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安倍首相が連呼する「アビガン」、開発元は“首相のお友達”古森会長の富士フイルム
https://biz-journal.jp/2020/04/post_151246.html
2020.04.09 19:00 文=編集部 Business Journal
「アビガン錠」(写真:ロイター/アフロ)
安倍晋三首相は4月7日の記者会見で、新型コロナウイルスへの効果が期待できる新型インフルエンザ治療薬「アビガン(ファビピラビル)」について、本人の希望や病院の倫理委員会の了承があれば使えるようにする、との考えを表明した。安倍首相はアビガンの副作用について触れながら、本人が希望する場合、「治験ではなく観察研究というかたちで使ってほしい」「120例に投与。病状が改善したと聞いている」と述べた。
アビガンについては副作用に関する指摘も医療関係者の間では多い。アビガンと同成分の薬を患者に投与して有効性を確かめたとする論文が中国の科学誌に掲載されていたが、3日までに取り下げられたことも報じられている。取り下げられたのは、中国の南方科技大学などのチームの論文。
開発元である富士フイルム富山化学は国内の研究を継続しており、軽症者向けの臨床研究を進める藤田医科大学は「引き続き夏をめどに効果の検証を進める」としている。
富山化学の親会社、富士フイルムホールディングス(HD)の株価は4月6日、上場来高値の6420円を更新。それまでの上場来高値は2月25日の5890円だった。関係者によると、アビガンは第3相臨床試験をすでに開始している。被験者は新型コロナウイルスに感染した非重篤の20〜74歳の患者で、期限は6月末。その後、データを解析し、有効性が確認できればコロナ治療薬として申請する、としている。政府からの要請を受け、富山化学は3月上旬に200万人分の増産に着手した。原材料をはじめとするサプライチェーンを強化している。
アビガンの物質特許は日本では2024年まで有効だが、中国など海外ではすでに失効しており、アビガンの富士フイルムHDの業績への寄与は小さい。海外への輸出については日本政府と協議して決める。
■政治銘柄化した富士フイルムとデンカ
富士フイルムHDの株価は4月7日、急反落。終値は5829円。4月6日の高値6420円から591円安。6日の終値との比較でも337円安。カラ売りした投資家はかなり儲かった。4月8日の終値は5732円(97円安)。9日は一時、5485円まで下げた。6日の上場来高値から935円の下げ。1000円近い下げを記録した。
ノーベル医学生理学賞を受賞した大村智・北里大学特別栄誉教授が開発した抗寄生虫薬「イベルメクチン」が新型コロナウイルスの抑制に効果があることが判明した。「イベルメクチン」は米製薬会社メルクと共同研究して開発した、寄生虫の感染によってアフリカやアジアで広がる熱帯病の特効薬の一つである。豪州にあるモナシュ大学の研究チームが「試験管内ウイルスにイベルメクチンを投与したところ、48時間以内にウイルスが増殖しなくなった」と発表した。同大学の研究チームは新型コロナの治療薬として安全であるかどうかを確認するための臨床試験を急ぐ方針だ。
永田町では「政党関係者が富士フイルムHDの株を大量に信用取引で買って儲けた」というの真偽不明な噂が流れている。前出の安倍首相の発言以外にも、菅義偉官房長官は3日の会見で「現時点でおよそ30か国からアビガンの提供要請があり、希望する国に対して所要の量を無償で供与すべく調整している」と発言。メディアが一斉にアビガンの増産を報じているが、「官製株価」に対する疑問からか、株価が上昇する過程でカラ売りが増えた。先々、株価は下がると判断して、4月6日の暴騰局面でカラ売りを仕掛けたとみられる。
たとえば4月6日付日経産業新聞は「コロナ検査2時間短縮 富士フイルム4月15日から試薬を発売」と報じるなど、報道が株価を刺激しているが、「富士フイルムの株価が6500円まで突っ走ったら、断固、カラ売りを仕掛けるべきだ」(証券業界筋)といった声もある。
「富士フイルムの2020年3月決算が想定以上に悪いのかもしれない。マイナス情報を消すためのアビガンだったりしたら目も当てられない」(アナリスト)
コロナの感染者が大きく増えるのは4月後半からゴールデンウイークあたりという見方もあるが、富士フイルムHDの株価もゴールデンウイーク明けまでが勝負となるのか。茂木敏充外相は4月7日の閣議後の記者会見で、アビガンを各国に供与するため計100万ドル(1億円超)の緊急無償資金協力を決めたと発表した。「20カ国と調整済みで、ほかに30カ国と協議を進める」としている。「富士フイルムの古森重隆会長兼CEOは安倍首相の“お友達”として知られているが、アビガンの“空騒ぎ”と関係あるのか、ないのか」という声も聞こえてくる。
政府の要請を受けて、アビガンの原料「マロン酸ジエチル」を新たに生産することになった中堅化学会社デンカの株価も3月6日は大幅高。翌7日は急反落した。17年に生産を休止した新潟県の設備をアビガンの原料生産のために5月に再稼働させることになった。「アビガンが正式に新型コロナの抑止薬として認められない限り、デンカ株価の値上がりは一過性に終わる」(準大手の証券会社)との見方が有力である。
富士フイルム、デンカとも、まるで政治銘柄のような荒い値動きを続けている。
(文=編集部)
【続報】
メリルリンチ日本証券は富士フイルムHDの投資判断を「買い」から「アンダーパフォーム(売り)」に2段階引き下げ。テレワーク拡大に伴う複合機の需要縮小リスクが見過ごされている、と指摘。6日に6420円の上場来高値に吹っ飛んだ株価は元の木阿弥。3月13日の安値(4150円)に対する上昇率が55%に達していたのだから当然だ。
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