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※2020年8月6日 日刊ゲンダイ1面 紙面クリック拡大
https://twitter.com/Trapelus/status/1291266963038060546
※文字起こし
日本の新型コロナウイルス対応を「成功」と称賛していたWHO(世界保健機関)のテドロス事務局長も唖然としたに違いない。4日、大阪府の吉村知事が「ウソのような本当の話」と言って切り出した「ポビドンヨード」入りのうがい薬でのうがいの励行を呼び掛けた会見のことだ。会見後、国内各地の薬局では、マスク同様、うがい薬を求めて客が殺到。パニック状態に陥った。
吉村によると、感染者を対象に調査した結果、陽性になる確率が下がったといい、「うがいをすることによってコロナの患者さん、コロナがある意味減っていく」なんて言っていたが、消毒液でうがいをすれば口の中のウイルスが死滅するのは当然。だからこそ、うがい、手洗いが励行されてきたのだが、うがいと「コロナが減る」ことに何ら因果関係は示されていないし、仮に吉村発言の通りであれば、今のように感染者が世界中に拡大していることもなかっただろう。しかも、よくよく聞くと、「他人への感染抑制の実証についてはこれから」「体内にあるウイルスとの関係も不明」「検証が必要」というからむちゃくちゃだ。
科学的根拠が乏しく検証もされていない不確実な話を、自治体のトップが公の会見で「ある意味」なんて言葉でゴマカしながら軽々に発表する内容ではないことは言うまでもない。
吉村扇動会見の責任は政府にもある
もっとも、吉村の“扇動会見”で国民を右往左往させた責任の一端は政府にもあるだろう。
新型コロナの感染拡大防止に向けて主導するべき立場の国が、具体的な方向性を示していないからで、それが国民の不安を増大させ、不確実で怪しい吉村発言に振り回されることになった一因ともいえる。
その吉村が指揮を執る大阪府は、大阪市の繁華街ミナミのバーやホストクラブに対し、休業や午後8時に営業を終えるよう求めているが、腰の重い国の姿勢にしびれを切らし、独自の対策強化に乗り出している自治体は大阪府だけじゃない。
愛知県の大村知事は6日から「緊急事態宣言」を出すと発表。東京都は酒類を提供する飲食店などに営業時間の短縮を求め、京都府は宴会などを開く際に「大人数は避ける」「2時間」など5つのルールを設けた。岐阜県は「第2波非常事態」を宣言し、近隣の名古屋市で酒を伴う飲食を避けるよう県民に要請したほか、沖縄県も緊急事態宣言を発令するなど、いずれも感染者急増の緊迫した状況に強い危機感を示している。
ところが、政府の対応は依然として鈍いままだ。自民党の森山国対委員長は5日、政府が7日の閣議決定で新型コロナ対策として1兆円超の予備費を支出する方針であることを明かしたが、野党側が求めている臨時国会の召集については相変わらず応じない方針。「新型コロナウイルス感染症対策分科会」も、地域の感染状況を4段階に分けて対策を講じる案を政府に提言しただけで、事実上の開店休業状態だ。これじゃあ全国知事会が活発に政策提言したり、独自に動いたりする自治体が後を絶たないのも当然で、今やこの国が無政府状態同然である証左だ。法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)はこう言う。
「新型コロナを巡って方針がくるくる変わるだけでなく、最終責任者の総理大臣は雲隠れしたまま。これでは、国民は何を信じていいのか分からない。自治体が独自に動き出すのも当たり前で、まさに無政府状態です。舵取りができないのであれば即刻、総理を辞めるべき。迷惑するのは国民です」
無為無策の政府に地方が反旗を翻す日が来る |
そもそも、安倍首相は新型コロナ対策について、「自治体と連携を取り、必要な対応を講じる」「知事と緊密に連携」とか言っていたはずだ。そうであるなら、政府は後手に回った「第1波」の反省を踏まえ、「第2波」に向けてPCR検査(遺伝子検査)の拡充や医療体制の構築、保健所の態勢強化を急ぐべきだったし、自治体が求めていた休業要請と協力金のセットに関する国の補助負担についても、真剣に検討するべきだった。
ところが政府はこうした課題に向き合わなかったばかりか、「日本の封じ込め策は世界で評価されている」などと自画自賛。自治体には場当たり的でデタラメなコロナ対策を上から目線で押し付けた揚げ句、愛媛県の中村知事が「各地域が懸命に取り組んできた感染拡大防止の成果が一瞬で奪われる可能性もある」と反対していた「Go To トラベル」を強行したのだ。
そうしたら案の定、地方で感染者が急増。すると、今度はお盆帰省について「慎重に考えないといけない」(西村経済再生担当相)とか言い出す始末だから支離滅裂。さらに新規感染者が7月末に1日当たり1500人を突破し、4月のピーク時のほぼ倍に達したにもかかわらず、「4月の緊急事態宣言時とは異なる」などと繰り返しているからクラクラする。こういう迷走する政府の姿勢に自治体が翻弄されているのであり、もはや今の政府に新型コロナの危機対応はムリ。こうなったら地方からの反乱で政権を引きずり降ろす以外に道はなく、吉村のようなアジテーターは論外として、今、必要なのはマトモな知事たちの一斉蜂起だろう。
コロナ対策でも「お友達優遇」の安倍政権
大体、突然の一斉休校などで地方に散々迷惑を掛けてきたのが安倍政権だ。緊急事態宣言を発令したものの、カネは出さず、具体的な対策は自治体に丸投げ。自治体の要望が根強いPCR検査がいまだに増えないのも、国が従来の感染症法に基づく中央集権型の行政検査の枠組みにこだわり、自治体や現場の医療機関に権限を与えないからとされる。
地方にロクに権限を与えず、カネも出さないくせに、文句ばかり言うのも安倍政権の特徴だ。
菅官房長官は3日の会見で、軽症者や無症状者が療養するためのホテルの確保を巡り、「沖縄県は宿泊施設の確保が十分でない」と猛烈に批判していたが、わざわざ会見で自治体を名指しして言う必要があるのか。沖縄をつるし上げる前に、政府として支援策を打ち出すのが先であり、聞き捨てならない地方罵倒発言だ。
菅は東京都の小池知事に対しても、「(国内の感染者増は)東京の問題だ」と責任を押し付けていたが、菅の“子飼い”といわれる北海道の鈴木知事が面会でマスク不足を訴えた途端、即日400万枚のマスクを送った時とは大違いだ。要するに近しい人であれば積極的に支援し、沖縄の玉城知事や小池のように“敵視”している相手は徹底的に冷遇して罵倒する。モリカケ問題と構図は同じで「お友達優遇政治」の極みだ。
繰り返すが、このまま政府対応を待っていたら全国各地に広がる感染拡大は止められない。いい加減、安倍政権の無為無策ぶりが分かったはずだ。元参院議員の平野貞夫氏がこう言う。
「中央政府と自治体はこれまで、いい悪いは別として利害関係が一致してきた。しかし、それを今、コロナ禍が壊し始めていると言っていい。選挙対策でカネをばらまくことしか考えていない政府の『Go To』に対し、地方が反発しているのも、その表れです。旧態依然とした政府に反旗を翻す地方が今後、増える可能性は十分あります」
心ある自治体首長が、「お友達内閣」を潰すために怒りの声を結集するべき時なのだ。
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