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<7>黒川検事長を「訓告処分」にとどめたのは口封じか? 官邸落日 側近官僚の暴発
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/275708
2020/07/08 日刊ゲンダイ ※タイトル中、黒川幹事長を黒川検事長に修正
降って湧いた賭けマージャンで「責任問題」も吹っ飛んだ(黒川弘務前東京高検検事長)/(C)日刊ゲンダイ
東京高検検事長の定年延長騒動のさなかに降って湧いた賭けマージャンについて、その発覚直後、黒川弘務の周辺はこう漏らした。
「実のところ、4月を迎え黒川は検事長を辞めるつもりでした。その絶妙なタイミングでマージャンの件が出た。ほっとしたのは黒川本人、それになにより安倍総理でしょう。これで定年延長の責任問題も吹っ飛んだ、と」
なぜ定年延長させてまで黒川を検事総長にしたかったのか。とどのつまり疑惑の焦点はそこに戻るのだが、それを実行した側近たちの責任論を追及する前にマージャン問題で疑惑の蓋をしてしまった格好になっている。
むろん週刊文春は意図してマージャンの特ダネを報じたわけではないだろう。が、これ以降野党やマスコミ追及の矛先は、誰が司法の独立を壊そうとしたのかという観点からギャンブルの話にシフトしてしまう。図らずも発覚した賭けマージャンで、官邸が懲戒処分を避けて訓告処分にとどめたのは黒川自身の口から定年延長の経緯が漏れるのを恐れたからだろうか。
「黒川の定年延長は、菅官房長官が決断をしたんだ」
安倍首相の側近グループからは、この期に及んでそうした声も聞こえるようになってきた。黒川の件で汗をかいてきた杉田和博・北村滋の元警察官僚コンビの責任を薄める狙いがあるのか。それとも黒川問題を菅のせいにしたいのだろうか。ここにも権力闘争のにおいがプンプンする。
菅は第2次政権発足以来、昨年夏まで7年近く、政権の危機管理対応を担ってきた。会社組織にたとえれば、副社長の杉田や専務の北村を現場で指示する社長のような立場だ。一方、首相は具体的な政策に携わらない会長といったところだ。
黒川問題に携わった杉田・北村コンビは、菅ではなく安倍に近い。また2人は首相補佐官兼政務秘書官である今井尚哉たちとも一定の距離を置いている。そのあたりの力関係もまた複雑でわかりづらい。
そんな安倍政権を支える官邸官僚たちの中でも、最も権勢を振るってきたのが今井を頂点とする経産省出身の官邸官僚たちだ。今井は経済産業政策局長の新原浩朗、佐伯耕三という後輩官僚たちを従え、経産トリオで目下、コロナ対策を取り仕切っている。が、これも失態続きだ。
「野党の提案している10万円では、二番煎じとなりインパクトがない」
検察官の定年延長に続いて、今井がそう言いだした景気刺激策が世帯単位の30万円給付だ。周知のように全国民への10万円支給に政策変更を余儀なくされた。また佐伯が安倍首相に直言したアベノマスクや星野源との動画コラボは撤回こそされなかったが、政策のバカさ加減を露呈してしまった。 =敬称略、つづく
森功 ノンフィクション作家
1961年、福岡県生まれ。出版社勤務などを経て、2003年からノンフィクション作家として活動を開始。「ヤメ検 司法エリートが私欲に転ぶとき」「同和と銀行」「腐った翼 JAL消滅への60年」「悪だくみ 『加計学園』の悲願を叶えた総理の欺瞞」「官邸官僚 安倍一強を支えた側近政治の罪」など著書多数。最新刊は最新刊は「ならずもの井上雅博伝 ヤフーを作った男」(講談社)。
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