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再選率9%。負け犬のトランプに尻尾を振り続けた安倍首相の大罪
https://www.mag2.com/p/news/456495
2020.06.30 高野孟『高野孟のTHE JOURNAL』 まぐまぐニュース
11月に迫った米大統領戦ですが、トランプ大統領の再選は厳しい状況となっているようです。これまでもトランプ政権に対してさまざまなデータを元に冷静な批判を展開してきたジャーナリストの高野孟さんは今回、自身のメルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』で、各国のメディアによる調査やデータの解析結果を引きつつ、トランプ氏の落選が避けられない背景を解説。さらに安倍首相については「トランプ政権に対して二重の過誤を犯した」と非難しています。
※本記事は有料メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2020年6月29日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:高野孟(たかの・はじめ)
1944年東京生まれ。1968年早稲田大学文学部西洋哲学科卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。同時に内外政経ニュースレター『インサイダー』の創刊に参加。80年に(株)インサイダーを設立し、代表取締役兼編集長に就任。2002年に早稲田大学客員教授に就任。08年に《THE JOURNAL》に改名し、論説主幹に就任。現在は千葉県鴨川市に在住しながら、半農半ジャーナリストとしてとして活動中。
ほぼ確定的となったトランプ敗退――世界は「バイデン政権」への対応準備へ
11月の米大統領選挙までにはまだ4カ月もあり、その間に何が起きるか分からないが、現時点での各種調査を見る限り、トランプ大統領が敗北し民主党候補のバイデン元副大統領が勝利することは、ほぼ確定的である。
ニューヨーク・タイムズがシエナ大学と共同で6月17〜22日に、登録済み有権者を対象として行った世論調査では、バイデン支持は50%でトランプ支持の36%に対し14ポイントの大差がついた。「これは、トランプが大統領となってから最も惨めな結果で、彼が2期目を目指す戦いで負け犬となることを示す現時点での明確なサインである」と同紙は指摘した(写真1)。
また英エコノミスト誌は、独自のモデルを立て毎日のようにデータを更新して選挙の行方を追っているが、選挙人団総数538人(過半数270人)に対して6月27日現在、バイデンが345人を獲得する見通しであるのにトランプは193人で、従ってバイデンが勝利する確率は91%、トランプのそれは9%である(写真2)。
ラストベルトでもトランプ離れ?
このようにトランプ劣勢は押し留めようもない有様で、それはコロナウイルス対応のどうにもならない大混乱への失望に加えて、「ブラック・ライブズ・マター=BLM(黒人の命を大切に)」デモへの徒らな強硬姿勢への反発のためである。ニューヨーク・タイムズ調査の中身(写真3)を見ると、
▼黒人の79%がバイデン支持で、トランプ支持はわずか5%というのは当然として、
▼白人でも、全体ではバイデン43%:トランプ44%と拮抗しているものの、大学卒以上の白人ではバイデン58%:トランプ30%と大きな差でバイデンが優位に立っていることが注目される。これは、BLMデモ参加者の半数は白人だと言われるように、特に白人インテリ層にトランプへの反発が強まっていることの現れだろう。
▼また年齢別では、18〜34歳でバイデン59%:トランプ25%、35〜49歳で同53%:30%と、若い人ほど反トランプが強く、逆に50〜64歳、65歳以上では両者ほぼ拮抗している。これも、BLM デモに若者の参加が目立つことと関係があると見ていい。
他方、高校卒以下の白人を見ると、バイデン34%:トランプ53%と依然としてトランプが強い。4年前の選挙でラストベルトと呼ばれる北部工業地帯の白人労働者・低所得層の不満を爆発力に利用したトランプの流儀はまだ通用するように見える。ところが、ニューヨーク・タイムズによれば、代表的なラストベルトの州であるミシガンはじめペンシルバニア、ウィスコンシンで、今回はバイデンが10ポイント以上の差をつけて優位に立っている。
エコノミストの州別の優劣データで見ても、バイデンはイリノイで安全圏(99%勝利確実)、ミシガンとウィスコンシンで圧倒的(85〜99%勝利)、ペンシルバニアで優勢(65〜85%勝利)。オハイオは拮抗、ラストベルトではインディアナのみでトランプが圧倒的であるに留まっている(写真4)。
つまり、ヒスパニックの移民労働者が悪い、中国の過剰輸出が悪いと、全てを他人のせいにして悪口を言い立てたところで、それで米国自身が蘇るわけではないという当たり前のことが、4年間かけて立証されたということなのだろう。それでトランプは、今度はBLMデモの裏に潜む過激派が悪いと叫んだのだが、それによって彼の「誰かが悪い」一本槍の路線はますます袋小路に突き進んでしまった。
トランプ後の世界のリハビリ
バイデンは、人柄としては穏健、政治家の資質としては凡庸で、誰がなってもトランプよりはマシという程度の大統領にしかならないだろう。とはいえ、大統領自らが国内を分断し対立を煽るという前代未聞の異常事態にともかくもストップがかかるのだから、そこから先、偉大なるアメリカ社会は自己修復能力を発揮するに違いない。
バイデン大統領は、世界にとっても朗報である。英フィナンシャル・タイムズのフィリップ・スティーブンス論説委員長は6月11日付の「米同盟国はバイデン大統領に備えよ」で、バイデンが勝つ見込みは現時点で50%を超えていて、さらにこの先、経済が勢いよく回復するのが難しく、新型コロナの死者数がかなり増えそうなことを思えば、「米国民の怒りのツイートが雪崩のようにトランプを襲って大統領の座から引き摺り下ろす可能性」が高いと指摘。その上で、バイデンは「同盟関係を重視し、米国を地球温暖化対策の国際枠組みパリ協定に復帰させ、欧米を中心とするリベラルで開かれた秩序の強化に意欲を見せるだろう」と予測しつつも、米国がそのように立ち直るのを「米国の同盟国は手をこまぬいていてはいけない。ルールに基づく国際秩序を復活させる上で、米国とどう協力できるか真剣に考えるべきだ」と提言している。
とはいえ、スティーブンスも言うように「冷戦後の米国一極体制の時代は終わった」のである以上、トランプ登場前のような何とはなしに米国が中心となった同盟関係が復活してくることはないだろう。むしろ米国はキッパリと、もはや米国は世界の盟主ではありえず、そうは言っても自分勝手な自国中心主義に閉じこもるのでもなく、世界で2番目か3番目辺りの経済大国のワンノブゼムとして応分の役割と負担とを担っていく覚悟であることを示さなければならない。
トランプがG7サミットを拡張して、ロシア、インド、オーストラリア、韓国を呼び込み中国の孤立化を図ると言い出して世界を困惑させたが、このように世界運営の原理も基準も定かならぬまま気分で指導的グループのメンバーを入れたり入れなかったりすることほど無意味なことはない。例えば米シンクタンク「ランド研究所」が描く2050年の世界の姿(本誌No.949=18年7月2日号参照)を想定してそれに照応した世界的な多国間主義に立つ協議機構を構想すべきだろう。ランドの予測では、今世紀半ばの世界GDP序列は、中国、インド、米国、インドネシア、ブラジル、ロシア、メキシコ、日本、ドイツ、英国、フランスであり、こういう世界が形成されつつある時に、単に米国を何となく中心に置いて旧同盟国が協力を申し出る格好でトランプがブチ壊しかけた国際秩序を救済しようというのは馬鹿げている。本当はポスト・トランプの米大統領に期待されるのは、そのような「ワンノブゼムの米国」への軟着陸とそれを前提とした真に脱冷戦的な多国間主義秩序形成への踏み込みだが、もちろん彼にそんな構想力はない。なので、やはり彼には「トランプよりはマシ」という以上のことを期待してはならない。
なお、日本政府はこのような国際的な戦略的な議論では完全に蚊帳の外で、冷戦型の日米同盟強化を追求してきた時代錯誤の路線が壊れてどうしたらいいか分からないでいる。安倍晋三首相が、ただ単に日本を脅して最新兵器を爆買いさせたいだけのトランプを親日と錯覚したこと、途中からホワイトハウスに入り込んで北朝鮮やイランなどに戦争挑発的な強硬路線を持ち込んだネオコンの教祖=ジョン・ボルトンが米国の主流だと思い込んでそことのパイプで物事を判断していたこと――という二重の過誤があり、この4年間の外交を総括できなくなっているのがこの国である。
(メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2020年6月29日号より一部抜粋)
image by: Nicole Glass Photography / Shutterstock.com
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早稲田大学文学部卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。現在は半農半ジャーナリストとしてとして活動中。メルマガを読めば日本の置かれている立場が一目瞭然、今なすべきことが見えてくる。
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