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「首相、私は真実が知りたい」
森友公文書改ざん訴訟 財務省元職員の妻が陳述
しんぶん赤旗 2020年7月16日【1面】
森友学園問題をめぐって公文書の改ざんを強制されたと手記などに書き残して自殺した元財務省近畿財務局職員の妻、赤木雅子さんが国と佐川宣寿・元財務省理財局長を相手取り起こした損害賠償請求訴訟の第1回口頭弁論が15日、大阪地裁で開かれました。雅子さんが意見陳述し、夫の自殺に至った経緯について「安倍(晋三)首相、麻生(太郎財務)大臣、私は真実が知りたい」と求めました。(赤木さんの陳述4・関連15面)
雅子さんは紺の上下に白いシャツ姿で入廷。しっかりとした口調で陳述を始めましたが、夫の俊夫さん=当時(54)=が亡くなった日の様子の部分では涙声になり、言葉が詰まる場面もありました。
陳述では、情報開示請求で夫の個人情報を国に求めたにもかかわらず、黒塗りなどで開示に消極的だった国を批判。「国は国民にも夫にも向き合わず、あるものを出さずにズルズル先延ばしにして逃げている。正直に全て明らかにしてください」と求めました。
この問題が発覚した直後の2017年2月、安倍首相は国会で「私や妻が関係していれば総理大臣も国会議員も辞める」と答弁。これが改ざんのきっかけになったと指摘されています。
雅子さんは「首相は自分の発言が改ざんの発端になっていることから逃げているのでは」「発言と改ざんには関係があることを認め、真相解明に協力してほしい」とも述べました。
うつ病と診断され18年3月に自宅で自殺した俊夫さんは、遺書や手記で改ざんの経緯を詳述。上司らから改ざんの指示を受け、抵抗しながらも作業をさせられたことなどを記し、「元は、すべて、佐川理財局長の指示です」などと指摘していました。
財務省は同年6月の報告書で佐川氏について「改ざんの方向性を決定付けた」としましたが、具体的な指示や経緯は明らかにしていません。
雅子さんは訴状で、国が俊夫さんの心身の健康を損なわないようにする注意義務を怠ったと主張。佐川氏については公務員の職務行為でなく、改ざんという違法行為を指示した個人としての不法行為責任を問うています。
国と佐川氏はいずれも請求棄却を求めて争う姿勢を示しました。しかし国の答弁書は、注意義務違反についてどう主張するのか触れていません。この点を赤木さんの弁護団が法廷で指摘しましたが、国側弁護団は「必要な事実については認否を示した」と答えるにとどまりました。
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森友・公文書改ざん損害賠償請求訴訟
赤木雅子さんの陳述
しんぶん赤旗 2020年7月16日【政治総合】
森友学園問題をめぐり、国と佐川宣寿・元財務省理財局長を訴えた赤木雅子さんの、大阪地裁での第1回口頭弁論での陳述は以下の通り。
1 私の夫、赤木俊夫は決裁文書を改ざんしたことを悔やみ、自ら人生の終止符を打ちました。2018年3月7日のことです。
夫は震える手で遺書や手記を残してくれました。
私は夫の死後2年経過した2020年3月18日、やっと遺書や手記を公表しました。
そして、同じ日に、夫が自ら命を絶った原因と経緯を明らかにし、夫と同じように国家公務員が死に追い詰められることがないようにするため、そして、事実を公的な場所で説明したかったという夫の遺志を継ぐため、国と佐川さんを訴えるところまで進みました。
以下、この訴訟に対する私の思いを陳述させて頂きます。
2 夫は、亡くなるおよそ1年前である2017年2月26日(日曜日)、私と神戸市内の梅林公園にいた時、近畿財務局の上司である池田靖さんに呼び出され、森友学園への国有地払い下げに関する決裁文書を改ざんしました。
決裁文書を書き換えることは犯罪です。
夫は「私の雇い主は日本国民。国民のために仕事ができる国家公務員に誇りを持っています」と生前知人に話していた程国家公務員の仕事に誇りを持っていました。
そのような夫が決裁文書の書き換えという犯罪を強制されたのです。夫の残した手記によると、夫は改ざんを指示された際に「抵抗した」とあります。また、私は、夫の死後、池田さんからも、夫は改ざんに最初から反対していたと聞きました。
夫が決裁文書の改ざんによって受けた心の痛みはどれだけのものだったでしょうか。国家公務員としての誇りを失ったでしょうし、強い自責の念に襲われたと思います。
夫は手記や遺書に「この事実を知り、抵抗したとはいえ関わった者としての責任をどう取るか、ずっと考えてきました。事実を、公的な場所でしっかりと説明することができません。今の健康状態と体力ではこの方法をとるしかありませんでした。(55才の春を迎えることができない儚〈はかな〉さと怖さ)」、「現場として相当抵抗し、最終的には小西次長が修正に応じ、修正前の調書に合わせて自ら、チェックマークを入れて定裁(ママ)を整えました。事実を知っている者として責任を取ります。」と書いています。
夫は改ざんしたことを犯罪を犯したのだと受け止め、国民の皆さんに死んでお詫(わ)びすることにしたんだと思います。夫の残した手記は日本国民の皆さんに残した謝罪文だと思います。
3 国は、夫の自死の真相が知りたいという私の思いを裏切り続けて来ました。
(1) 財務省は、夫が亡くなった5日後の2018年3月12日に改ざんしたことを認め、3か月後の6月4日に調査報告書を発表しました。
しかし、この調査報告書の中には、誰のどのような指示に基づいて夫が改ざんを強制されたのか記されていません。夫が自死したことすら記載されていません。夫の手記についても、提出を求められていないので当然ですが、一切触れていません。
池田さんは、夫が亡くなってから1年後、自宅で私に「赤木さんはきっちりしているから、文書の修正、改ざんについて、ファイルにして、きちっと整理していたんです。」、「パラッと見たら、めっちゃきれいに整理してある。全部書いてある。どこがどうで、何がどういう本省の指示かって。修正前と修正後、何回かやり取りしたような奴(やつ)がファイリングされていて、パッと見ただけでわかるように整理されている。これを見たら我々がどういう過程で改ざんをやったのかというのが全部わかる」と仰っていました。でも、調査報告書にはこのファイルについても記載がありません。
(2) 私は、夫の自死が公務災害となった理由を知るため、人事院に対して情報開示請求をしました。しかし、人事院の開示した文書は70ページのほとんどが黒塗りで、夫がなぜ自ら死を選び悩み苦しんだのか、私の知りたいことは何一つわかりません。
そこで、私は、2020年4月13日に近畿財務局に対して情報開示請求をしました。しかし、1か月後の5月13日に開示されたのは、年金の金額や支払日などが書かれたたった10頁(ページ)の文書でした。残りの文書については、新型コロナによる緊急事態宣言に伴う処理可能作業量の減少などを理由に、1年後の2021年5月14日までに開示決定をするそうです。国はこの裁判でも同じような態度をとるのでしょうか?これではこの裁判でも真実には近づけません。
(3) 私は夫が自死に追い詰められた真相を明らかにするため第三者委員会による再調査を求める電子署名を始めました。電子署名には35万人を超える方々から賛同の署名を頂きました。
電子署名は2020年6月15日に安倍首相や麻生財務大臣へ提出しました。しかし、安倍首相も、麻生財務大臣も、すでに検察の捜査も済んでいるので調査しないと夫のことを切り捨てました。でも検察の捜査は刑事処分のためのもので、真相解明の調査とは別の物です。
国は国民にも夫にも向き合わず、あるものを出さずズルズル先延ばしにして逃げています。再調査を実施して、正直に全て明らかにしてください。再調査の結果はこの訴訟でも役に立つと思います。
4 安倍首相は、2017年2月17日の国会で、安倍首相や安倍昭恵さんが森友学園の国有地払い下げにかかわっていたら総理大臣も国会議員も辞めると発言しました。
財務省秘書課長だった伊藤豊さんは、2018年10月、私に対して、「この首相の発言によって野党が理財局に対して資料請求するなど炎上したため理財局は改ざん前の文書を出せなかった。その意味で、首相の発言と改ざんは関係がないとはいえない。」と言いました。
安倍首相は、自分の発言が改ざんの発端になっていることから逃げているのではないでしょうか。安倍首相は自分の発言と改ざんには関係があることを認め、真相解明に協力して欲しいと思います。安倍昭恵さんも森友学園への国有地売却の関係を明らかにしてほしいと思います。
池田さんも、池田さんの前任者の前西勇人さんも「裁判になれば本当のことを話します」と私にはっきりと言いました。この裁判では、前西さんには安倍昭恵さんと籠池夫妻のいわゆるスリーショット写真がどのように国有地の取引に影響したのかを、池田さんには国有地値引きと決裁文書改ざんをめぐり近畿財務局の中で何が行われたのかを話して頂きたいと思います。
また、佐川さんをはじめとする理財局の幹部の人達や、美並局長をはじめとする近畿財務局の幹部の人達も、事実をありのままに話して欲しいと思います。
もしこれらの人達が裁判に来なかったり、裁判に来ても事実を話さなかったとしたら、国が本当にあったことを国民から隠し、全てなかったことにするために止めたのだと思います。
安倍首相、麻生大臣 私は真実が知りたいです。
5 夫は亡くなった日の朝、私に「ありがとう。」と言ってくれました。
最期の夫の顔は「絶望」に満ち溢(あふ)れ、泣いているように見えました。決して生き残らないように電気コードは首にきつく二重にくくりつけていました。怖がりだった夫がこんなことをしなければならないなんて。
真面目に働いていた職場で何があったのか、何をさせられたのか私は知りたいと思います。
6 最後に、裁判官の皆様にお願いがあります。
私は、訴状でも書いてありますが、3つの目的のために訴訟を始めました。
その中でも一番重視しているのは1つ目の夫が自ら命を絶った原因と経緯を明らかにすることです。
訴訟の手続は私には難しくて分かりませんが、是非とも夫が自ら命を絶った原因と経緯が明らかになるように訴訟を進めてください。夫が作成したファイルを含めてできるだけ沢山の資料を集め、できるだけ沢山の人の尋問を行って事実を明らかにしてください。そしてその上で、公正な判決を下してください。
宜(よろ)しくお願い致します。
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森友公文書改ざん訴訟 「夫の死 真相解明を」
安倍政権に求める 原告の赤木さんが会見
しんぶん赤旗 2020年7月16日【社会】
森友学園問題をめぐり公文書改ざんを強制され、当時54歳だった赤木俊夫さんが自殺に追い込まれたとして、国と佐川宣寿・元財務省理財局長に損害賠償請求訴訟を提起した妻の赤木雅子さん。15日の第1回口頭弁論後に大阪市内で記者会見し、改めて安倍晋三政権に、公文書改ざんの真相解明を求めました。(安川崇)
会見で雅子さんは俊夫さんの遺影を机に置きました。国と佐川氏が請求棄却を求めて争う姿勢であることについて問われ、「私は夫の死の真相を知りたいという思いだけ。なぜ認めてもらえないのか。意味が分からない」と静かな口調ではっきり語りました。
真相を知るため、雅子さんは国に第三者委員会による再調査を求めるネット署名を展開し、6月までに35万人以上の支持を得ます。代理人弁護士を通じて政府に提出しましたが、安倍首相と麻生太郎財務相は再調査しない意向を表明しました。
会見ではこれらについて、「たくさんの方の応援の気持ちが後押しになって(裁判まで)進んでこられた」と感謝する一方、「それが安倍さんや麻生さんには響かない、重みを受け止めてもらっていないというのが実感だ」と述べました。
安倍首相が2017年2月に「関係していれば総理も国会議員もやめる」と答弁したことについては「同じ発言を今でもできるのか。できるのならしてほしい」と不信感を示しました。「安倍政権を倒したいわけではない。夫の真実が知りたいだけだ」とも述べました。
手紙2回送った
佐川氏にはこれまで手紙を2回送ったといいます。「何かしら返事がもらえて、それが納得できるものであれば裁判を起こしていなかったと思う」
佐川氏がこの日、出廷しなかったことについては「来てくれるといいと思っていた。残念な気持ちだ。本人の口から本当のことを聴きたい。何があったのか、佐川さんが話さないとわからない。答えてほしい」。近畿財務局の職員についても、「『裁判になれば本当のことを話す』と言ってくれた人もいる。話してくれると信じている」と語りました。
この日の陳述では、改ざんをめぐって安倍政権の説明と異なる事実を、財務省職員から直接聞いていたことも明らかにしました。
安倍首相の「総理も国会議員も辞める」とする答弁と、その直後に始まった公文書改ざんの因果関係について、政府は公式に認めていません。
しかし雅子さんは俊夫さんの死後の18年10月、自宅を訪れた当時の財務省秘書課長から「首相の発言と改ざんは関係がないとはいえない」と聞かされたと述べました。
一緒にたたかう
さらに、俊夫さんが改ざんの経過を詳細に記録したファイルを職場に残していたことも指摘。これは自殺の翌年、俊夫さんの元上司で森友学園への国有地売却を直接担当した職員から知らされました。裁判では、国にこのファイルを提出するよう求めています。
会見で俊夫さんについて聴かれた雅子さんは「夫は私が表に立つことが苦手なのを知っているので、裁判や会見をしていることに、びっくりしていると思う」。今の心境については「今日、スタート地点に立てたと思う。(夫が)常に横にいると思うので、一緒にたたかっていきたい」と語りました。
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