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伊藤詩織さんが「TIME」誌の100人に…一方で菅首相が山口敬之氏への資金援助を親密企業「ぐるなび」会長に依頼していた疑惑
https://lite-ra.com/2020/09/post-5646.html
2020.09.23 菅首相が山口敬之氏への資金援助を親密企業「ぐるなび」会長に依頼か リテラ
首相官邸HPより
本日、アメリカの「TIME」誌が、毎年恒例となっている「世界で最も影響力のある100人」(TIME100)を発表し、日本からはジャーナリストの伊藤詩織さんとテニスの大坂なおみ選手が選ばれた。
周知のとおり、伊藤さんは2017年に「安倍首相にもっとも近いジャーナリスト」と呼ばれていた元TBS記者・山口敬之氏からの性暴力を告発、民事訴訟では一審の東京地裁で山口氏に全面勝訴(山口氏は東京高裁に控訴)。同時に、伊藤さんは世界的な「#MeToo」運動の流れのなかで海外メディアの取材にも応じ、抑圧や沈黙を強いられがちな性暴力被害について声をあげつづけてきた。
そして、今回の「TIME100」への選出──。「TIME」では伊藤さんの紹介文を上野千鶴子・東京大学名誉教授が執筆し、「性的暴力を勇気をもって告発したことで、日本人女性の人生を一変させた。政権に近い被告人は刑事訴追を免れたが、伊藤さんは12月に民事訴訟を勝ち取った」などと綴っている。
だが、この栄えある選出とともにいま一度、確認することが必要なのは、この山口氏の性暴力を隠蔽しようと逮捕状のもみ消しを命じた人物が、あろうことか現首相である菅義偉氏だとみられていることだろう。
あらためて振り返ると、伊藤さんからの相談を受けて、当初、捜査を担当していた高輪署の捜査員は山口氏の逮捕状をとり、2015年6月8日、山口氏を逮捕すべく複数の捜査員が成田空港で山口氏の帰国を待ち構えていた。ところが、この逮捕直前に上層部からストップがかかった。そして、この逮捕取りやめを指示したのが、第二次安倍政権発足時に菅官房長官の秘書官を務め、報道に圧力をかけるなどの実働部隊として暗躍し“菅氏の懐刀”と呼ばれてきた当時の中村格・警視庁刑事部長(現・警察庁次長)だった。事実、中村氏は「週刊新潮」(新潮社)の直撃に対し、自ら「(逮捕は必要ないと)私が決裁した」と認めているのだ。
結果的に事件は2015年8月に書類送検され、山口氏は翌2016年7月22日付けで嫌疑不十分で不起訴処分に。逮捕寸前まで行った事件が、菅氏の子飼いである中村氏の逮捕取りやめ指示によって“ブラックボックス”のなかに押し込められてしまったのである。
しかし、菅氏と山口氏の接点は、これだけではない。山口氏はある企業から「毎月42万円の顧問料」や「交通費その他の経費」を受け取っていたのだが、じつは、その企業の会長と菅首相が親しい関係にあり、山口氏への資金援助を依頼したのも菅首相ではないかとみられているのだ。
■山口氏がTBSを辞めた後に、菅氏が”山口にカネを払ってやってくれないか”と
この問題を最初に報じたのは、「週刊新潮」2019年7月18日号。同誌によれば、山口氏に「顧問料月額42万円」等を支払っていたのは、東京都の「NKB」という電車の中吊りなどを扱う交通広告の広告代理店だ。
そして、この広告代理店の会長というのが、「ぐるなび」の創業者で現会長の滝久雄氏。「ぐるなび」といえば「GoToイート」事業を受託している1社だが、先週発売の「週刊文春」(文藝春秋)が「菅義偉「親密企業」が〈469億〉GoToイート受注」と題して報道したように、じつは菅氏が初当選した1996年から2012年にかけて、「NKB」や同社の子会社は菅氏の政治団体に多額の寄付をおこなってきたのだ。
「週刊文春」でも菅首相と滝会長の関係について「菅氏が困った時に頼るのが滝氏」と語られているが、問題は山口氏への顧問料だ。前出「週刊新潮」によると、山口氏がTBSを退社したあとの2016年11月に「NKB」の子会社と顧問契約を結んだといい、広告代理店関係者がこんな証言をおこなっている。
「この滝会長と菅さんが仲良しなんです。山口がTBSを辞めた後に、菅さんが”山口にカネを払ってやってくれないか”と滝会長に依頼したそうです。具体的には月42万円で、実際に払っているのは横浜にあるNKBの子会社。本体の方が業績がよくないので、そうなったということですが、子会社の経営陣は不満を抱えていたようです。“会社と何の関係もない山口に、ちゃんとした人を一人雇える額をなんで払わなきゃいけないのか”と」
さらに、この関係者は、山口氏は滝会長の子会社に一度も出社したことがなく、「週刊新潮」が2017年5月に伊藤詩織さんへの準強姦疑惑の告発記事を出すと支払いを止めたことから、山口氏との顧問契約は「どうしても断れない特別な案件だったからと考えるのが自然」とも述べている。
一方、「週刊新潮」は滝会長への“山口氏支援の依頼”にかんして菅氏を直撃しているが、言葉少なに関与を否定するだけで、「それ以上は言えない」などと、事実上、説明を拒絶したという。
山口氏に逮捕状が出され、捜査員がいまかいまかと待ち構えるという局面まで進んだにもかかわらず、菅首相の片腕の警察官僚が直前で逮捕取りやめを指示したという事実。そして、山口氏がTBSを退社すると、初当選のころからの昵懇の関係にある企業が山口氏の資金援助をおこなっていたという事実──。これらを突き合わせれば、菅首相もまた山口氏と深い関係にあったことがよくわかる。
■菅首相と山口敬之氏のただならぬ関係 安倍首相の返り咲きも2人の連携プレーだった
実際、山口氏はTBS時代から“安倍の太鼓持ち”と呼ばれるほど安倍首相と個人的に親しい関係を築いてきたが、その一方で山口氏は安倍首相の右腕である菅氏ともかなり前から“運命共同体”とも言えるような関係になっていた。
山口氏のデビュー作である“安倍ヨイショ本”『総理』(幻冬舎)では、当初、安倍氏が出馬を迷っていた2012年自民党総裁選をめぐって、菅との直接的やりとりをしていたことを自慢げに記している。
同書によると、山口氏は安倍と代々木のレストランで食事をし、その席で「出馬見送り」の話を聞かされるのだが、山口氏はそのあと〈すぐに菅に電話を掛けた〉のだという。この電話を受けて、菅が安倍の私邸へ向かい、出馬するよう説得。安倍は心変わりして総裁選に出馬し、総裁に返り咲いたというわけだ。山口氏は安倍が総裁に決まったあと、菅とこんな会話をかわしたことを明かしている。
〈決選投票で総裁の座を射止めた直後、自民党本部4階で私と遭遇した菅は、満面の笑みで握手を求めてきた。
「○○だけは誤算だったな。あとはパーフェクトだったでしょ?」
不適な笑みの最後に、こう付け加えた。
「あの夜の山口君の電話がなければ、今日という日はなかった。ありがとう」〉(『総理』より)
いわば、山口氏は菅氏をして「山口君がいなければ安倍総裁はなかった」と言わしめた存在なのだ。そして、この“第二次安倍政権誕生の陰の立役者”が性暴力事件で逮捕されそうになった直前、その菅氏の右腕と言われた警察官僚が逮捕を止めた──。これを偶然だと片付けられるだろうか。
さらに、この件をめぐっては、「週刊新潮」に告発記事の第一弾を出された直後、山口氏が“官邸のアイヒマン”の異名を持つ北村滋・内閣情報官(当時)とおぼしき「北村さま」へメールを送り、記事を巡る対応を相談していたことも判明している。ちなみに、菅内閣発足でおこなわれた官邸人事では、今井尚哉首相秘書官が内閣官房参与へと“事実上の退任”となった一方で、国家安全保障局長まで登り詰めた北村氏はそのまま再任となっている。
伊藤詩織さんの告発によって、性暴力被害者を取り巻く環境がいかに過酷であるか、警察・司法がいかに異常な状態にあるかということにスポットが当たるようになったが、同時に、これは権力によって性犯罪の加害者の逮捕が取り消されたのではないかという法治国家の根幹を揺るがす重大事でもある。そして、国際的にも注目されるこの問題への関与が濃厚な人物が、またも総理大臣の座に就いてしまったという現実……。この深刻な事実は、絶対にこのまま放置してはならない。
(編集部)
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