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※2020年9月14日 日刊ゲンダイ1面 クリック拡大
※2020年9月14日 日刊ゲンダイ3面
スッカラカンの菅氏が圧勝 “世紀の茶番”総裁選を総括<下>
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/278680
2020/09/14 日刊ゲンダイ
※文字起こし
首相が「自助」を掲げ、国民に「絆」を強いる恐ろしさ |
「次期総理が国民の面倒を見ないと宣言したに等しい」――そんな批判もどこ吹く風。菅は総裁選で「国の基本は自助、共助、公助、そして絆」と訴え続けた。これだけ「自助」を強調するとは、筋金入りの「自己責任」論者に違いない。
「自助、共助、公助はあくまで『下から』の言葉であり、公の人間が上から押しつけるべきではない。菅氏は政治理念を聞かれ、この言葉をパネルに掲げましたが、税金の節約以外に国家観も理念もないのでしょう。『そして絆』も上から強要すれば、封建時代の村八分や戦時中の隣組と同じになる。異端者排除に結びつきかねない恐ろしい発想です」(コラムニストの小田嶋隆氏)
菅が入れ揚げる政策には競争原理任せの新自由主義がにじむ。ふるさと納税はいびつな返礼品競争を招き、携帯電話料金値下げや地銀の統合再編で事業者間の競争にハッパをかける。欠落しているのは弱者目線だ。
ふるさと納税には特産品のない自治体もあれば、一律控除による金持ち優遇の弊害も放置。総裁選では「雪深い秋田の農家の長男」として「地方を大切にする気持ちが私には流れている」とアピールしたが、菅は都市部の横浜市選出だ。当選当初は「国税の大部分は地方の道路や施設の投資に使われる。大都市は都市問題を抱え、財政も火の車」と、自身のブログで地方優先政治の打破を掲げていた。
そもそも、このコロナ禍で消費増税に言及すること自体、菅の冷酷さを物語る。前出の小田嶋隆氏はこう言った。
「菅氏の自助強調には『自分も叩き上げで競争に勝ち抜いてきた』との自負が透けて見えます。中小企業のワンマン社長ならともかく、とても総理の器ではない。古くさい封建的な父権主義に、新自由主義の非情と残虐性が内在する最悪の政治家としか思えません」
総裁選圧力とは裏腹に短命説がささやかれるこれだけの根拠 |
党内5派閥の談合圧勝もツカの間、早くも菅政権には「短命説」がささやかれている。
これだけ多くの派閥の支持を得れば党役員人事と組閣で「恩義」に報いようにも、必ず誰かは漏れる。60人近くいるとされる「入閣待機組」の面倒を見ないと、党内に不満と怨嗟が渦巻く。今から派閥間の主導権争いが過熱しており、無派閥で頼れる側近もいない菅の政権運営は発足直後からゴタゴタしかねない。
しかも、菅政権は“負の遺産”ごと継承した安倍亜流内閣だ。総裁選中は新型コロナ対策でも新味ゼロ。国民総スカンのアベノマスク路線から抜け出せず、みるみるとメッキが剥がれていくのは当然の流れだ。高千穂大教授の五野井郁夫氏(国際政治学)は言う。
「『米国に支持されない日本の政権は短命に終わる』というジンクスにも、さいなまれそうです。菅政権では安倍政権以上に中国一辺倒の二階幹事長の支配力が増す。中国との対立が一触即発の域に達するトランプ米政権にとって二階氏は好ましからざる人物。場合によっては二階氏を切らざるを得ない状況に陥りかねません。また、11月の大統領選で民主党のバイデン候補が勝利すれば親トランプ路線の見直しも迫られそうです。菅氏は機を見るに敏なだけ。総裁選ではロクに国家観もなく、不勉強なことも露呈しました。生き馬の目を抜く外交の困難さに直面すれば、ブザマに瓦解しても不思議ではない」
コロナ不況もこれからが本番だ。内政も外交も経済も四苦八苦。本格政権を目指すどころか、派閥に担がれた新自由主義者が早期にブン投げ。そんな醜悪な結末を迎える可能性は十分にある。
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