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「本丸は安倍内閣」山本太郎氏の奇策 ざわめく与野党https://t.co/O3NR53PA2u
— 朝日新聞名古屋編集局 (@asahi_nagoya) February 8, 2020
永田町の常識にとらわれない規格外の言動で、昨夏の参院選に旋風を起こしたれいわ新選組の山本太郎代表（45）。衆院選に向けてちらつかせる「次の一手」が、いま波紋を呼んでいる。
「本丸は安倍内閣」山本太郎氏の奇策 ざわめく与野党
https://digital.asahi.com/articles/ASN275QPBN25UTFK00C.html
2020年2月8日 7時30分 朝日新聞
フロントライン 旋風の行方
永田町の常識にとらわれない規格外の言動で、昨夏の参院選に旋風を起こしたれいわ新選組の山本太郎代表（45）。衆院選に向けてちらつかせる「次の一手」が、いま波紋を呼んでいる。
首相主催の「桜を見る会」の問題などを野党各党が国会で追及していた1月31日の昼下がり、山本氏は人影もまばらな愛媛・松山の繁華街にいた。
「ポスターをはらせてもらえませんか」。飛び込みで訪ねた飲食店で次々と断られた末、ようやく一軒のレストランの店内に張り出すことができた。30代の女性店員は山本氏を知らなかったが、「熱意にほだされた」と受け入れた。
全国キャラバンの出発地、北海道・利尻島で民家の壁にポスターを貼る山本太郎氏=2019年9月18日午後
北海道・利尻島を皮切りに山本氏が全国キャラバンを始めたのは昨年9月。これまで東北、九州、中国、四国など全国で街頭演説とポスター貼りなどを続けてきた。「地元の人と直接話し、街角で主張を知ってもらう効果は大きい」。そんな思いで、人口の少ない郡部にもいとわず足を運んだ。
衆院選に向け、れいわ新選組の山本太郎代表が全国各地で街頭演説を続けています。「れいわ旋風」は再び巻き起こるのか。政界異端児のいま。 |
その夜は松山市内のホールで、約300人が参加する「おしゃべり会」を開催。会場からの質問を受け付ける形で対話を重ねた。
「皆さんの生活を底上げするには消費税廃止しかない」「自民党の憲法改正草案は間抜けだ。権力を縛る憲法が、人々を縛る内容になっている」。
多岐にわたるテーマで歯切れ良く説き続けること約3時間。集会後には、握手を求める長蛇の列と、グッズ販売や寄付の受付に人波ができた。参加したアルバイトの40代男性は「政治家はウソつきという不信感があり選挙にも行かなかったが、本気度が伝わってきた」と語った。
対話集会後、参加した車いすの男性に名刺を手渡す山本太郎氏（左）=2020年2月6日夜、山口県下関市、寺本大蔵撮影
憤り隠さない野党幹部
「れいわは公党になっても、いまだ色もの扱い。草の根、足を使って活動していくしかない」。山本氏は党の現状について、そう語る。
結党から3カ月で臨んだ昨夏の参院選で、れいわは比例区で228万票を獲得し、法律上の政党要件を満たした。非正規労働者など生きづらさを抱える人たちの声を代弁しながら街頭で対話を重ねるスタイルが、SNSなどを通じて共感を広げた。参院選前までに集めた寄付は4億円超。「れいわ旋風」と呼ばれた勢いに、他党は「政治に見捨てられたと感じていた層を呼び込んだ」（立憲民主党幹部）と舌を巻いた。
参院選で当選を決め、記者会見で笑顔を見せるれいわ新選組の木村英子氏（左）と山本太郎代表=2019年7月22日、東京都千代田区、西畑志朗撮影
議席を得たのは、優先的に当選できる「特定枠」の重度障害者2人。山本氏自身は全ての比例候補の中で最多の99万票超を得たが落選し、非議員として街宣などを続けてきた。
その活動がいま、転機を迎えようとしている。
松山市の集会があった31日、れいわのホームページに「2020活動方針」が掲載された。そこには、次の衆院選に向けたこんな方針が記されていた。
「野党と共闘し、選挙に挑む。ただし、『消費税を5%に減税』という共通政策が結べた場合に限る。『消費税5%へ減税』の旗が立たない場合、れいわ新選組は独自の戦いを進める。100人から131人の候補者擁立を目指す」
独自候補を擁立する際の参考として、参院選比例区での同党の得票数を衆院選の全国289選挙区に落とし込んだ上位100選挙区も公表。東京都内の全25選挙区や、立憲の枝野幸男代表（埼玉5区）など野党幹部の選挙区も入っていた。
1人しか当選できない衆院小選挙区で、野党が割れれば与党への対抗は難しいのは自明の理だ。「共倒れ」のリスクを突きつけ、まず消費税率5%への引き下げを政策目標に掲げるよう迫る手法に、ほかの野党からは戸惑いや反発が上がる。
参院選でれいわ新選組の山本太郎氏（中央）が応援に駆けつけ、共産の穀田恵二国会対策委員長と並んだ=2019年7月12日午後、京都市中京区、佐藤秀男撮影
「他党の擁立状況にコメントする立場にはない」。立憲の枝野氏は31日の会見でそう平静を装った。だが、立憲幹部は「れいわはけんかを売っているようなものだ。最後は自民党に寄っていくのではないか」と憤りを隠さない。共産党の小池晃書記局長は「冷静に見守りたい。れいわも野党共闘は否定していないと理解している」と語った。
立憲や国民民主党内には、代わりの財源がはっきりしない状況での大幅な消費減税には、根強い反対論がある。れいわとほかの野党の調整が整わなければ、最近の国政選挙で積み上げてきた野党共闘の枠組みが崩れる可能性もある。
それでも山本氏は強気だ。「消費税5%から一切妥協するつもりはない。おれを甘く見るな」。最近、周辺にそう見えを切った。
背景にあるのは、全国行脚で目にした暮らしの疲弊ぶりだ。広がる格差、老老介護、奨学金の返済に苦しむ若者世代……。「各地で悲鳴を聞いた。一刻も早く多くの人たちの暮らしを底上げしないと、大変なことになる」と話す。
現状に不満を抱く民意は、どこに行き場を見いだすのか。「選挙が近づけばれいわにまた大きなうねりが来る」。山本氏は、そんな見方を崩していない。
参院選投開票日の2日前、JR新橋駅前で開かれたれいわ新選組の街頭演説。多くの人が集まっていた=2019年7月19日、東京都港区新橋2丁目、佐藤恵子撮影
事実上のワンマン政党
共闘をめぐる調整の先行きは見えないが、ほかの野党も山本氏の存在感を軽んじているわけではない。
「夏の東京都知事選で、山本氏を野党統一候補として担ぐ可能性は」。1月下旬のBS日テレの番組でそう問われた立憲の長妻昭選挙対策委員長は、「十分、検討の余地はあると思う」と語った。
野党の一部には山本氏の知名度を当て込み、再選をめざす小池百合子都知事の対抗馬に立て知事選を戦い、その勢いを次の衆院選につなげる、といったシナリオもささやかれる。当の山本氏も「選択肢としては排除しない」と語る。
政党としてのあり方を疑問視する与野党
「おしゃべり会」で、参加者から質問を受け付ける山本太郎氏=2020年2月6日夜、山口県下関市、寺本大蔵撮影
ただ、与野党からは、れいわの政党としてのあり方を不安視する声も上がる。
山本氏の事実上のワンマン政党であるれいわは、政策から党の運営方針の決定まで、山本氏が一手に引き受けている。経済、社会保障、外交・安全保障などの各論で何を打ち出し、どの政党と連携するのか。山本氏の判断ひとつに左右されるような実情について、自民党関係者は「山本氏個人への白紙委任になりかねない」と指摘する。
れいわは2月中に衆院選の1次公認10〜20人を発表する予定だ。さらに100人規模の候補を擁立するとなれば、「選挙資金だけで20億円以上かかる」（立憲関係者）との見方もある。規模が拡大する党を継続的に支えていく体制の整備も課題だ。
永田町の空気、読まないと公言
全国キャラバン最終盤の2月6日、山本氏は安倍晋三首相の地元の山口・下関に入った。同夜、市民会館で開いた「おしゃべり会」に参加した約400人を前に、「首相のおひざ元に候補者を立てないなんて選択肢があるか」と宣言。次の衆院選で、れいわから安倍首相に対立候補を立てる考えを明らかにした。
会場から「地方都市をどう再生していくのか」と質問が飛ぶと、山本氏は「山口県内は盛り上がっているか」と逆質問。聴衆が「全然！」と応じると、山本氏は「桜を見る会」を念頭に「皆さんは忖度（そんたく）してもらっていないのか。あれは有権者の買収だ。ああいうことは良くない」と声を張り上げた。
永田町の空気は読まないと公言する山本氏。その振る舞いは時にほかの野党とあつれきを生むが、「本丸はあくまで安倍内閣だ」とも語る。次の政治決戦に向け、「れいわ旋風」が再び巻き起こるのかどうか。政界の異端児から、まだまだ目が離せそうにない。（寺本大蔵）
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