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※2020年10月7日 日刊ゲンダイ1面 紙面クリック拡大
※2020年10月7日 日刊ゲンダイ2面
【全世界が呆れる錯乱の言動】
— 笑い茸 (@gnXrZU3AtDTzsZo) October 8, 2020
ガキみたいなトランプにへつらっているのは日本だけ
日刊ゲンダイ pic.twitter.com/JuWVDXdtvU
※文字起こし
夕暮れの空を大統領専用ヘリが近づいてくる。ホワイトハウス前庭のサウスローンに着陸したヘリの中から現れたのは米国大統領だ。出迎えるスタッフに手を振り、マスクを外して親指を立てるポーズを取る。最後はレジデンスのバルコニーに立ち、星条旗をバックに飛び立つヘリに敬礼する大統領の後ろ姿が映し出された――。
まるでハリウッド映画だが、これは米国のトランプ大統領が入院先からホワイトハウスに戻った際に撮られた映像である。
新型コロナウイルスに感染し、2日からワシントン近郊の軍医療センターに入院していたトランプが5日夕(日本時間の6日朝)に退院した。退院を強行したと言った方がいいかもしれない。
「全米ネットワークの夕方のニュースに合わせ、ドラマチックな演出で“コロナに勝った”強い大統領をアピールした。この動画は大統領のツイッターでも公開されています。しかし、陽性を発表してからわずか3日での退院で、完治していないことは明らかです。74歳という年齢を考えたら、体調が再び悪化する懸念もある。自身がスプレッダーになる可能性があるのに、マスクを外してホワイトハウスを歩き回る姿がテレビ中継され、米国内で批判の声が高まっています」(テレビ局のワシントン駐在記者)
コロナを軽視してきたトランプは、もともとマスクの着用に否定的だった。大統領選の集会でも、トランプ支持者たちのマスク着用率は低く、ソーシャルディスタンスも守られていなかった。そんな中でトランプ自身の感染が判明。これを受けたABCニュースの世論調査では、有権者の72%が「トランプは感染の脅威を真剣に捉えていない」と答えていた。
全米で20万人以上が亡くなったのに
トランプ周辺では、すでにメラニア夫人やヒックス大統領顧問、選挙対策本部長などの感染が確認されているが、退院した5日には新たに側近のマケナニー報道官とその部下2人が検査で陽性になるなど、感染が拡大している。
それでもトランプはどこ吹く風で、さっそくツイッターで「Don't be afraid of Covid.(コロナを恐れるな)」「I feel better than I did 20 years ago!(今の私は20年前より元気だ)」などとアジっていた。
来日したポンペオ国務長官と「同盟の強化」を確認 |
元外務省国際情報局長の孫崎享氏が言う。
「ホワイトハウス内にも医師団がいるし、しばらくは隔離された場所で執務にあたるということなので、スピード退院も医学的に見ればさほど問題はないでしょう。ただ、トランプ氏は米国大統領という特別な立場だから最先端の医療を受けることができて、未承認薬の特例使用も認められた。ホワイトハウスがクラスター化していることも心配ですが、感染したスタッフ全員がトランプ氏と同じ医療を受けられるわけではない。ましてや一般国民は、そうした高度な医療は望むべくもないのです。米国では20万人以上が新型コロナで亡くなっているのに、『恐れなくていい』『たいしたことない』とウイルスの脅威を軽んじた発言を続けることは常軌を逸している。大統領として、あまりに無責任です」
入院中に重症者向けのステロイド薬「デキサメタゾン」を投与されたトランプは、今後も使用を継続するというが、米ニューズウィーク日本版で、デキサメタゾンを投与された経験のあるスタンフォード大の教授が、トランプの精神状態について、薬のせいでマトモではなく、「とても執務に戻れる状態ではない」と警告している。この薬の副作用で、非常識な言動をする恐れがあるのだという。
たしかに、ツイッターで勇ましいことをつぶやいているのは薬の影響もあるのかもしれないが、トランプの言動がイカレているのはコロナに感染するずっと前からだ。
人種差別をあおって大統領の座をつかんだトランプは、ヘイトと暴言で支持層を喜ばせてきた。
ここ数カ月だけでも、ミネアポリスで黒人男性が警察官に殺害された事件を契機に全米に広がった「Black Lives Matter(黒人の命を軽視するな)」運動に対し、トランプは警察を擁護し、白人至上主義者を動員する機会ととらえていた。反人種差別のデモを敵視し、「法と秩序」を名目に軍の投入まで示唆したのだ。
9月29日に行われた大統領選のテレビ討論会もハチャメチャだった。冒頭からバイデン前副大統領の発言を遮り、横やりを入れ続けた。カオス状態の討論会は世界中のメディアから「史上最悪」と評された。
税金逃れ疑惑もある。米紙ニューヨーク・タイムズによれば、トランプは就任前に10年間にわたって所得税を納めておらず、大統領に当選した2016年と翌17年の納税額は、いずれもわずか750ドル(約7万9000円)だというのだ。職権乱用も次から次へと浮上する。外国政府からカネを受け取った疑惑もくすぶったままだ。
このコロナ禍でも、トランプの異常な言動が連日のように報じられているが、その錯乱も疑惑もすべてトランプ自身に起因する問題である。大統領選を1カ月後に控え、ますますエキセントリックになってきた。倫理観のカケラもなく、傍若無人で幼稚な大統領に全世界が呆れている。
そんな最中、トランプ政権の大幹部であるポンペオ国務長官が6日未明に来日。米軍横田基地から入国し、午後に菅首相と官邸で会談した。菅にとっては就任後初の外国要人とのリアル対面外交である。
菅は「トランプ大統領夫妻の早期全快を祈っている」と伝え、日米同盟の強化を確認したという。
対米追従のシワ寄せは国民生活に
「ポンペオ氏は、日本の首相が代わっても米国の命令に忠実に従うかを確かめ、念押しするために来たのでしょう。週内には、21年度から5年間の在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)を決める実務者協議も始まります。菅政権になっても宗主国と植民地のような米国との関係性に変わりはなく、あれやこれやの捻出に悶絶することになりそうです」(高千穂大教授の五野井郁夫氏=国際政治学)
国家安全保障担当としてトランプに仕えたボルトン前大統領補佐官が今年6月に発売した暴露本によれば、トランプは安倍前首相に対し、思いやり予算はこれまでの4倍増に当たる年間8600億円の負担を求めていたという。
「すべての米軍を撤退させるよう脅せば、強い交渉の立場を得られる」とも言っていたそうで、ガキ大将に媚びへつらい、隷従してきたシンゾーが、いかにナメられていたかが分かる。そういう米国隷属外交が日本に何をもたらしたのか。その検証もないまま、菅は外交でも安倍路線の継承を明言し、思いやり予算の増額をふっかけられるわけだ。
「トランプ氏から言われるがままに武器を買い、そのシワ寄せで社会保障が削られ、国民生活が犠牲になってきた。思いやり予算を増額すれば、その分ますます自国民は貧しくなる。それでも構わないから米国にシッポを振るという日本政府の姿勢は、国際社会から奇異な目で見られています。しかし、米国隷従は菅政権でも変わらないでしょう。自らの外交努力で東アジアの平和と安定を築く道もあるのに、トランプ再選でも、たとえバイデン政権になっても、米国べったりを踏襲するだけなのです」(五野井郁夫氏=前出)
そうやって米国に媚びへつらうことが、「国民のために働く」政府の姿なのか。G7を見渡して、そんなリーダーが他にいるだろうか。
菅は日本学術会議の候補6人を任命しなかった問題で、年間10億円の税金が使われていることや前例踏襲への疑問を理由にしているが、悪しき前例主義を打破と言うのなら、いびつな日米関係にこそ斬り込んだらどうなのか。
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