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ハプログループ N (Y染色体)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8F%E3%83%97%E3%83%AD%E3%82%B0%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%97N_(Y%E6%9F%93%E8%89%B2%E4%BD%93)
ハプログループ N (Y染色体)
推定発生時期
41,900年(95% CI 40,175年〜43,591年)前[1]
44,700年あるいは38,300年前[2]
36,800年 (95% CI 34,300年〜39,300年)前[3]
推定発生地 東アジア
現存下位系統の分岐開始年代
20,000年前〜25,000年前[4]
21,900年(95% CI 19,700年〜24,200年)前[3]
親系統 NO
定義づけられる変異 M231
高頻度民族・地域
北アジア、ヨーロッパ北東部。ウラル系民族、ユカギール人、ヤクート人に高頻度。
ハプログループN (Y染色体)(Haplogroup N (Y-DNA))とは分子人類学において人類の父系を示すY染色体ハプログループ(型集団)の分類で、「M231」以下の系統に位置すると定義されるものである。
起源・分布
Y染色体のハプログループNは、現存のY染色体ハプログループの中で最も近縁のハプログループであるハプログループ Oとは
Karmin et al. (2015)によれば41,900年(95% CI 40,175年〜43,591年)前[1]、
Poznik et al. (2016)によれば44,700年あるいは38,300年前[2]、
YFull (2017)によれば36,800年 (95% CI 34,300年〜39,300年)前[3]
に分岐をしたと推定されている。
ハプログループNに属す現存のY染色体は20,000年前〜25,000年前に東アジアにおいて分岐をし始めたと推定されており、ユーラシア北部、さらにはシベリアを横断して北欧まで分布を広げた。
観察頻度は
ネネツ人に97%、 ガナサン人に92%、ヤクート人に88%、 フィン人に63%、チュクチ人に58% サーミ人に47%、エストニア人に41%、ユカギール人に31%、ロシア人に20%
などである。ウラル語族との関連が想定される。
フィン・ウゴル系にN1a1、サモエード系にN1a2が多い。
遼河文明の遺跡人骨からもN1が60%以上の高頻度で見つかっており、かつては東アジア北部においても支配的であったと想定されるが、現在においては概ね10%程度の低頻度となっている。
日本と遼河文明
ハプログループNは日本人全体では平均して2%ほどと低頻度であるが、青森県ではN1(xN-M128,N-P43,N-M46/N-Tat)が7.7%(26人中2人)観察された例がある。
遼河文明の遺跡人骨からもN1(N1(xN-M128,N-M46/N-Tat)を高頻度に含む)が60%以上の高頻度で見つかっており、かつ三内丸山遺跡と遼河文明の関連性が指摘されていることから、遼河人の一部は日本列島にまで進出していた可能性も考えられる。
しかし、日本におけるハプログループN-M231の分布がかなり薄い上に、日本で確認されているハプログループNのY染色体は少なくとも三つの異なる下位系統に属しているため、一度のまとまった民族移動によって日本にもたらされたのではなく、複数の渡来人の末裔である可能性が高い。
日本には古代中国の周王朝と同系である可能性があるN-F710に属す者、中国(東北部のオロチェン族、ダウール族、黒竜江省から河北省、安徽省、湖南省、西南部のシガツェのチベット族まで広く分布)や韓国に見られるN-Y125664と近縁のN-Y23749に属す者、中国の山東省や河北省にも見られるN-Y24191に属す者などがいる。
下位系統
主にISOGG tree Y-DNA Haplogroup N and its Subclades - 2017による 太字は想定される関連諸語
N M231/Page91, M232/M2188
N1-Z4762/CTS11499/L735/M2291
N1a-L729
N1a1-M46/Page70/Tat
N1a1a-M178
N1a1a1-F1419
N1a1a1a-L708/Z1951
N1a1a1a1-P298
N1a1a1a1b-M2118 - (どの下位系統に属すかは不明)ヤクート、エヴェンキ、エヴェン、ドルガン、ユグラ、シベリアタタール、ショル人、トゥバ人、モンゴル人、ノガイ人、カラカルパク人、カザフ人、ウズベク人、ウクライナ、ブータン
N1a1a1a1b-M2118* - エストニア
N1a1a1a1b1-M1982 - ヤクート、エヴェン
N1a1a1a1b2-A9408 - 中国、クロアチア、ハンガリー、トルコ、レバノン
N1a1a1a1a-L392
N1a1a1a1a1-CTS10760
N1a1a1a1a1c-B479 - ナナイ族
N1a1a1a1a1b-PH1266/Y28526/F4134 - ロシア (コミ共和国等)
N1a1a1a1a1a-CTS2929/VL29
N1a1a1a1a1a1-Z4908
N1a1a1a1a1a1a-L550/S431 - フィンランド、エストニア、スウェーデン、ノルウェー、スコットランド、イングランド、(恐らく北欧経由で)ロシア(ザバイカリエ地方やエヴェン含む)
N1a1a1a1a1a1a1-B215/L1025 - フィンランド、スウェーデン、エストニア、ラトビア、リトアニア、ベラルーシ、ウクライナ、ロシア(クルスク州、ヴォロネジ州、ブリャンスク州、モスクワ等)、カザフスタン、ポーランド、スロヴァキア、チェコ、ドイツ、オランダ、アメリカ
N1a1a1a1a1a2-CTS9976 - フィンランド、エストニア、スウェーデン、ノルウェー、サーミ人、ロシア(カレリア共和国、リペツク州等)、イギリス、アメリカ
N1a1a1a1a2-Z1936,CTS10082
N1a1a1a1a2a-Z1928/CTS2733
N-YP6092 - ロシア(ヴォログダ州)
N-B195 - ロシア(ヴェプス人、アルハンゲリスク州)
N1a1a1a1a2a-Z1925 - フィンランド、エストニア、カレリア、ラップランド、スカンジナビア、ヴォルガ・ウラル地域、アルタイ地域 バルト・フィン諸語
N-Z1925* - フィンランド(オウル州)
N-Y29767 - スウェーデン(ノールボッテン県)
N1a1a1a1a2a2a1a1-Z1926 フィンランド周辺
N1a1a1a1a2a1c-PH3340/Y13850
N1a1a1a1a2a1c1-L1034 - マンシ人、カザフスタン、バシコルトスタン、タタールスタン、ハンガリー、ギリシャ ウゴル諸語
N-Y28538 - ハンティ・マンシ自治管区・ユグラ、東カザフスタン州
N-L1442 - バシコルトスタン共和国、タタールスタン共和国
N1a1a1a1a2a1c2-Y24361 - タタールスタン、チェチェン共和国、ハンガリー
N1a1a1a1a3-B197/Y16323
N1a1a1a1a3a-F4205 モンゴル、ブリヤート共和国、カザフスタン、トルコ、ポーランド(恐らくウズベキスタンやアフガニスタンにも分布)
N1a1a1a1a3b-B202 コリヤーク、シベリアエスキモー、チュクチ人(、おそらくユカギール人も) ユカギール諸語
N1a1a1a2-B211 - ヴォルガ・ウラル地域(マリ人、ウドムルト人、バシコルトスタン共和国、コミ共和国、モルドヴィア共和国、ペンザ州)
N1a1a1a2a-BY10355
N1a1a1a2a1-B180
N1a1a1a2a2-BY10361/Y23469
N1a1a1a2b-B181
N1a1a1a2b1-CTS4556
N1a1a1a2b2-B229
N1a1a1a2b2a-B230
N1a1a1a2b2b-B231
N1a1a2-Y24317
N-Y24317*(xB187) - インド (アーンドラ・プラデーシュ州)
N1a1a2-B187 - 南シベリア(ハカス人、トゥバ人、アルタイ人、ショル人)、タタール人(ロシア)、モンゴル
N1a1a3-F4063/P83, F4065, Y23747 日本(佐渡島など)、オロチョン族、ダウール族、河北省、チベット(シガツェ)
N1a1a3*-F4063/P83(xY9641.2/Z8835.2) 満洲(オロチョン族)、河北省
N1a1a3a-Y9641.2/Z8835.2 日本
N1a2-F1008/L666
N1a2a-M128 エヴェンキ、満州族、シボ族、漢民族、回族、チベット人、プイ族、ベトナム、朝鮮、日本[28]、カザフ、ウズベク、ハカス、コミ人など
N1a2a1-F710 日本(福井県)
N1a2a2-CTS1350 日本(広島県)
N1a2b-B523(P43)
N1a2b1-P63, B478 ネネツ、ガナサン人、セリクプ人、ドルガン人、ハカス、トゥバ人、アルタイ人、ヤクート、エヴェンキ、エヴェン人、ブリヤート、モンゴル、ハンティ・マンシ自治管区・ユグラ(ハンティ人等)、トムスク州、チュヴァシ人
N1a2b1a-B168 エヴェン人
N1a2b1b-B169
N1a2b1b1-B170 ネネツ人
N1a2b1b2-B175 トゥバ人、モンゴル人、ヤクート人、エヴェンキ人
N1a2b2-FGC10872/Y3195, Y3196
N1a2b2a-FGC10847/Y3185 ロシア人(ペルミ地方等北部の者)、コミ人、ヴェプス人、フィンランド人、ハンティ人、マリ人、チュヴァシ人、ヴォルガ・タタール、シベリア・タタール、ブリヤート人、カレリア人、バシキール人、ベラルーシ人、ガナサン人
N1a2b2a1-VL97/Z35068
N1a2b2b-Y23786
N1a2b2b1-B528/Y24384 ウドムルト人、コミ人、ハンティ人、カリノ・タタール(キーロフ州)、ヴォルガ・タタール、シベリア・タタール、メードヌイ島プレオブラジェンスコエ、シベリア・ユピク
N1a2b3-B525 モンゴル人、シベリア・タタール、ヴォルガ・タタール、バシキール、ロシア人(中部及び南部の者)、ベラルーシ人、トルコ人、アラブ人、アフガニスタン、スロバキア
N1b-F2930/M1881/V3743, F2905 - 主に中国に分布。ポーランド、日本、テルグ系イギリス人、ベトナムでも稀に観察されている。
N1b*-F2905 - 中国に住む漢族、回族、チベット族(西寧市)、ロバ族(チベット南東部)から検出されている。
N1b1-CTS582 - 主に中国人(漢族、回族、チベット族、チャン族)に見られるが、一派は東欧(ポーランド、ベラルーシ等)に及ぶ。
N1b1a-Y6374/Z8029
N1b1a1-CTS7324
N1b1a1a-CTS142
N1b1a1b-CTS39
N1b1a2-L272
N1b1a2a-CTS304
N1b1a2b-F4208
N1b1a2b1-Y15972
N1b1a2b1a-L732 - ポーランド、韓国
N1b1b-CTS962
N1b1b1-CTS1016
N1b2-M1819 - 主に中国人に見られるが、周辺諸国(日本、ベトナム、カンボジア、ブータン、インド等)にまで拡散した様である。
N2-Y6503 - ヨーロッパ(イングランド・デヴォン、ルーマニア・スチャヴァ、スロバキア、クロアチア、ボスニアヘルツェゴビナ、セルビア等)、アルタイ
各民族における頻度
ガナサン人 92%,
ヤクート 75-84% (Xu 2015),
ネネツ人 75%,
フィン人 51-61% (Purps 2014),
トゥバ人 27.2-54.5% (Kharkov 2013),
エストニア人 40% (Purps 2014),
サーミ人 40%,
ブリヤート人 34.5% (20.2%,[33] 25.0%,[34] 30.9%,[35] 48.0%[36]),
ラトビア人 30% (Purps 2014),
リトアニア人 25% (Purps 2014),
ナナイ族 17.8% (Xue 2006),
スウェーデン人 9-22% (Purps 2014),
シベ人 17.1%[16]-18.0%[37],
モンゴル人 11%,[38][35][16][34][39][40]
カルムイク人 10.4%,[41][40]
満州人 10% (5.8%,[35] 9.1%,[37] 11.6%,[37] 12.5%,[37] 14.3%[16]),
漢民族 6.77% (0% to 21.4%)[37],
ウルチ族 5.8%,[42]
チベット民族 5.65%,[43]
カザフ人 5.33%[44] ,
ウイグル人 4.89% (2.8%,[45] 4.8%,[37] 4.99%,[46] 6.0%,[35] 8.6%[16]),
朝鮮民族 4% (1.8% Seoul-Gyeonggi,[34] 3.0% Daejeon,[47] 4.0% Seoul,[47] 4.2% Chungcheong,[34] 4.4% Jeolla,[34] 4.8% Gyeongsang,[34] 6.3% Gangwon,[34] 6.9% Jeju[34]),
日本人 1.9% (0%,[2] 0.8%,[48] 0.9%,[49] 1.7%,[50] 2.5%,[34] 4.3%,[51] 4.8%,[35] 6.4%[16])
N1(xN1a,N1c) は遼河文明の遺骨からも高頻度で発見されている。
Niuheliang (紅山文化, 6500–5000 BP) 66.7%(=4/6)
Halahaigou (Xiaoheyan Culture, 5000–4200 BP) 100.0%(=12/12)
Dadianzi (夏家店下層文化, 4200–3600 BP) 60.0%(=3/5)
また、遼河文明の南隣のXueshan文化の約5000年前の遺骨からも100%(17/17)、仰韶文化北東部の6000-5000年前の遺骨からも100%(3/3)確認されている。
言語との関連
ハプログループNの系統樹とウラル語族の系統樹が一致しないことは、ウラル語族の櫛状分岐モデルを支持するものである。遺伝子系統からはユカギール語はサモエード語よりもフィン・ウゴル語に近い可能性が示唆される。
ヤクートはもともとウラル系であったが、テュルク系に言語交替を起こしたようである。
崎谷満は、裏日本の言語(いわゆるズーズー弁)はハプログループN集団が担った基層言語の特徴の可能性がある、としている。
土器との関連
ハプログループN1*は円筒土器の担い手であり、N1*が観察される遼河地域や沿海州、日本の東北地方北部、北海道南部から円筒土器が発見されている。
また、下位系統のN1a1は櫛目文土器の担い手であり、朝鮮半島から遼河地域、モンゴル、シベリア、バルト海沿岸、北欧などにみられ、N1a1に属すウラル系民族(フィン・ウゴル系民族)の拡散と対応している。
関連
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