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日本学術会議への不当人事介入は安倍政権時代から始まっていた! 安倍の意向を汲んだ杉田官房副長官と菅首相が…
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2020.10.08 日本学術会議への不当人事介入は安倍政権時代から始まっていた リテラ
安倍晋三Twitterより
やはり問題の発端は安倍政権だった──。菅首相による日本学術会議の任命拒否問題をめぐり、安倍政権時代から露骨な官邸による人事介入がおこなわれていた、その詳細がわかってきたからだ。
その詳細を証言しているのは、2011年から2017年まで日本学術会議の会長を務めた大西隆・東京大学名誉教授。大西元会長に取材をおこなった毎日新聞の本日朝刊記事によると、〈14年10月以降のある時点で、官邸側から「最終決定する前に候補者を説明してほしい」と要求された〉という。
本格的な介入がおこなわれたのは、2016年の夏。会員が定年を迎えたことで〈人文・社会科学系の1人と理工学系の2人〉の3つのポストが空いたことに伴う補充人事でのことだ。このとき、日本学術会議側は安倍官邸からの要求に沿うかたちで〈1ポストにつき各2人計6人〉を報告。しかし、安倍官邸は理由を説明することもなく2ポストで優先順位1位と2位の差し替えを要求したというのだ。
この要求を日本学術会議側は応じなかったため、3人の補充はおこなわれず欠員となったが、これにより、さらに安倍官邸はより強権的な態度に出た。2016年12月、大西会長は官邸で官房副長官と面会したが、ここで官房副長官は2017年10月の会員半数改選にかんして〈総会承認前の選考状況の説明と、改選数より多めに候補者を報告すること〉を要求してきたというのである。
大西元会長は毎日新聞の取材でどの官房副長官かその名前を出してはいないが、この人物は杉田和博官房副長官だと朝日新聞が報じている。言わずもがな、杉田官房副長官といえば、安倍政権下で菅義偉氏が“官僚の監視”を担わせ、自身が総理就任にあわせた人事でもそのまま再任させた人物である。
結果として、この杉田官房副長官による“横やり”に対し、大西会長は2017年6月、改選人数の105人に数人を加えた110人超の会員候補者リストを杉田官房副長官に提示。このときは安倍官邸から異論は出なかったといい、日本学術会議が推薦した105人をそのまま安倍首相は任命した。
これらの事実は今回の任命拒否の発覚によってはじめて明るみに出たわけだが、この経緯自体が大問題であることは言うまでもない。繰り返し指摘されているとおり、1983年には丹羽兵助・総理府総務長官(当時)が「学会の方から推薦をしていただいた者は拒否はしない」「政府が干渉したり中傷したり、そういうものではない」、中曽根康弘首相(当時)も「学会の推薦に基づいて行われるので、政府が行うのは形式的任命にすぎない」と答弁しているが、安倍官邸、杉田官房副長官がおこなった「人事介入」はあきらかにこれを逸脱しているからだ。
しかも、注目すべきは、国民になんの説明もないまま、2018年に内閣府が〈内閣総理大臣は、会員の任命権者として、日本学術会議に人事を通じて一定の監督権を行使することができる〉〈内閣総理大臣が適切にその任命権を行使するため、任命すべき会員の数を上回る候補者の推薦を求め、その中から任命するということも否定されない〉などという見解をまとめ、それを内閣法制局が了承していたということだ。これは、黒川弘務・東京高検検事長の定年延長問題とまったく同じで、2017年の改選人事への介入を“後付け”で正当化するための勝手な法解釈の変更ではないか。
政府はいま、この解釈変更を必死で「解釈の変更ではない」と言い張っているが、これは黒川問題を蒸し返されて批判を浴びるのを避けようとしているだけで、実際には当時から、安倍首相と官邸はこの解釈変更を盾にして気に食わない学者を排除する道筋をつけていたのである。
■不当な人事介入で学問の自由を踏みにじった安倍前首相と菅首相の責任
自分の政策に反対する学者など許さない、解釈変更でいかようにもできる──いかにも安倍首相らしい政治の私物化とやり口だが、日本学術会議に横やりを入れてきたのが杉田官房副長官だったことからも、これは安倍首相の意向を汲み取った菅官房長官が杉田官房副長官を動かし不当な人事介入を実行してきた、ということだろう。
実際、今回の改選でも、安倍官邸は日本学術会議側に前回と同様、定員105人を上回る候補者リストを提出することを要求していたというが、2017年〜今年9月まで日本学術会議の会長を務めた山極寿一・京都大学前総長は事前にリストを提出せず、8月31日にきっちり定員どおりの105人の候補者を推薦。つまり、安倍官邸による不当な人事介入を阻止し、しっかりとその独立性を示そうとしたのである。
この山極会長の姿勢に対し、すでに辞任を決めていたとはいえ、自分に楯突く人間を決して許さない安倍首相が激高しただろうことは想像に難くない。現に菅政権発足直前の9月2日には内閣府は2018年の法解釈を内閣法制局に確認しているように、任命拒否することはこの時点から既定路線だった可能性が高いだろう。
しかも、気になるのは、任命拒否が明るみに出た10月1日の菅首相の行動だ。この日、菅首相は官邸からわざわざ議員会館に赴き、安倍前首相と面談をおこなっているのである。タイミングから考えても、日本学術会議への報復という「安倍政権の継承」を、あるいは今後の対応や方針を報告していても不思議ではない。
任命拒否を実行した菅首相の責任は重大であること、違法行為を働いたことは事実であり、その追及はしっかりおこなわれなければならない。だが、2016年から人事介入がはじまり、明らかな解釈変更がおこなわれていた経緯を踏まえれば、安倍前首相が果たした役割は極めて重いのだ。
体調悪化を理由にした“トンズラ辞任”と菅氏への禅譲により、安倍政権の問題はまるで何もなかったかのようにリセットされ、昨日7日には東京五輪大会組織委員会の顧問会議の「名誉最高顧問」に就任することが発表された。しかし、総理を辞任したからといって、この学問の自由、言論の自由を踏みにじった安倍前首相の行為はなかったことにはならない。安倍官邸による人事介入がはっきりしたいま、安倍前首相の責任をも問うことは必要だ。
(編集部)
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