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7月 13, 2020 日々雑感(My impressions daily)
球磨川の水害に対して、脱ダム宣言をした熊本県知事を批判する輩が何の根拠もなく跋扈しているが、果たしてそうだろうか。ダムが水害対策に本当に有効なのだろうか。
一昨年かそれ以前か、豪雨により宇和島の一部が川沿いの集落が水没して被害者まで出た。その際に、当局は決して認めなかったが、住民から豪雨のさなかに上流のダムから放水したため被害が拡大したとの声が上がった。
一昨年の7月6日の周南市三丘地区から光市立野地区にかけての島田川流域の水害では、豪雨のさなかに上流の中山川ダムを放水したのではないか、との疑念の声が住民から上がった。それは豪雨の推移とは関係なく一時に川が増水したからだ。
ダムは貯水量に限度がある。その限度を超えて貯水するとダムが崩壊して貯水した大量の水が激流となって下流域に襲い掛かる。そのため豪雨のさなかでもダムの水門を開けざるを得ないこともある。
またダムの水門を開けてなくても、河川改修や浚渫を怠っていれば河川の単位当たり流水量が減少する。指摘するまでもなく、河川の流水量は河川の断面積に比例する。断面積が大きければ河川の氾濫するまでの「可能流水量」が多くなる。
だから浚渫を怠り、河川に中洲が出来たり、岸に土砂が溜まって河川敷となり草木が茂っていれば、それだけ河川の断面積が小さくなる。つまり単位当たり流水量が少なくなる。河川の氾濫を防ぐにはダムの建設よりも、河川の単位時間当たり流水量を多くする必要があるのだ。
熊本県のみならず、全国の河川管理はかなり杜撰になっている。それは小泉政権以後、公共事業を削減し続けて来たからだ。第二次安倍内閣では発足当時、安倍氏は「国土強靭化」を謳って、公共事業予算を増やすと約束した。しかし現実は殆ど増えず、全国の「治山、治水」はなおざりにされた。
結果として砂防堰堤の整備は進まず、山林に間引きした木々は放置され、河川改修や浚渫は遅々として進んでいない。地方に暮らしていれば、そうした現実を日常的に目にしている。
線状低気圧、という言葉は今年になって初めて聞く言葉ではないはずだ。つい先年、東海地方でも線状低気圧による長時間降雨により水害を経験している。何もかも「温暖化による異常気象」という都合の良い言葉で誤魔化していては災害は毎年のように繰り返される。
なぜ水害の原因の本質に、マスメディアは切り込もうとしないのだろうか。八ッ場ダムが民主党政権下で「ダムから人へ」というスローガンで中止にされた恨みでもあるのか、民主党政権下で「ダムはムダ」と回文にしたため、解りやすかったのだろうが、ダムというハードを建設しても水害対策に役に立たないことは明らかだ。それよりも「治山、治水」に努めるべきだ。
八ッ場ダムは完成して間もないが、既に「壊すべきではないか」という議論が起きているのをご存知だろうか。実に膨大にな予算を投じて建設しても、ダムは膨大な土砂を堰き止めて海を細らせるだけでしかない。
また、氾濫原を積極的に造る、という発想も必要だ。河川が氾濫する前に、川の水が流れ込む「遊水地」を造っておく必要がある。河川に沿ったサッカー場や球場として利用している土地が、氾濫する前には水が流れ込んで遊水地となるようにしておく必要がある。そうした土地はかつて「氾濫原」と呼んで、共同の葦狩場として利用していた。
水害が多いのは民主党政権下の「ダムはムダ」という政治の結果だ、と因果関係も科学的根拠も何もない「為にする議論」はやめよう。それよりも国土強靭化を急ぐべきだ。
「治山、治水」に国や都道府県は全力を注ぐべきだ。
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