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安倍内閣検察人事無理筋不当介入が問題本質
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2020年5月15日 植草一秀の『知られざる真実』
検察庁法改正案についての論議が喧(かまびす)しいが、問題の本質を捉えた判断が必要だ。 問題の本質とは、安倍内閣が黒川弘務氏を検事総長に引き上げる「恣意的人事」を強行しようとしていること。 同時に、安倍内閣が黒川氏を長期間、検事総長の地位に留める考えを有している可能性があること。 検察庁は三権の区分で言えば行政権に属する。 検察官の任免権は法務大臣および内閣にある。このことが問題なのではない。 内閣や法務大臣が検察官の人事権を持つことは当然で、このことが問題なのではない。 ただし、検察官には一般の公務員とは異なる特殊性がある。 それは、検察官が国会議員や閣僚、場合によっては内閣総理大臣の刑事責任を追及する立場にあることだ。 内閣や法務大臣が、国会議員や閣僚、内閣総理大臣に対する刑事責任追及を阻止するために検察官に対する人事権を行使することは許されない。 このため、検察官の人事については、検察庁の意向が尊重されてきた。 これは一般公務員の人事についてもあてはまり、各省庁の人事については、それぞれの省庁の意向が尊重される人事運用が長く行われてきた。 ところが、安倍内閣は「官邸主導」を掲げて官僚人事に対する介入を強めた。 第2次安倍内閣発足後の2014年に中央省庁の約700名幹部人事を取り仕切る内閣人事局が創設され、安倍内閣は各省庁幹部人事に対する介入を強めた。 その結果として、出世を目指す官僚は政治権力の意向に沿う行動を迫られるようになった。 「忖度」行政は内閣の官僚人事への介入が生み出した副産物である。 民主主義のルール上は国民の信託を受けた内閣が官僚人事の実権を持つことは正しい。 問題は、国民の信託を受けた政治家、内閣が公の目的のために行動するのかどうかだ。 政治家、内閣が公の目的を逸れて、ひたすら私的な利益だけを追求するなら、官僚に対する人事権付与は「狂人に凶器」ということになる。 もとより、知識、見識、良識を備えた優れた政治家を選出することが国民の責務である。 国民が知識、見識、良識を備えぬ低劣な為政者を選出すれば、政治が堕落してしまうことを防ぐことはできない。 この意味で現在の日本の惨状は、国民が選挙に際して、優れた人物を為政者に据えてこなかったことの結果であるとの側面を否定し切れない。 責任の一端は国民自身が負っているとも言える。 安倍内閣においては官僚人事においても恣意的な運用が目立ち、このために森友事件のような不祥事が発生しているのだと言える。 今回の検察庁法改正案の問題は、安倍首相が邪(よこしま)な考えで、黒川弘務氏を無理やり検事総長に引き上げ、場合によっては検事総長職を長期にわたって黒川氏に委ねる行動を取る可能性に対する批判が軸になっている。 黒川氏は本年2月に63歳の定年を迎えていた。 ここで黒川氏は退官し、本年7月には林真琴名古屋高検検事長が検事総長に就任するのが順当な人事の流れになっていた。 検察は政治家、場合によっては内閣総理大臣の刑事責任を追及する立場にある。 したがって、検察人事については検察内部の意向が尊重されてきた。 ところが、安倍内閣はこの不文律を破って、黒川氏の異例の勤務延長を閣議決定した。 しかし、黒川氏の勤務延長の根拠とされた国家公務員法の例外規定については、過去の国会答弁で検察官には適用しないとしていたことが発覚した。 安倍内閣は不法な勤務延長を行ったことになる。 この問題を解消するために、安倍内閣は口頭で法律の条文解釈変更を行ったと事後的に説明した。 つじつまを合わせるために虚偽の答弁が行われたと見られている。 黒川氏の定年は本年8月まで延長された。 現在の稲田伸夫検事総長は本年7月で就任2年を迎える。 稲田氏が退官し、黒川氏を検事総長に就任させるとの見方が有力になっている。 黒川氏は2010年から2019年まで法務省本省で官房長や事務次官などの要職を歴任した。 この間に安倍内閣にかかわる多くの重大刑事犯罪もみ消しに尽力してきたと見られている。 この意味で黒川氏は安倍内閣の守護神であると見なされており、その守護神を守護神であることを理由に異例の手続きで検事総長に引き上げようとしている安倍内閣の行動が批判の対象とされているのだ。 こうした全体像を踏まえれば、主権者多数が今国会での「検察庁法改正案に抗議する」と訴えるのは至極当然ことである。 |
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