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主要3部門で受賞「新聞記者」の快挙は反安倍の広がり示す 三枝成彰の中高年革命
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/270420
2020/03/14 日刊ゲンダイ
(C)2019『新聞記者』フィルムパートナーズ
先週の日本アカデミー賞には驚いた。最優秀作品賞に加え、最優秀主演男優賞、最優秀主演女優賞の主要3部門を「新聞記者」が受賞(優秀監督賞、優秀脚本賞、優秀編集賞も受賞)。反安倍が色濃く反映された作品が高い評価を受けたのだ。
日本アカデミー賞は会員である映画関係者の投票で決まる。会員には東宝、松竹、東映といった大手3社の社員が多く含まれているので、以前から「会社の号令によって結果が決まる出来レースではないか」との指摘もされてきた。
今回の「新聞記者」は独立系の作品である。しかも森友・加計学園の疑惑をモチーフにしていて政治色が強い。原案は、鋭い追及で菅官房長官をタジタジとさせている東京新聞の望月衣塑子記者の同名ノンフィクション。そんな作品に映画人がこぞって票を投じたのだ。安倍さんは「政治家にならなかったら映画監督をやりたかった」などと言っていたが、本人は映画界から相当嫌われているらしい。映画関係者の間で「ノット安倍」は深く浸透しているのだろう。
主演の松坂桃李さんも、オファーを受け入れた所属事務所も立派だ。もうひとりの主演が韓国人女優のシム・ウンギョンさんになったのは、日本の女優が尻込みしたからだと聞いている。そのため、日本人の父と韓国人の母の間に生まれた米国育ちの女性という設定にせざるを得なかったそうだ。
公開前はメディアで取り上げられることもなく、テレビや新聞の広告もほとんど打てなかった。そのため私も上映されていることを知らず、人づてに聞いて映画館に足を運んだ。細部には少し物足りなさも感じたが、このような作品が作られ、映画人に評価されることは大変喜ばしい。「万歳!」と叫びたいぐらいだ。望月記者にも頑張ってもらいたい。
今、社会の潮流は大きく変わっている。当欄でも取り上げたが、米アカデミー賞は「パラサイト」が作品賞を受賞し、弱者に目を向けないトランプ政権への批判が反映される結果となった。日本も同じだ。大勢の人たちが、貧富の差の拡大を放置して仲間内だけを優遇するような政権に辟易している。「丁寧に説明を尽くす」と言いながら、同じ文言を繰り返すだけの安倍さんにうんざりしているのだ。
右に振れた振り子は、左に戻り始めている。戦争賛美と批判された「永遠の0」が日本アカデミー賞で最優秀作品賞を受賞したのは2015年、もう5年も前のことだ。安倍さんの命運もようやく尽きそうである。
三枝成彰 作曲家
1942年、兵庫県生まれ。東京芸大大学院修了。代表作にオペラ「忠臣蔵」「狂おしき真夏の一日」、NHK大河ドラマ「太平記」「花の乱」、映画「機動戦士ガンダム逆襲のシャア」「優駿ORACIÓN」など。2017年、旭日小綬章受章。
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— 日刊ゲンダイ (@nikkan_gendai) March 13, 2020
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