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『選挙の鬼』中村喜四郎元建設大臣が明かす「菅政権の倒し方」 解散総選挙の先に見据える政局
https://friday.kodansha.co.jp/article/137603
2020年10月06日 FRIDAYデジタル
議員会館の執務室には40歳で初入閣(科学技術庁長官)、43歳で建設大臣に就任した時のパネルが飾られている
中村喜四郎氏(71)が政権の異変を感じ取ったのは、5月23日のことだった。同日付の読売新聞が黒川弘務東京高検検事長(当時)の定年延長についての検証記事を掲載。安倍晋三総理が、
「菅さんが『(黒川氏の定年延長を)やった方がいい』と言っている。仕方がない」
との愚痴を周囲に漏らした、と書かれていた。安倍総理は政権を投げ出す――中村氏はそれを読んで直感した。
「総理大臣が菅(義偉)官房長官に人事をゴリ押しされたと泣き言を吐き、それを総理がお抱えの読売新聞に書かせた。この記事を見てからしばらくして、私は立憲民主党の安住淳国対委員長に『安倍総理は投げ出すよ』と言いました。安住氏から『次は誰ですか』と聞かれたので、『菅氏だろう』と答えた。すでに総理は主導権を菅官房長官に握られていたわけです。もちろん、健康問題もあったのでしょうが、安倍総理は政治的に追い込まれて辞任した。その後任は主導権を握る菅氏しかありえませんでした」
安倍総理は結局、8月28日に辞任会見を行った。3ヵ月以上前から辞意を見抜いていた中村氏の卓越した政局観に、与野党から注目が集まっている。
中村氏は田中角栄事務所を経て、’76年に27歳で衆議院議員に初当選。以後、当選を重ね、「自民党のプリンス」として頭角を現す。’92年には43歳の若さで建設大臣に就任するが、’94年にゼネコン汚職事件に絡んで逮捕された。捜査中は完全黙秘を貫き、公判中も無所属議員として当選を重ねる。有罪判決が確定したが、刑期満了後の’05年に再出馬して議員に復帰。当選回数は14回を数え、「選挙の鬼」とも「無敗の男」とも呼ばれる。
その中村氏が、9月15日に発足した新生・立憲民主党に合流した。遅くとも来年10月までに行われる総選挙に向けて、「野党共闘」の結節点になろうと率先して汗をかいている。
「立憲民主党が発足しましたが、選挙では社民党や共産党、国民民主党と選挙区調整をして、オール野党で戦っていかなければ勝てません。そのためには、野党の党首会合の場を近々作らなければならないのですが、それも簡単ではない。
私がそれぞれの日程を聞いて調整し、場所を用意し、下座に座って乾杯を促す。一番経験のある人間がそこまでやってようやく、各党の党首も勝手なことを言ったら悪いと思って集まってくれるわけです。だから、私は立憲民主党の最高顧問になってくれと言われましたが、断りました。肩書は何もない。何もないから、他の野党が私の話を聞いてくれる。私が表立って動いてはいけないんです。
経験者が目立つなんて恥ずかしいこと。自民党で教えられたのは、自分は汗をかいて、手柄は他人に譲るという、田中角栄さんや竹下登さんの政治哲学です」
菅内閣は発足後、6割以上の高支持率をマークし、自民党一強の構図は変わらない。野党はどう戦っていくのか。
「野党が候補者を一本化して、票を集めれば、84の選挙区でひっくり返せる計算です。ダメな野党とバカにされ、強い与党と恐れるけれど、84議席が野党に動けば、与野党は伯仲します。これは各候補者がドブ板を踏んで必死に選挙活動をすれば、十分に埋められる差なんです。
菅総理が解散をして、この84選挙区のうち半分でも失ったら、責任問題に発展するでしょう。政権を維持するために、維新の会とも組むことになる。自公維の3党で連立したとき、菅さんは無派閥なので支えてくれる派閥がない。何かのきっかけで不満が吹き出す可能性がある。
それを考えれば、早く仕掛けて失敗するよりも、丸1年やって評価される道を選ぶかもしれません。もちろん、一か八かで早期解散に打って出る可能性もありますが、野党側も前国民民主党幹事長の平野博文選対委員長を中心にして、選挙区調整を進めています」
その先に見据えるのが、自民党の総裁交代である。一挙に野党で政権奪取と考えないところに老練さが垣間見える。
「保革伯仲の時代になれば、石破茂氏が自民党の総裁に就任すると思います。国民的な人気が高い石破氏でないと、選挙に勝てないからです。つまり、私たち野党が頑張れば、石破氏の出番がやってくる。実は石破氏の主張する政策と、私が言っていることにはさほど差がありません。正論ですから。将来、石破氏が自民党内から政治改革をしよう、選挙制度を変えようとなったときに、お互い大変頼もしい存在になるでしょう」
中村氏はその日に備えて、今日も水面下で活発に動き回っているのである。
立憲民主党の代表に選ばれた枝野幸男氏とグータッチ。枝野氏は意見を求めて、中村氏の部屋をしばしば訪れるという
『FRIDAY』2020年10月9日号より
PHOTO:鬼怒川 毅
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