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— lulurara-sei (@LuluraraS) September 1, 2020
安倍政権最大の罪は社会から「透明性」をなくしたことだ ファクトチェック・ニッポン!
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/278111
2020/09/02 日刊ゲンダイ
情報操作で「花道会見」に変質(C)日刊ゲンダイ
日本は社会の透明性と無縁になってしまった。それが、安倍総理の辞任劇に際して感じた正直な感想だ。少し振り返ってみたい。安倍総理が慶応病院で診察を受けたのが8月17日。そして24日に再診。一気に体調不良の観測が出回る。しかし、すぐにそれを打ち消すような膨大な情報がメディア関係者に流れる。官邸での総理会見で新型コロナ対策が発表されるとの情報が流れるに至って、「本人はやる気だ」との情報が支配的になる。
その最中の8月27日に私は松本市の臥雲義尚市長と会っていた。臥雲氏はNHKで政治記者として名をはせ、この3月の選挙で市長になった。私が、「安倍総理はまだ続けるみたいですね」と水を向けると、「長年の政治取材の経験からすると、こういう時は辞任の可能性はある」と話した。臥雲市長は、さまざまな情報の流れ方に、一種の情報操作が行われているというにおいを感じ取っていたようだ。つまり、私たちは情報操作に翻弄されたというわけだ。
情報操作で「花道会見」に変質
もちろん、一国の最高責任者の健康状態を透明にするわけにいかないことはわかる。問題はその後だ。8月28日の会見の約3時間前の午後2時7分にNHKが辞任の速報を流す。それに他社が追随する。そしてNHKが安倍総理のレガシーを放送し始める。これによって、この国のリーダーが2カ月ぶりに行う記者会見が「花道会見」に変質する。
一部のコメンテーターが「お疲れさま」と言わない記者を批判したのは、その変質の「効果」を物語っている。当然ながら総理会見は総理大臣と記者との懇談の場ではない。市民の負託を受けた記者がこの国のリーダーと対峙し疑問を問いただす場だ。「お疲れさま」と声をかける場ではない。しかし、そうした雰囲気が醸成されてしまった。
この会見では、検査を1日20万件可能にするといった新型コロナ対策の抜本的な見直しや、敵基地攻撃を可能にする安全保障政策について語られたが、その全てが辞任によってかき消されてしまった。記者の質問がレガシーや後任に集中するからだ。それでも共同通信は拉致問題などへの対応の反省点を問うたが、「最善を尽くした」としか語らなかった。この問題で政権の本気度に疑問を感じる人は多かったが、その疑問に答えることはなかった。他にも、なぜ新型コロナの検査体制の拡充に時間がかかったのか? 敵基地攻撃を可能にする政策はこの地域の安定につながるのか? いずれも総理が答えるべき疑問だが、全て不透明なまま残された。
安倍政権の最大の罪はこの社会から透明性をなくしたことだろう。官邸主導によってあらゆる情報が管理され、官僚は出世のためにそれに盲従。公文書は破棄、改ざんされ、国会でも記者会見でもはぐらかし答弁が横行した。8月28日の会見は、それを象徴する出来事でしかなかった。
報道各社は安倍政権の功罪の検証が不可欠と指摘しているが、罪に関しては、マスメディアの関わりについても検証が必要だ。それがなければ、政権が替わっても、社会の不透明さは変わらない。
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tateiwa@infact.press
立岩陽一郎 ジャーナリスト
ジャーナリスト、1967年生まれ。91年、一橋大学卒業後、NHK入局。テヘラン特派員、社会部記者、国際放送局デスクなどを経て2016年12月に退職。現在は調査報道を専門とする認定NPO運営「INFACT」編集長。アメリカン大学(米ワシントンDC)フェロー。毎日放送「ちちんぷいぷい」レギュラー。
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