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自民党総裁選で乱発 「共通の価値観」を唱和するお笑い 特別寄稿
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/278978
2020/09/21 日刊ゲンダイ
各国の目先の利益で転々と変わるのが世の常(トランプ米大統領と習近平中国国家主席、米中首脳会談で)/(C)ロイター=共同
「共通の価値観」という標語が今回の自民党総裁選挙で乱発された。日本の今後の対外政策の基本は米、韓、印、シンガポール、オーストラリアなどと連携を深め、中国包囲網形成を図る理由の説明だ。
言論の自由、選挙制、三権分立など、民主主義の基本を尊重する諸国は日本と共通の価値観を抱いているから団結すべきだ、との説だが、本当にそうか、と首をかしげざるを得ない。
シンガポールは政府批判を厳しく取り締まることで有名だ。すべての新聞は政府主導の「シンガポール・プレス・ホールディングス」が保有している。テレビは「メディアコープ社」が独占。同社の100%株主は政府系大企業「テマセクホールディングス」で、その代表はリー・シェンロン首相の夫人だ。
市民が10人以上の団体をつくる際には、その目的、性格のいかんにかかわらず登録すること。演説が許されるのは1カ所の公園の一角だけで、趣旨を届けること。2、3人でも路上で議論すれば逮捕され、「国内治安法」によれば、治安上問題ありと政府が見なした人物は令状なしに逮捕し、ほぼ無期限に拘束できるなど、徹底した言論統制が行われている。
選挙制度も与党「人民行動党」に好都合なように改正されてきたから、常に与党が絶対多数で、今年7月の総選挙では93議席中、与党が83議席を確保した。首相は1965年の独立以来25年間、リー・クアンユー氏が務め、その長男のリー・シェンロン氏が2004年から首相の座にある。
だがシンガポールの経済発展は目覚ましく、昨年の1人当たりGDP6万5000ドル余は、米国の6万3000ドルを上回り、日本の3万9000ドルをはるかにしのぐ。官僚の多くは海外の一流大学卒で給与も良く、効率が高く清潔な行政で民衆に信頼されているから、世襲政権や言論統制に対する不満は激化しない。
各国の目先の利害で国際関係は変わる
中国の改革、開放を主導したケ小平氏は、政権を握った直後の1978年11月にシンガポールを訪問し、リー・クアンユー氏から経験談を聞いて熱心にメモを取り、市場経済と海外資本、技術を導入しつつ、政治・行政は党が握る手法を学んだ。
効果は大きく、その後約40年間に中国のGDPは244倍に拡大、中国は巨大なシンガポールの様相を示した。活発な市場経済と官僚政治の組み合わせは中国古来の体制だから、中国人は違和感を抱かず、中国とシンガポールは「共通の価値観」を抱いていると見るべきだろう。
米国は「民主制、自由」を唱えているが、実は第2次世界大戦後20以上の親米独裁政権を支援してきた。例えば現在、米国はインドを「世界最大の民主国」と持ち上げているが、冷戦時代にはインドの非同盟政策を「不道徳」と非難し、インドと対立したパキスタンの軍人独裁政権に莫大な援助を行っていた。
国際関係は各国の目先の利害で転々と変わるのが常だ。「価値観」などというあやふやな米国のキャッチフレーズに唱和するだけでも「結んで開いて……」の児戯に類すると嘆かわしく感じざるを得ない。
田岡俊次 軍事評論家、ジャーナリスト
1941年生まれ。早大卒業後、朝日新聞社。米ジョージタウン大戦略国際問題研究所(CSIS)主任研究員兼同大学外交学部講師、朝日新聞編集委員(防衛担当)、ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)客員研究員、「AERA」副編集長兼シニアスタッフライターなどを歴任。著書に「戦略の条件」など。
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