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便乗改憲論や差別助長 新型肺炎で見えた政治家の卑しさ
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/268572
2020/02/04 日刊ゲンダイ
桜隠しに新型肺炎を利用(安倍首相)/(C)日刊ゲンダイ
終息する兆しは全く見えない。中国湖北省武漢市が発生源とされる新型コロナウイルスによる肺炎の死者が3日、2003年に大流行したSARS(重症急性呼吸器症候群)による死者(349人)の数を上回った。新たに64人が死亡し、中国での死者は計425人に上る。中国以外でも、フィリピンで1人の死亡が確認された。
中国政府によると、国内の感染者数は2万人を超え、感染が疑われる人も2万人ほどいる(4日午前8時半現在)。
新型肺炎は米中貿易摩擦の影響で減速していた中国経済を“直撃”。春節(旧正月)の連休が明けて初の取引日となった3日の上海総合指数は、連休前の終値比7・7%安と、15年8月の「人民元ショック」時以来、4年半ぶりの下落率を記録。人民元の対ドル相場も1ドル=7・0257元と、1カ月ぶりとなる7元台で取引を終えた。
感染拡大を受けて各国は中国人や訪中外国人の入国を規制する動きが加速。日本でも1日午前0時から、日本への入国申請日の前14日以内に湖北省での滞在がある外国人や、湖北省発行の中国旅券を所持する外国人の入国を原則として拒否する措置を始め、菅官房長官は3日の記者会見で、出入国管理法5条に基づく措置として、2日間で8人の入国を拒否したと明らかにした。
無為無策との世論批判をまるで忘れた安倍首相
「新型肺炎ショック」は一体、どこまで拡大するのか。感染の広がり具合や、中国の対応について世界が固唾をのんで見守る中、「これで桜を見る会疑惑も吹き飛んだ」とほくそ笑んでいるのが政府・与党議員だという。新型肺炎について政府はこれまで後手後手の対応。野党が求めた「指定感染症」への早期対応にも周知期間が必要として応じず、武漢市からのチャーター機の搭乗者に約8万円を請求する方針を示して世論の批判を買った。そんな政府対応が一転したのが、WHOの「緊急事態宣言」を打ち出して以降だ。
「前例にとらわれず先手、先手の対応を進めてほしい」「情勢の変化を踏まえて、やるべき対策を躊躇なく実行する」
異例の入国拒否を決めた際、こう強調していた安倍首相は3日の衆院予算委でも「危機管理への対応力を一層高めていきたい」と声を張り上げていた。無為無策と批判が出ていた政府対応はすっかり忘れたよう。よくもまあ、「躊躇なく」などとエラソーに言えるものだが、「桜を見る会疑惑」でノラリクラリしていた姿と異なり、いつになくハキハキ答弁している様子を見ていると、安倍自身も「これでオレも桜問題から逃げ切れる」と思っているのだろう。
早大法学学術院教授の水島朝穂氏はこう言う。
「安倍首相は新型肺炎が注目を集めることで政権が抱えている3つの問題を隠せると思っているでしょう。1つは桜疑惑、2つ目は緊張高まる中東への海自派遣の是非、そして3つ目が大幅下落している株価です。いずれも新型肺炎への対応を理由に時間稼ぎができる。本来であれば、外相や厚労相が説明するべき内容でも総理大臣が率先して答弁しているのは、いつもの『やっているフリ感』を出すためでしょう」
卑しい本性が垣間見えるようだ。
長引くほど日本もダメージ(北京の地下鉄駅の入り口で利用客の体温を測定する担当者ら=3日)/(C)共同通信社
国民の不安や危機意識につけ込み利用しようとしている卑怯な政権 |
旧民主党政権の危機管理対応を度々、批判してきた安倍だが、今回の新型肺炎問題では、国民も安倍政権の危機管理能力もゼロだと分かっただろう。
そして浮き彫りになったのが、品性下劣で幼児レベルの知性しか持たない今の自民党議員の実態だ。
<新型肺炎 自民「中国人入国拒否を」対策本部、暴論相次ぐ>。1日付の毎日新聞はこんな見出しで驚きの記事を掲載していた。
自民党が1月31日に党本部で開いた新型肺炎の対策本部会合の様子を報じたのだが、その内容があまりに酷かった。
<出席議員から「中国人の入国は拒否すべきだ」との趣旨の発言が出た。冷静な議論を促す声もあったが「パニック状態」(党幹部)で持論を展開する議員が後を絶たず、1時間予定の会議は2時間続いた>
<「邦人の救出・帰国を除き、中国からの渡航は全面停止を」といった過激な見解や、「ウイルスを殺菌するスプレーを国が推奨すべきだ」との科学的根拠に乏しい主張も。終了後、出席者の一人は「聞いててあきれた」と吐露。党幹部も「こういう時に人の本質が見える。政治家って本当にあたふたする」と嘆き顔だった>
いやはや、とてもじゃないが、これが国会議員の発言とは到底、思えない。
ここぞとばかり中国に対する蔑視や敵視、差別の感情をぶちまけているに過ぎず、新型肺炎の感染防止策の議論を口実にしたヘイトスピーチと同じだ。
世界に影響力を持つ中国が弱れば困るのは日本
ドサクサはこれだけじゃない。この機に乗じて憲法を改正し「緊急事態条項」の新設を求める声が自民党内から出ていることだ。論争の発端は1月30日、自民党二階派例会での伊吹元衆院議長の発言だ。伊吹は新型肺炎を「指定感染症」としても強制入院などには一定の周知期間が必要になることから、「周知期間を置かなくてもよくするには憲法を変えないと」と持論を展開。今回の新型肺炎拡大が「憲法改正の大きな一つの実験台。緊急事態の一つの例」などとぶち上げたのだ。
自民党の改憲草案に示された「緊急事態条項」とは首相や政府の権限を強め、個人の権利を制限する内容だ。政権寄りの検察幹部の定年を勝手に延長するなど、現行法制下ですらマトモに運用・運営できない悪辣政権に「緊急事態条項」を認めたら、ますます国家主義的な強権政治で圧政に向かうだろう。国民不安に便乗した改憲なんて絶対許してはダメだ。
政権の暴走に歯止めをかける役割のメディアも、総じて中国国内の混乱を伝えるばかり。テレビのワイドショー番組の中には「中国政府の対応が悪い」とバッシングする内容もある。おそらく、中国にマスクを送ろうとか、医療支援を、などと報じれば、たちまち袋叩きになるのだろうが、その風潮自体が異常なのだ。
3日付の産経新聞で櫻井よしこ氏は<習近平体制の限界か。中国全土と世界20カ国以上に拡散した新型コロナウイルスは、中国共産党一党支配は本質的に人間を幸せにしない(略)と世界の人々の心の奥深くに改めて刻み込んだのではないか(略)国民の命を守るために緊急事態条項を設けるべく、憲法改正を急がなければならない>と書いたが、世界経済に大きな影響力を持つ中国が弱れば困るのは日本だ。政権のお先棒を担いで中国叩きするのは無意味だろう。
<危機感こそ封じこめるべき>と題した3日付の日経ビジネスのコラムで小田嶋隆氏は<新型ウイルスによる肺炎がもたらす最初の症状は、発熱や咳ではない。なにより物騒なのは、伝染病への嫌悪が、百年前からこの国に根付いている古い差別意識を暴走させることだ。差別は、危機意識にかこつけて顕在化する。ぜひ、予防につとめたい>と書いていた。改めて小田嶋氏が言う。
「ここ20年ぐらいの間で、社会は個人の自由よりも公の秩序やルールを重視する傾向が強くなってきました。災害やウイルスというのは国民不安が大きくなるため、今の政権はその不安や危機意識につけ込み、巧みに利用しようとしている。これは卑怯なやり方です」
危機感や不安をあおり、異論を唱える者は排除する。まさに独裁国家の一歩手前だ。
便乗改憲論や差別助長 新型肺炎で見えた政治家の卑しさ https://t.co/VCsLWS6JRt #日刊ゲンダイDIGITAL
— wellfed-wellbred (@WellbredWellfed) February 4, 2020
【新型肺炎 浮き彫りになる政治家の卑しさ】中国敵視とドサクサと 政府・与党の間では「これで桜が吹っ飛んだ」とほくそ笑む向きもあるらしい 中国を蔑視し、差別し、習近平訪日で揺さぶりをかけ、あろうことか、改憲への足掛かりにしようとする動きもある(日刊ゲンダイ) pic.twitter.com/vjuODB0wRE
— KK (@Trapelus) February 4, 2020
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