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健康な若者が死に始めた。新型コロナ拡大のイタリアは日本の明日
https://www.mag2.com/p/news/447158
2020.04.03 『クリエイターへ【日刊デジタルクリエイターズ】』 まぐまぐニュース
新型コロナウイルスによる感染症の死者が1万3,000人以上と、震源地中国を超えてしまったイタリア。深刻な医療崩壊が起きているとの指摘もありますが、現地は今、どのような状況となっているのでしょうか。今回の無料メルマガ『クリエイターへ【日刊デジタルクリエイターズ】』では、執筆者のひとりでローマのマンガ学校で講師を務めるMidoriさんが、イタリアの現状をレポート。さらに「今の日本は3月始めのイタリアと同じ」とし、「感染爆発した国の様子を見て正しく警戒してほしい」と強く訴えています。
イタリアからのお願い「絶対に甘く見ないでください」
閉じた空間で大人数が集まるところを避け、頻繁な手洗い、うがい、洗面が必須です。あらゆる石鹸の泡の成分が、ウィルスの水溶部分と油溶部分を切断して繁殖できなくするようです。
ちなみにイタリア人は、あらゆる洗剤の一人あたりの消費量が世界一というくらい清潔な国民です。でも、ハグと握手の挨拶習慣と、集まって食べてだべるのが大好きなところがアダになったと思います。
とうぞ、頻繁な手洗い、咳やくしゃみをするときは手で覆うのではなく腕で(手で覆ったら手にウィルスが付着して、その手であちこち触るとまずい)、ということを守って、食い止めてください。お願いします。
今、日本全国の累計感染者数はイタリアにおける3月始めと同等です。イタリアでは10万人を越えるのに、一か月しかかかってません。
「イタリアの医療機関がなってないんだろ」「イタリアではハグするから、こっちはしないし」など、「ウチは違うから大丈夫」と思いたいための言い訳を捜さないでいただきたい。イタリアでも、中国でこの感染が始まった時は似たようなことを言ってました。人間の性です。
医療や細菌学などの知識はまったく持っていませんが、素人目にもこのウィルスはこれまでのウィルスと性格が違うと感じます。
いろいろ読んだところ、我々高等動物のDNAは二重螺旋でどこかがエラーを起こしても修復するそうですが、ウィルスは一重でエラーが起こるとそのまま継続して行くので変異しやすいそうです。
だから、去年のインフルエンザのワクチンは、今年は効かなかったりするんですね。このウィルスは感染力が強く、エラーを起こす、つまり変異を起こす場が多いので、変異の速度が凄いように思えます。
イタリアでも当初は、重篤になるのは高齢者か糖尿病などの既存症を持った人だけ、と言われていて実際そうだったのですが、ここへ来て、健康な若者が死亡するケースが出て来ています。先日、26歳のボーイスカウト隊長を務めていた青年が、この新型コロナで亡くなりました。
では、以下、イタリアからのレポートです。
数字で見る現状
3月1日から3月31日までの累計感染者、死亡、回復した人の数を一日置きに並べていきます。たまに、データが見つからずに、一日おかずに翌日の集計数のこともあり。数字が語るものをぜひ読み取って欲しい。
・3月1日:累計感染者数:1,694人、累計死亡:41人、累計回復者:83人(興味深いデータとして、この日までに検査した人21,127人で92%が陰性の結果がでている)
・3月3日:累計感染者数:2,502人、累計死亡:79人、累計回復者:160人(この時点で専門家諸氏は、次の一週間から10日で疫病の勢いがわかるだろう
としていた)
・3月5日:累計感染者数:3,858人、累計死亡:148人、累計回復者:414人
・3月7日:累計感染者数:5,883人、累計死亡:283人、累計回復者:160人
・3月9日:累計感染者数:9,172人、累計死亡:463人、累計回復者:724人(イタリア全土をレッドゾーンとする首相令)
・3月11日:累計感染者数:12,462人、累計死亡:827人、累計回復者:1,045人
・3月13日:累計感染者数:17,660人、累計死亡:1,286人、累計回復者:1,439人(専門家諸氏の発言から10日目、感染者数が約7倍になっている)
・3月15日:累計感染者数:24,747人、累計死亡:1,809人、累計回復者:2335人
・3月17日:累計感染者数:31,506人、累計死亡:2,503人、累計回復者:2,941人
・3月19日:累計感染者数:41,035人、累計死亡:3,405人、累計回復者:4,440人
・3月21日:累計感染者数:53,578人、累計死亡:4,825人、累計回復者:6,072人
・3月23日:累計感染者数:63,927人、累計死亡:6,077人、累計回復者:7,432人
・3月24日(25日のデータ見つからず):累計感染者数:69,176人、累計死亡:6,820人、累計回復者:8326人
・3月27日:累計感染者数:86,498人、累計死亡:9,134人、累計回復者:10,950人
・3月29日:累計感染者数:97,689人、累計死亡:10,779人、累計回復者:13,030人(この日現在、感染者は73,880人、前日比の増加率が5.64%と、3月半ばの10%から見ると落ちている)
・3月31日:累計感染者数:105,792人、累計死亡:12,428人、 累計回復者:15,729人(感染者の増加率3.9%)
ざっと見るだけでも、感染力のすごさがわかる。
感染者数のうち、感染が始まった北イタリアのロンバルディア州(ミラノが州都)がその3割強を占める。エミリア・ロマーニャ(州都ボローニャ)、ベネト(州都ベネツィア)、ピエモンテ(州都トリノ)を含めた北イタリア4州(隣り合っている)を合計すると7割になる。
人口の少ない南イタリアのバシリカータとモリーセは、感染者が二桁で極度に少ない。逆に「あんな所にも」飛び火してるのか、と驚いてしまうけど。
今、日本での累計感染者数はイタリアの3月始め。絶対に油断は禁物です。
日本でもニュースになっている、医療崩壊を起こしているのは北イタリア、特にロンバルディア州のベルガモ市。ベッドは満杯で隔離する病室も一杯。亡くなった方を荼毘に付すことにしたが、その習慣がなく荼毘設備がわずかなので追いつかない。棺桶も追いつかない。遺体を収める墓地も空きがなくなり、州外に運び出す軍のトラックの列の写真に心痛んだ。
ベルガモ市では感染のおそれがあるため、葬儀屋が遺体処理を施したり、葬式用の服に着替えさせたりすることを禁止。
亡くなると、神父さんが遺体に香油を与えて最後の秘儀を行うが、そのために50人以上の神父さんが感染して亡くなっている。これは市としては禁止はできないのだろうな。
病室の不足を補うために、ミラノでは見本会場を簡易病室に改造。インテリア、車、ファッションなどの重要な国際的見本市が開かれる場所。コロナの騒ぎが収まらなくては、見本市の開催はないからこれは良い案。
病室が足らないことを受けて、クルーズ船運行会社のMSCが、船を検査で陽性と出た人の待機場所に使う提案をした。何千人も居住させることができるし、食事などを用意する施設もあるのだから、なかなか良い提案だ。実行には至ってないけど。
首相令にみる感染の拡大と規制
当初、商店閉鎖、自宅待機は3月25日まで、そして4月2日まで、と延びたけど、感染する人が増え続けているから、もっと延ばすことになった。
前々回の「ローマでコロナ」と重複するけど、3月の首相令の行程を。
3月1日(累計感染者数:1,694人):北イタリアをレッドゾーン指定。レッドゾーンの出入り禁止、生活に必須なサービス等を除き、すべての文化活動、教育活動、商業活動禁止。イエローゾーン(北部3州とマルケ、リグーリア州)文化活動(スポーツイベント等)、教育活動は3月8日まで禁止。宗教施設、美術館・文化施設、レストランやバール(喫茶店)、パブ、それ以外の商業施設等、人が集まる場所においては、人同士が接触を避けられるよう「1メートルの距離」を保つ配慮が求められる。病院や介護施設へのアクセス制限あり。
同日、首相令とは別に、感染者が出始めたラツィオ州(州都ローマ)も、州令を発行。修学旅行、ツアー、課外授業の3月15日まで中止。レッドゾーンに滞在した者は、管轄地域の指定保健機関内対策部に通知し、14日間の自宅隔離。
3月4日(累計感染者数:3,089人):イタリア全土で3月5日から15日まで学校、大学(専門学校含む)休校。会議、会合の禁止。映画館劇場など互いに1mの対人距離を保てない場所での催し禁止。スポーツイベント禁止。レッドゾーン以外では観客なしでの遂行可。高齢者や慢性疾患のある人の外出を控える呼びかけ。医療、介護施設への立ち入り禁止。
この頃は、まだ重篤になるのは高齢者と糖尿病などの、疾患を持っている人に限られていた。健康な若い人は仮にかかったとしても、治癒すると誰もが思っていたし、マスメディアもそう報じていた。
3月5日(累計感染者数:3,858人):75億ユーロ(約8,960億円)の新型コロナウイルス対策費。
3月8日(累計感染者数:7,375人):新たな首相令で個人の移動を回避。職務上の必要性、健康上の必要性を除く移動の回避(違反に対する罰有)。プラス、レッドゾーン拡大。全部北。すべての商業施設(商店、床屋、美容院)は午後6時で閉めること。日祭日は営業しないこと。
3月9日(累計感染者数:9,172人):イタリア全土をレッドゾーン。出歩く際には住所氏名と外出目的を記した、自己申告用紙を義務付け。その後、数回に渡って記入事項を増やした改訂版を発表して行く(自宅でプリントアウト。プリンターが自宅にない場合は、警察官が用意の用紙に記入)。
3月11日(累計感染者数:12,462人):3月25日まで、生活に密着した食料品店、薬局などを除き、すべての商業施設は営業を停止する。「午後6時に閉める」ではなく、閉店。各事務所、工場は業務上必須な部署を除き、活動を停止すること。公共交通機関は動くが、なるべく出歩かないように。
250億ユーロ(約2兆9,500億円)の追加対策。
● 新型コロナウイルス、イタリア政府が250億ユーロの追加対策を発表
感染の封じ込めや予防対策、医療体制に対する支援失業対策や雇用に対する支援家計および企業の資金繰りに対する支援納税期限の延長など税制面での支援。
3月14日(累計感染者数:21,157人):(今回の商業活動停止で大きな被害を被っている)観光業関係法人、及びフリーランス、劇場、映画館、スポーツクラブ、フィットネス、芸術的、文化的、娯楽的、スポーツ的、宗教的な性質のものを含む、コース、フェア、イベント開催者)の税金支払い4月30日までの一時停止。
3月17日(累計感染者数:31,506人):首相令「イタリア治療」と命名。税金支払い停止を5月まで延長。フリーランスに600ユーロ(約7万円)の援助金(3月のみ)。店舗の賃貸にかかる税金の控除。他に、住宅ローンの軽減、経営者に対して消毒にかかる費用の補助など。主に税金控除について事細かく追加。
3月23日(累計感染者数:63,927人):3月25日までとした商業施設営業停止を4月3日まで延長。
3月26日(累計感染者数:80,539人):生活に必要のない用事で外出した者に対する処罰(400ユーロから3,000ユーロ/約4万7,000円から約37万円/の罰金。症状があるにもかかわらず外出した者には、1年から5年の懲役)。
3月30日(累計感染者数:101,739人):厚生省はすべてのコロナ対策(不要の外出禁止、商業活動停止など)を復活祭(4月12日)まで延期する方針を政府に打診。
日付けは忘れてしまったけど、3月半ばごろ、今期の医療関係学校卒業者を試験なしで2万人雇用する決定がなされた。
自己申告書の内容の変化
自己申告書の内容が、日を経るにつれて変化が出ている。1回目は:氏名、誕生日、生まれた土地、現住所、身分証明書名とその発行日と発行官公名。3月9日発の首相令を承知している旨、外出理由(仕事、生活に必要、健康、住居への帰還の4択)、具体的な理由、当日の年月日、署名。
最終4回目では、自分の身分を記載の後、「新コロナウィルスに感染しておらず、クアランティンの行動制限中にないこと」「外出の出発地と目的地」、首相令の日付け(3月25日)、「該当州における特別対策を承知している(州の名)」、「違反した場合の処罰を承知している」が追加され、外出理由の4択の文が長くなり、「絶対的緊急性」の言葉が追加されている。
※ 編集部注 クアランティン(コトバンク)
さらに、具体的理由を書く項目には例文が追加され「……での勤務、医療検査、介護を必要とする者の付き添い、未成年者の付き添い、犯罪報告、海外からの帰還、他の特別な理由等」が追加されて、A4の用紙に一杯になっている。
感染者数が4桁の時は、周りに重篤患者も稀で自分ごととは思えず、「不要な外出はしないように」との自粛要請を守らない人が多々あり、感染増加が止まらなかったので徐々に厳しくして、ついに罰則まで追加する羽目になった。
ビデオで授業
当初は4月3日までの休校だったが、感染者増加が止まらず、学校がいつ再開になるのか見通しが立たないので、私が講師をするマンガ学校でも、ビデオチャット授業を公式に再開することにした。使用するプログラムは“ZOOM”。
● ZOOM
3月最終週から「開校」ということになり、その10日ほど前にグループに分けてZOOMを使ったミーティングを行い、試してみた。プログラム自体は、自分のコンピューター上にあるファイルを全員の画面に提示できたり、「ホワイトボード」ツールで書きながら説明(タブレットがないときついけど)できたり、ほぼ教室でできることは可能。
ただ、ネット回線が弱い自宅からだと、私の声が飛んだりしてたらしい。今、誰もが家にいて、回線を使いまくってる状況だから、弱くもなるだろうね。グラスファイバーはまだだし。
ビデオチャットを使った授業やミーティングをする学校、企業は多いらしい。図らずも、今後の社会生活のあり方を示唆することになるかも。排気ガスまき散らかして移動しなくてもいいじゃん、ということで。
私の授業はまだなので、次回にその様子をお伝えできるかも。
困っている人々
私たちが住むのは郊外の元農家の家なので、農地が広く、屋外へ出ることができるので閉塞感はない。
でも街中のマンション住まいの人は精神的に参るのではと思う。特に狭いアパートで大人数の家族、小さな子どもがいる家庭の閉塞感は想像にあまりある。
ハッシュタグ「私は家に留まる(io resto a casa)、が出始めた頃はあまり話題にならなかったが、ここへ来て家族間や隣人間の諍いで、警察に来る通報が増えたそうだ。DVの被害者も閉じ込められて困っているのでは、と「ピンク電話(DV被害を相談する回線)」の責任者が言っていたのを読んだ。
一人暮らしの高齢者、小さな商店の経営者の困った話題が、ニュースになるようになった。シングルマザーで、ある家庭の掃除などで生活費を得ていた女性が「もうお金がなくて食べ物が買えない」と泣いていた写真が心に刺さる。
医療関係者も心身共に疲労が激しい。休日なく働き続け、特に重篤患者を担当する看護師で「何もしてあげられない」と涙する姿も印象的だ。ウィルスにかかっているのだから、誰の面会もありえない。
しかもウィルスが肺を直接攻撃するので、一旦肺炎になると呼吸困難に陥るまでの時間が短いそうだ。5日ぐらいで危篤に陥ってしまい「一人で死んでいくの……」といかにもやるせなさそうだった。
そして呼吸器が足らない。それを操作する技師も足らない。こんなに一度に同時に、それらが必要になることなどなかったのだ。まさに想定外。
パフォーマンスで励ましあい
皆で励ましあおうという動きも十分にある。高名な音楽家がYoutubeを使ってパフォーマンスをしてくれる。もちろん、この機会を待たなくても彼らの演奏を聞くことはいつでもできたわけだけど、この災難のためにわざわざ演奏をし、それが話題になれば、聞いてみようという気になる。
私個人の音楽の好みから外れるジャンルであるものの、名バイオリニスト、ウト・ウギ氏の音色は心に沁みる。音楽は奇跡だ、と思う所以でもある。以下のURLは氏がこの機会に演奏したもの。
● #WeAreItaly – Uto Ughi
● オルケストラ・シンフォニア・G.ロッシーニ
チェロ、バイオリン、ピアノの三人がそれぞれの住まいからネットで繋がって
演奏。
3月13日、「午後6時に歌おう」と誰が言い始めたのか、フラッシュモブの動きが盛んになった。これはイタリア中。アパートのテラスから顔を出し、皆で歌う。国営放送RAIのニュースでも取り上げられた。
(中略)
image by: Vlad Ispas / Shutterstock.com
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