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苦難の時に机上の空論ではない知恵を出せる政治家を求む 永田町の裏を読む
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/271915
2020/04/16 日刊ゲンダイ
莫大な補償義務から逃れる政策を進める安倍首相(人が消えた東京・新宿の繁華街)/(C)日刊ゲンダイ
営業自粛要請と言いながら、事実上は休業強制命令に等しい上からの圧力が加えられて、繁華街や町工場はすでに仮死状態に陥っている。
新型コロナウイルスの感染拡大を食い止めるにはそうするより仕方がないのかもしれない。しかし問題は、これが事実上の政府命令であるにもかかわらず、あくまでも民間の自粛であるという建前を維持し、あとは山本七平言うところの「空気という絶対権威のような力」が作動して全国民が従わざるを得ないように仕向けていくという仕掛けになっていることである。このカラクリによって、政府は自粛によって生じる莫大な経済的損失を補償する義務から免れることになる。
もちろん、困窮者への30万円給付制度とか中小企業への融資枠とかは設定されているけれども、いかにもお上が、下々の者どもから申し出があれば面倒を見てやらないでもないとでもいうような複雑怪奇な仕組みで、実効性は期待できない。こういう苦難の時期には、上からの机上の空論ではなく、生産や生活のいちばんボトムのところでどんなニーズがあるか、視線を下げて知恵を出すことが政治家の役目だろう。
その点で、最近感心したのは、フランスのギョーム農相の大都市での失業者に対する「農場労働に応募しませんか」という呼びかけに、なんと20万人を超える応募があり、政府が5000人の職員を配置してその割り振りを進めているという話だ(4月11日付日本農業新聞)。
農業大国のフランスでは、いまアスパラガス、イチゴ、トマトなどが収穫期を迎え、また畜産業では本格的な繁殖期が迫っているけれども、今年はコロナ禍の影響で外国人の季節労働者が入国することすらできない。そこをすかさず、同農相はラジオやテレビで「閉店して仕事がなくなった美容師の皆さん、畑でのイチゴの収穫や加工場でのヨーグルト製造の仕事はどうですか」と呼びかけ、大反響を引き起こした。
これは単に、失業対策のアイデアというにとどまらない。肥大化した大都市、何もかも他者に依存することで成り立つグローバルなネット社会といったものへの警告がコロナ禍にあるとすると、世界はたぶんこの先、身の丈に合った暮らしぶりへの回帰を構想せざるを得なくなり、都市から農村へ、工業から農業へという思想の流れが生じる。この危機の最中にそういう文明論的転換を仕込む知的な大臣がいるフランスが、心底うらやましい。
高野孟 ジャーナリスト
1944年生まれ。「インサイダー」編集長、「ザ・ジャーナル」主幹。02年より早稲田大学客員教授。主な著書に「ジャーナリスティックな地図」(池上彰らと共著)、「沖縄に海兵隊は要らない!」、「いま、なぜ東アジア共同体なのか」(孫崎享らと共著」など。メルマガ「高野孟のザ・ジャーナル」を配信中。
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— 日刊ゲンダイ (@nikkan_gendai) April 15, 2020
苦難の時に机上の空論ではない知恵を出せる政治家を求む
— KK (@Trapelus) April 15, 2020
こういう苦難の時期には、上からの机上の空論ではなく、生産や生活のいちばんボトムのところでどんなニーズがあるか、視線を下げて知恵を出すことが政治家の役目だろう
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