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※週刊朝日 2020年4月17日号
古賀茂明「元近畿財務局職員の赤木俊夫さんの命がけの告発を無駄にするな」
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200406-00000021-sasahi-pol
AERA dot. 4/7(火) 7:00配信 週刊朝日 2020年4月17日号
古賀茂明(こが・しげあき)/古賀茂明政策ラボ代表、「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。1955年、長崎県生まれ。東大法学部卒。元経済産業省の改革派官僚。産業再生機構執行役員、内閣審議官などを経て2011年退官。主著『日本中枢の崩壊』(講談...
命を絶った赤木俊夫さん (c)朝日新聞社
官僚の不祥事が続く中、またしても驚きのスキャンダルが報じられた。
経済産業省の官僚が公文書改ざんを行ったというのだ。3月16日朝、梶山弘志経産相は3億6千万円相当の原発マネー不正還流問題を起こした関西電力に「業務改善命令」を出した。しかし、この命令を出す前に必要な「電力・ガス取引監視等委員会」への意見聴取という手続きが行われておらず、これに気付いた担当者が、意見聴取が行われていたことにする嘘の決裁文書を作成したという。これは、刑法の虚偽公文書作成罪に当たる可能性が極めて高い。日本を代表する公益企業が不正を働き、その公益企業を監督する天下の経産省が犯罪行為を働く。この国はどこまで腐っているのかと思う。
関電の不祥事は約30年間続いた。内部告発の制度はあったが全く機能しなかった。森友学園事件でも同じことが起きた。安倍晋三総理夫人の安倍昭恵氏らの関与を隠す目的で行われた決裁文書の改ざん。改ざん作業を強要された元近畿財務局職員の赤木俊夫さんが自殺したのは、心を病んでいたからではない。赤木さんは、命がけで、「内部告発」を行ったのだと思う。
日本には、「公益通報者保護制度」がある。この制度を使えば、通報を受けた組織が調査して真相を明らかにし、しかるべき措置が取られる。通報した人の秘密は守られ、通報しても解雇されたりはしないと法律に書いてあるから心配する必要はない。したがって、悪いことを知った人はためらわず告発できる……はずである。
しかし、現実は違う。通報した人の情報が、告発された人や告発者の上司などに伝えられる例が後を絶たない。さらに、告発した人が、様々な人事上の不利益やいじめ、嫌がらせを受けるのもごく普通だ。
鉄の結束を誇る財務省では、そもそも内部告発などほとんど考えられない。さらに森友事件は、組織としての不祥事で、しかも、安倍総理夫人直結なのだから、告発しても返り討ちに遭うのが落ち。検察に期待しても、本格立件どころか、むしろ、検察の狙いは、赤木さん一人に罪をかぶせて一件落着というシナリオだった可能性すらある。
そんな状況でも、赤木さんは、何とか、自分の罪を償い、正義を実現したいと考えた。そして、究極の手段として選んだのが、手記を遺し、死をもって告発することだったのだ。
そこで、赤木さんの手記を見てもなお再調査を拒む安倍総理と麻生太郎財務相にお願いしたいことがある。今国会に政府が提出した「公益通報者保護法改正案」の修正だ。この改正案には制度に関する改善点もあるが、最も重要な改正が含まれていない。通報者に対する不利益な取り扱いの禁止義務に違反した場合の企業への罰則がないのだ。経団連が強く反対したからだが、企業の不祥事がこれだけ続いているのに、その不祥事を起こした大企業の肩を持つ姿勢は極めて問題だ。
さらに、役所については、これだけ酷い不正行為が続いているのだから、そんな組織に内部告発を取り扱わせること自体に問題がある。ここは思い切って、日本弁護士連合会に公務員専用の公益通報窓口を設置して不正の告発を受ける制度を作ってもらいたい。役所に窓口を作っても、泥棒に泥棒を捕まえさせるのと同じで意味がないからだ。
それくらい思い切った措置を取れば、赤木さんの死も少しは報われるだろう。
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