんなことを示す法律や法的解釈はどこにあるというのだろう。実際、10月8日におこなわれた参院内閣委員会の閉会中審査では、日本共産党の田村智子議員が「『推薦された者を任命拒否することはあり得る』という日本学術会議法の法解釈を示す文書はあるんですか?」という質問に対し、木村陽一・内閣法制局第1部長は「明瞭に記載したものというのは、私が知るかぎり見当たりません」と答弁をおこなっている。つまり、百地氏が「拒否は妥当」と言える根拠が存在しないことは、内閣法制局すら認めているのである。
■“北大デマ”を流した「国家基本問題研究所」の理事をそのまま出演させていいのか
だが、問題なのは、百地氏の主張に法的根拠がないことではない。このような「御用学者」の「極端」な意見を、まるで学者のなかで意見が二分され、「政府対応に理解示す意見」と拮抗しているかのように視聴者に思わせる取り上げ方をおこなったことだ。
現に、今回の任命拒否問題に対し抗議声明を発表している学会、団体などは600を超えるというが(東京新聞31日付)、一方、「政府対応に理解示す意見」はごくわずかだ。
そのひとつが、菅首相の対応は「正当」だと支持する表明をおこなった「日本弁護士協会再建準備会」による会見だが、しかし、この会見に登場したのも極右だらけ。たとえば、同団体代表世話人の高池勝彦弁護士は「新しい歴史教科書をつくる会」会長、今回の声明に賛同している高橋史朗・麗沢大学特任教授はやはり日本会議の中心メンバーで「親学」なるトンデモ教育理論の提唱者、田中英道・東北大名誉教授は「新しい歴史教科書をつくる会 」元会長で「『慰安婦像』のモデルは米軍犠牲者の少女だった」なるデマを喧伝したこともある人物(https://lite-ra.com/2017/12/post-3635.html)……といった具合だ。
ようするに、安保法制を合憲とする憲法学者がもののわずかしかおらず、さらには極右まみれだったのと同じで、今回の任命拒否を「正当」だと主張するごくわずかな者たちも、結局は学者の皮を被った極右運動家ばかりなのだ。
しかも、今回NHKがその代表として登場させた百地氏は、「北大がある研究で防衛省の安全保障技術研究推進制度に応募・採択されたのに、日本学術会議の幹部が北大総長室に押しかけて辞退させた」なるデマを流した「国家基本問題研究所」の理事でもある。同団体も御多分に洩れず、理事長が櫻井よしこ氏、副理事長が日本会議会長の田久保忠衛氏という極右の巣窟で、このデマについてその後HPに〈学術会議幹部が北大総長室に押しかけた事実はありませんでした〉として「訂正」を掲載した。にもかかわらず、10月23日には櫻井氏の写真とともに「日本学術会議は廃止せよ」と訴える意見広告を産経、読売、日本経済新聞の3紙に掲載し、そこでは、活動実績がないことがすでに示されている学術会議と中国科学技術協会との覚書などを取り上げて〈日本を否定することが正義であるとする戦後レジームの「遺物」は、即刻廃止すべき〉〈真の独立国家としての土台を蝕む組織は、一掃すべき〉などという筋違いの主張ががなり立てられていた。この意見広告にも百地氏は名を連ねている。
つまり、NHKは菅首相の任命拒否を「妥当」などと主張する学者はわずかであるにもかかわらず、「両論併記」を装って意見が二分しているかのように伝え、任命拒否の問題とはまったく関係のないデマを喧伝し「廃止しろ」などと迫っている団体の理事を素知らぬ顔で登場させたのである。
■NHKが政権に忖度して安易に両論併記、極右学者を起用することでお墨付きが
もちろん、NHKが百地氏のこうした活動を知らなかったということはありえない。実際、NHKは2016年5月2日に放送した『クローズアップ現代+』では、改憲運動を主導する日本会議の“中心メンバー”として百地氏を登場させ、そこで百地氏は「首相が突然(改憲議論に)入ってきたわけではなく、これまでの運動のなかで首相が誕生した」などとコメントしていた。NHKはどんな人物かをしっかり認識した上で、今回、あえて百地氏を登場させたのだ。しかも、NHKは『NW9』だけではなく、つづけて放送された、日本学術会議問題を取り上げた『クローズアップ現代+』でも百地氏のコメントを流したのである。
このNHKの対応に対しては、リベラルのあいだからも、山極前会長の「告発」を放送したことを評価し、百地氏を登場させたことも「両論併記」として致し方なかったという意見があがっている。しかし、今回の任命拒否は明確な違法行為であり、「両論併記」するような解釈が分かれるような問題ではけっしてない。さらに、百歩譲ってもし「政府対応に理解示す意見」を紹介するために百地氏を登場させるのであれば、氏がデマを喧伝した団体の理事であり、筋違いの意見広告にも名を連ねていることにも言及すべきだ。
今回、NHKがおこなったことは、「両論併記」に見せかけて「意見は二分している」「憲法学者もこう言っている」というお墨付きを与えるという行為であり、公共放送として見過ごすことのできないものだ。無論、山極前会長が官邸による人事介入をカメラの前ではじめて語るというスクープをものにしながら、一方でこのような極端で歪な報道をおこなったのは、安倍政権時からメディア圧力を担ってきた菅氏が総理になったことで、より強固なプレッシャーとそれに対する忖度が働いていることを証明したようなものだ。
こうしたメディアによる「両論併記」を装って政権のトンデモ主張にお墨付きを与える誘導を見過ごせば、一向に問題の本質・焦点、そして菅首相がいかに道理の通らないことを答弁しているのか、視聴者には伝わらない。これを放置しつづけることはできないだろう。
(編集部)
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