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これが古き良きアメリカの家庭
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投稿者 中川隆 日時 2021 年 12 月 18 日 13:50:05: 3bF/xW6Ehzs4I koaQ7Jey
 

(回答先: アメリカ合衆国の歴史と現代史 投稿者 中川隆 日時 2021 年 1 月 10 日 12:56:40)

これが古き良きアメリカの家庭


多産を肯定するキヴァフル運動の勃興

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  現代の日本人は委員会を創って役人の提案を実行するだけで、「本質的な問題は何処にあるのか?」「その政策は有効性があるのか?」とは考えない。人の魂を欠いた解決策は信仰心の無い宗教と同じである。だいたい、普通の日本人は役所から補助金を貰ったら、夜の営みに励んで子供を作るのか? 日本のマスコミは全く報道しないが、アメリカだと子沢山の家庭を目指す「キヴァフル(Quiverfull)運動」に賛同する人々がいる。これは"専業主婦憎し"のフェミニズムに反撥する思想で、主に福音派のキリスト教徒に共鳴者が多い。彼らは旧約聖書の「詩編」からインスピレーションを得ており、子供を増やすことは天主(God)の意思に適う行為、と考えている。ちなみに、「キヴァフル」の「キヴァ(Quiver)」とは「矢筒」のことで、子供というのは敵を倒すための矢、つまり「勇敢な戦士」を意味するから、それを増やすことは戦力の増強になるという理屈だ。

  ということで、キフヴァフル運動の根拠となった「詩編」の部分引用を紹介する。

  見よ、子らは主からいただく嗣業(しぎょう)。
  胎の実りは報い。
  若くて生んだ子らは、勇士の手の中の矢。
  いかに幸いなことか。
  矢筒をこの矢で満たす人は。
  町の門で敵と論争するときも、恥をこうむることはない。
  (旧約聖書「詩編」第127章第3〜5節)

quiver 4quiver 001(左写真 / 矢筒)
  大家族を好む保守派女性にとって、経歴(業績)アップを優先し、そのための堕胎を肯定する女性は、女性本来の務めを否定する人間で、神様の意思に背く不届き者である。細胞の一つ一つが女性なのに、それを無視して男性化、ないし中性化を推奨するなんて馬鹿げているとしか言い様がない。日本では赤ん坊を「子宝」と呼ぶが、西歐キリスト教徒にとったら「神様からの贈り物」である。それゆえ、受胎を防止する避妊薬は背徳行為で、胎児を殺す妊娠中絶は罪である。モーセの十誡には「汝、殺すなかれ」という禁止事項があるので、中絶は殺人行為に等しい。

  フェミニストや左翼学者は、こうした抹殺を「選択(choice)」の問題に貶め、「赤ん坊殺しの容認」を「プロ・チョイス(pro-choice)」と言い換えている。普通の日本人女性は、お腹の中にいる赤ん坊を殺す時、それを単なる「選択肢」とは思わない。フェミニストは胎児をまだ人間でない「モノ」扱いにするが、良識的な日本人夫婦は胎児を「人間」と考えている。奇妙なことに、左翼人権派は移民や難民の排除になると、矢鱈と「人権問題だ!」「弱者イジメは赦せない!」「子供の権利を守れ!」といきり立つが、胎児が殺される時は涼しい顔で知らんぷり。

  新左翼が隆盛を極めていた1972年、避妊薬ピルの解禁を求める女性解放運動連合、「中ピ連」が世間を賑わせていたが、代表の榎美沙子(えのき・みさこ)に共鳴するのは常識外れの左翼ばかりだった。ウーマン・リブを掲げる田中美津(たなか・みつ)なんかは、「女性を性処理に都合のいい対象にするな !」と言い放ち、「便所からの解放」を訴えていた。令和の女性ならドン引きの言い草だが、左巻きになった連中には、女性の体が色々な精子を受け容れる肉便器に見えてしまったのだ。

  話を戻す。BBCはキヴァフル運動を取材する中、ヴィキーとフィルという夫婦に出逢ったらしい。取材がなされた2013年、彼らには六番目の子供が生まれたばかりであった。子沢山に驚く世間に対し、妻のヴィキーはこう語る。「これは正常なことで、神様が創ってくれたことよ。元々、神様が望んでいたことなんだから。むしろ、今の社会がちょっと歪んでいるというか、荒(すさ)んでいる(little skew-whiff)んだわ」と。('The Quiverfull : The evangelical Christians opposed to contraception', BBC News, 17 May 2013.)

Nancy Campbell 0001(左 / ナンシー・キャンベル)
  ヴィキーとフィルはナンシー・キャンベル(Nancy Campbell)という女性活動家の教えに感動し、子沢山の大家族がいい、と望んだそうである。ナンシーは米国のテネシー州でキヴァフル活動を伝導し、『アバヴ・ルビーズ(Above Rubies)』という季刊誌を出していた。キャンベルの同調者によれば、母親になることは最も崇高な召命(calling / 天職)であるという。デヴォンシャーに住む34歳のサラ・ダウズは六人の子供を持つ母親で、『アバヴ・ルビーズ』の読者である。サラは言う。「子供達を見れば、たとえ毎日が大変でも沢山の愛で満たされる。それよりも素晴らしいことは無いくらい。こうした感情は外の仕事では得られないわ」と。

  確かに、昔の日本でも子沢山の夫婦は珍しくなく、息子や娘が4、5人いても不思議じゃなかった。「子供が多いせいで私の人生が台無しになった」と思う人は例外で、むしろ、子供達を全員ちゃんと育て上げた実績を誇る母親の方が多数派であった。だいたい、子供を六人ないし十人も生んだから不幸になった、と嘆く母親は居たのか? 昭和までの日本人女性は「三人くらい殺すか、里子に出せば良かった」とは思わず、「どんなに大変でも、全員私が育てる!」と意気込む人の方が多かった。

  しかし、マルキストやフェミニストが公教育や大学を占拠すると、「女性の自立」とか「女性の自己実現」を始め、性別に囚われない「男女共同参画の時代」、男女差別を糾弾する「ジャンダー学」、「妊娠を強要しない寛容な社会」などを言い出して共産主義国家の宣伝に努めるようになっていた。1960年から1970年代のアメリカではフェミニズムの嵐が巻き起こり、これまたユダヤ人が強烈な旗振り役になっていた。例えば、日本にもやって来たベティー・フリーダン(Betty Friedan)が代表的で、私生活では夫に暴力をふるう鬼ババアであった。その他にもユダヤ人はフェミニストの供給源で、藝術家のジュディー・シカゴ(Judy Chicago)や極左分子のシュラミス・ファイアーストーン(Shulamith Firestone)、雑誌『Ms.』を創刊したレティ・コッティン・ポグレビン(Letty Cottin Pogrebin)、弁護士のベラ・アブザッグ(Bella Savitzky Abzug)、ジャーナリストのアン・ロイフ(Anne Roiphe)などを排出している。ホント、こんな民族が各方面で跋扈するんだから、「ユダヤ人を叩き出せ !」と怒り狂う白人が現れても不思議じゃない。

Betty Friedman 1Bella Savitsky AbzugJudy Chicago 01Anne Roiphe 1

(左 : ベティー・フリーダン / ベラ・アブザッグ / ジュディー・シカゴ / 右 : アン・ロイフ )

  キヴァフル運動に関しては、政治雑誌『The Public Eye』の編集者で、大学で教鞭も執るジャーナリストのキャサリン・ジョイス(Kathryn Joyce)が詳しく紹介している。3人の子供を育てる31歳のエンジェル・メイズは、自身の体を「天主の家(God's home)」と見なしているし、8人の子を持つジャネット・ウルフソン(Janet Wolfson)や14人の子を抱える39歳のトレイシー・ムーア(TRacie Moore)にとって、子供を産むことは天主の為に軍団を作っているに等しかった。(Kathryn Joyce, 'Arrows for the War', The Nation, November 9, 2006.) 確かに、旧約聖書の「創世記」では、創造主ヤハウエがノアと彼の息子達に向かって「産めよ、増えよ、地に満ちよ」(第9章1節)と述べていたから、敬虔なキリスト教徒であれば子沢山になるのは当然だ。

  産児制限なんて国家と教会を衰退させるばかりで、想像しただけでも恐ろしい。英国の人口統計学者であるアンドリュー・ポラードは避妊行為を「社会的自殺」と呼んでいた。(Kathryn Joyce, Quiverfull : Inside the Christian Patriarchy Movement, Boston : Beacon Prss, 2009, p.141.) 大家族を尊ぶ傾向は昔のヨーロッパにもあって、カトリック教会の影響がが強いアイルランドやイタリアでは、兄弟姉妹が6、7人という家族も珍しくはなかった。世俗化が進んだフランスでもブルターニュとかストラスブールに行けば、子沢山の家族はいたし、イギリス人やドイツ人みたいな白人も多かった。

Joseph Roggendorf 001Joseph Roggendorf family 1


(左 : ヨゼフ・ロゲンドルフ神父 / 右 : ロゲンドルフ神父の兄弟姉妹 )

  そう言えば、上智大学で比較文化を教えていた、ドイツ人のイエズス会士ヨゼフ・ロゲンドルフ神父(Joseph Roggendorf, S.J.)も兄弟が多く(10人家族)、ドイツの敬虔なカトリック信徒の家庭に生まれたという。御尊父は知識人階級のエンジニアで、子供達のためにブロックハウスの大百科事典を購入したというから、少年時代のロゲンドルフ神父は、この百科事典を参考にして歴史や地理、ラテン語などを勉強したそうである。(ヨゼフ・ロゲンドルフ『日本と私』別宮貞徳 訳、南窓社、昭和47年、 p.266.) ロゲンドルフ教授の回想によれば、自身の信仰心は御母堂の影響が強く、家庭における宗教的な雰囲気は母親からのものであるらしい。神父は言う。

  私は、子供の域を脱するとともに信仰からも脱するということがなかった。それはつまり、両親が身をもって教えてくれた信仰が、子供っぽいものではなかったからなのだ。両親にとって、宗教こそ日常生活の規範だった。母は私たちに、口で祈りをとなえるだけでなく、信仰にふさわしい生き方をすることを望んだ。(上掲書 p.137.)

  キヴァフル運動は西歐キリスト教世界の文化や伝統に基づいているので、結婚した女性は良妻賢母を理想としている。亭主が家庭の支柱となり、家父としての権威と義務を持つ。彼女達は夫を「対等なパートナー」と考えず、夫に従う忠実な妻が正しいと思っている。元法政大学教授の田嶋陽子が聞いたらヒステリーを起こして喚き散らすだろうが、歐米社会では家庭という大切な組織を守るのは夫の役目だ。税金や投資、住宅、教育ばかりじゃなく、子供達が引き起こす様々な問題を解決するのは、やはり知能と体力が勝る男の親がいい。家長というのは言ってみれば、1個小隊の指揮官みたいなものだ。

  キヴァフルに共鳴し大家族を持つ夫婦は、アーミッシュ(近代文明を否定した敬虔なキリスト教徒)と同じように注目を集めてしまうので、ジャーナリストの取材を受けることがある。米国のTLCメディアはジョージア州に住むプラス一家(the Plaths)を取材し、『Welcome to Plathville』というドキュメンタリー番組を制作した。バリーとキム・プラスの夫妻(Barry & Kim Plath)は、3人の息子と6人の娘を持つ。ミュージシャンの母親による影響もあって、子供達は楽器に興味を抱き、ヴァイオリンやキーボード、バンジョーなどを弾いて、カントリー・ミュージックのバンドを結成しているので、時にはコンサートも行うらしい。

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(左 : バリーとキム・プラス夫妻 / 右 : カルフォルニアに行きたがっている娘のモライア )

  表面的には片田舎に暮らす普通の家族に思えるが、子供は親の思った通りに育たないので、従順な息子もいれば、反抗的になる娘も出てくる。例えば、息子のミカ(Micah)は田舎の生活を好み、牧場での仕事に励んでいる。しかし、娘のモライア(Moriah)はファッションに目覚め、都会に出て自由な生活を望んでいた。一方、長男のイーサン(Ethan)は頼もしく、恋人のオリヴィアと目出度く結婚となった。まぁ、9人も子供がいれば厄介な問題が起こってもおかしくはない。核家族の日本人だって、子供の教育や進路、および反目や結婚で頭を抱えているんだから。キヴァフル運動に賛同する別の家族、アーカンソー州に住むジム・ボブとミッシェル・デュガー(Jim Bob & Michelle Duggar)夫妻には、何と19人の子供がいるというから、ジムとミッシェルは小学生のクラスを受け持つ担任教師みたいだ。

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(左 : 長男のイーサンと夫人のオリヴィア / 右 : イーサンとオリヴィアが結婚した時、プラス家の全員が集まって撮影した記念写真 )

  とにかく、こうした大家族のアメリカ人を見ていると、保守派のアメリカ白人は「祖父母の時代には普通にあった光景だよなぁ〜」と懐かしむ。元々、アメリカ合衆国はイギリス人を中心とした西歐国家であったが、1924年の移民法で民族割当が崩れ、ジョンソン大統領による1965年の移民法で西歐的アメリカは壊滅的なダメージを受けた。門前払いだった支那人の移住が認められ、アフリカ人や南米人も続々と雪崩れ込む。「憐れ」としか言い様がないけど、イングランドからの入植者が築いた共和国は人種の坩堝(るつぼ)と化す。さらに、ユダヤ人左翼の暗躍により、人種混淆思想が吹き込まれ、アングロ・サクソン人の子孫でもアフリカ人のような顔つきになっている。祖先と違った人種になるんだから悲惨だ。第二次世界大戦前は、多くの西歐系アメリカ人が正常なキリスト教徒だったのに、高学歴の白人ほど非宗教的になってしまい、変形マルクス主義の信奉者になっている。それゆえ、洗脳教育が薄い南部の白人は、失われた祖国を取り戻そうとしているだけなのに、主要マスコミによって恐ろしいKKKの同調者に仕立て上げられている。

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(左 : 母親と一緒に祈りを捧げる娘 / 右 : 母親の妊娠に驚く少女)

  一般の日本人はアメリカ史を勉強しないし、キリスト教についても映画での知識くらいしか持たないから、福音派の生活と聞いてもよく分からない。そもそも、普通の日本人は南部や中西部の保守派家庭を訪問し、敬虔なキリスト教徒の生活を体験することはないから、保守派言論人の言葉を信じて白人至上主義の狂信集団と思ってしまう。でも、実際に彼らの生活に触れると中々いいもので、11月の感謝祭や4月の復活節、12月のクリスマスなどで礼拝や食事を共にすると、「保守派の温かい家庭は結構いいもんだなぁ〜」と判る。

Albert Shanker 1(左 / アルバート・シャンカー )
  建国の父祖であるジョージ・ワシントンやジェイムズ・マディソン、ベンジャミン・フランクリン、ジョン・アダムズ、トマス・ジェファーソンなどは理神論者であったけど、アメリカ共和国の精神的支柱はキリスト教であり、キリスト教の倫理・道徳が無ければ国家は成り立たない、と考えていた。独立戦争中、苦戦を強いられたワシントン将軍が、真剣に祈る姿は多くの人々に深い感銘を与えたし、後世のアメリカ人にも理想的な指導者と思われている。だから、愛国的なアメリカ人は「米国教職員連盟(American Federation of Teachers)」が支配する公立学校に反撥するのだ。(この組合は有名なジョン・デューイによって創設され、1974年になると左翼のアルバート・シャンカーが総裁に就任した。彼は社会主義に傾くユダヤ人であったが、説明すると長くなるので別の機会で紹介したい。) 信仰心の篤いアメリカ人は家族揃っての祈りを欠かさず、子供が生まれると就寝前に主への祈りを唱えたりする。人権思想なんかで育てられた子供は、恥知らずの不良になるか、歪んだ精神を持つ左翼、あるいは偽善的なリベラル派になるくらいで、まともな大人にはならない。

赤ん坊を抱く経験が鍵となる

  もう一つ、キヴァフル運動の人々に特徴的なのは、公立学校を避けて家庭教育(home schooling)を選ぶ親がいることだ。日本だと滅多にないが、公教育の現場が荒れているアメリカでは、「ホーム・スクーリング」で子供を育てようとする一般人がいる。中にはリベラル派の家庭もあるが、やはり保守派の家庭に多い。子供の教育というのは親の義務になるが、如何なる教育を施すかという権利は親にある。アメリカ国民には教育の質や種類を選ぶ自由があるのだ。日本の庶民は近くの学校に通わせ、子供の躾けや知育を丸投げにするが、「選択の自由」を尊ぶアメリカ人は、自身の宗教や価値観に基づいて子育てをしようと試みる。キリスト教徒の親であれば、カトリックやルター派の私立学校を選ぶこともあるし、ユダヤ教徒の親の中には、祖先の伝統を伝えたいからヘブライ語の授業があるユダヤ人学校へと送る人もいる。

  上流階級のアメリカ人は名門の私立学校に我が子を通わせるが、中流階級の庶民は経済的余裕が無いので、家庭教育を選んだりする。とりわけ、都市部に住む保守派の白人にとって、有色人種がウジャウジャいる公立学校は恐怖の館だ。黒人生徒なんてギャングの予備軍だし、ヒスパニックの生徒となれば、不法移民の子弟かも知れないし、英語の発音や文法、作文能力だって怪しい。しかも、こうした異人種はアングロ・アメリカの文化に馴染めないし、家庭の躾も悪いから、自分の息子や娘と一緒のクラスなんて言語道断。絶対に厭だ。最近では白人を糾弾する批判的人種理論やLGBTへの寛容論が巻き起こっているので、こうした赤いカリキュラムを嫌う保守派の白人は、家庭学校で子供達を守ろうと考える。

  だいたい、黒人やヒスパニックが多数を占める学校なんか、露骨に言えば、ちょっと規則が緩い少年刑務所くらいだ。こんな学校では数学や理科に関する知的好奇心などは絶無。校則といったら「ナイフや銃、麻薬を学校に持ち込んではならない」という新モーゼの十誡だ。こんな悪ガキ共には黒い制服じゃなくてオレンジ色の拘束服が似合っている。米国の事情を知らない日本人が聞けば、「えっ、それ何かの刑法?」と尋ねてしまうが、得意科目がヒップ・ポップ音楽とかバスケットボールしかない黒人だらけの学校だと、基本的な倫理・道徳や四則計算から教えなければならない。アリストテレスの哲学や微分・積分の入門書なんかは宇宙人の暗号と同じだ。米国へ派遣された日本人商社マンは、住居の近くで子供を通わせる学校を探したりするが、決して有色人学校に送ることはない。特に、慶應や早稲田、青学、聖心といった名門大学を御卒業された奥様は、白人が大多数の私立学校を選ぶ。まるで極右のレイシストみたいだが、亭主よりも息子を愛する日本人女性は現実的だだ。いざ我が子の教育となれば、KKKも真っ青の人種差別主義者と化す。

  普通の日本人は「ホーム・スクーリング」と聞いたら怪しんでしまうが、意外と勉強熱心な子供に育つケースがあって、公立学校の生徒よりも優秀になる子供がいるくらいだ。実は筆者の友人A氏もホーム・スクーリングで娘達を育てていたから、具体的な現場をよく知っている。A氏は保守派の共和党員で、合衆国陸軍の曹長。妻のVは専業主婦で三人の娘を家で教えていた。ある日、ディナーを御馳走になった後、夫人のVに16歳の長女について尋ねたことがある。筆者が「娘さんの大学はどうするの? 勉強が出来るからアイヴィーリーグにでも入れるつもりなのか?」と質問すると、母親のVは「えっ、冗談じゃないわ。あそこはリベラル過ぎて通わせたくない」との答えだった。


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(上写真 / 自宅で子供に勉強させる親)

  筆者は内心で可笑しくなり、「まぁ、大金を払ってハーヴァード大学に通わせたら、善良な娘でもクルクル・パーの高学歴左翼になっちゃうからなぁ〜」と言いたかったけど、アメリカ人が自慢する大学を馬鹿にしたくなかったので、「そうですかぁ〜」と頷くしかなかった。反米学者にさせるつもりなら別だけど、正常な大人にしたいのであれば、地方の州立大学に通わせた方が、よっぽど健全である。日本人はNYにあるコロンビア大学なんかを「すごい」と思っているが、あそこはフランクフルト学派のハーバート・マルクーゼ(Herbert Marcuse)が盤踞した赤の巣窟である。赤い黒人学生のバラク・オバマもコロンビア大学で過ごし、公民権運動や白人糾弾に熱中したのは偶然ではない。多少なりとも教養と判断力を備えるアメリカ人なら、絶対に子供を通わせたりしないだろう。日本の教師はコロンビアで権勢を誇ったジョン・デューイ(John Dewey)を崇めているが、弟子のシドニー・フック(Sidney Hook)が警告したように、師匠のデューイはマルキストもどきの社会主義者であった。第一、フック自身が保守派に転向した元マルキストのユダヤ人ときているから、共産主義者が放つ臭いには敏感なのだ。

John Dewey 111Herbert Marcuse 111Sidney Hook 2Barack Obama at Columbia


(左 : ジョン・デューイ / ハーバート・マルクーゼ / シドニー・フック / 右 : 若きバラク・オバマ )

  日本の少子化を止める方策は中々見つからないが、アメリカにはヒントになりそうな手掛かりがある。それは地元に根づく福音派の教会だ。日本だと20歳前後の大学生が、普段の生活で赤ん坊に触れる機会は滅多に無いが、アメリカのキリスト教徒だと有る。例えば、日曜日になると大勢の信徒が子供を連れて教会に集まってくるので、託児所みたいな部屋が必要だ。特に、幼い子供を連れてくる夫婦だと一緒に牧師の説教を聞くことは出来ないから、教会の誰かに子守を頼むしかない。もし、牧師の説教中に赤ん坊が泣いたりすれば礼拝の邪魔になる。幼稚園児だと静かにじっと聞くことが出来ないから、母親に「ママ、何時まで続くの? 早く遊ぼうよ !」と言い出す。困った母親は子供を連れて席を外すしかない。

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  それゆえ、教会の一室が「託児所」になっていると便利。ボランティアの信徒、主に高校生とか大学生の男女が、赤ん坊や幼稚園児、低学年の小学生を預かって世話係となる。この制度は家族を持つ悦びを知る上で大変効果的である。まだ結婚を考えた事すら無い16歳や17歳の高校生でも、赤ん坊に直接触れれば幼い生命の尊さを知ることもできるし、18歳や22歳の大学生ともなれば、「結婚して子供が生まれれば、こうした幸せがあるのかぁ〜」と肌で判る。役人主導の「子育て対策」なんかいくら聞いても時間の無駄で、それよりも、実際に赤ん坊を抱いてみた方がいい。もし、日本の女子高生が赤ん坊や幼稚園児を世話すれば、「私も赤ちゃんを産みたいなぁ〜」と思うし、セックスばかりに興味を抱く男子学生だって、「父親になるのも悪くはないかも」と考えるだろう。

  幼い子供を育てるのは本当にしんどいが、意外と愉快な出来事も多く、ちょっとした子供の行動や言葉に笑ってしまうことがある。昔、筆者はアメリカ人男性と結婚した日本人女性と知り合い、4、5歳くらいになる彼女の息子をあやしたことがある。まだ、言葉を覚えたくらいの年頃で、日本語や英語が拙く、何を言っているのか判らない。ある時、この幼児が「ママ、ダコォー」と言うので、筆者は「何で、この子はフランス語のリエゾンを使うんだ?」と怪しんでしまった。ところが、この子は単に「ママ、抱っこして」と言っただけで、フランス語じゃなかった。父親から英語を聞いているせいか、妙に発音が日本語離れしていて、ゲルマン語のアクセントを混ぜるから、普通の日本人だと錯覚してしまうだろう。しかし、これは単に筆者がアホだから起こった勘違いなのかも知れない。

Friedrich Engels 1(左 / フリードリッヒ・エンゲルス )
  具体的な問題を解決するには、現実的に考えた方がいい。日本の大学生だと、教授になったオバはんフェミニストから、「少子高齢化の時代に突入するので、移民を受け容れて労働力不足を補いましょう」とか、「男性社員でも育児休暇を取れるようにすべき」、「子育て支援の予算を増やし、もっと託児所を増やしましょう」といった洗脳を聞くばかり。日本の秀才が模範にする理想国といったら、福祉がてんこ盛りの北歐諸国が定番で、何かと言えば直ぐスウェーデンやアイスランドの事例を出す。託児所を増やしたからといって、若い夫婦が子供をつくるとは限らない。だいたい、母親が職業婦人になって外で働き、他人が保母となって子供を預かるなんて本末転倒だ。こんなのは共産主義者の理想じゃないか。フリードリッヒ・エンゲルス(Friedrich Engels)の言説を思い出せば、厚生官僚やフェミニストの思想的源流が判明する。エンゲルス曰く、

 ・・・近代的家族における夫の妻にたいする支配の独特な性格や、夫婦の真の社会的平等を樹立する必要性ならびに方法も、夫婦が法律上で完全に同権となったときにはじめて、白日のもとに現れるであろう。そのときには、女性の解放は、全女性が公的産業に復帰することを第一の前提条件とし、これはまた、社会の経済的単位として個別家族の属性を除去することを必要とする、ということがわかるだろう。(エンゲルス『家族・私有財産・国家の起源』戸原四郎 訳、岩波文庫、昭和40年、 pp.97-98.)

  要するに、母親も父親と同じく工場労働者になり、二人の子供は共産党が運営する洗脳託児所で管理する、ということだ。安倍晋三総理は、「女性が外で活き活きと働く日本」を称讃したが、そんなのはマルクス色を薄めた朱色のデストピアに過ぎない。本来なら、母親が家で子供を育てる日本、専業主婦が誇りとなるくらいの豊かな日本をつくるべきだろう。消費税をアップして日本人をより一層貧しくし、低所得の若者を増やして結婚の機会を更に少なくするなんて狂気の沙汰である。

  アメリカの保守派で重鎮と評されるパトリック・ブキャナンは、男性と同じように外で働く女性や結婚をしない大卒女性に懸念を抱いた。彼女達は「子供とキャリアも、なんでも手に入る」と豪語する。でも、キャリア・ウーマンが優先するのは会社での仕事や出世競争の方である。確かに、中南米から廉価な労働者が入ってくるので、託児所に子供を任せることができるし、育児休暇だって取れるだろう。しかし、実際のキャリア・ウーマンが手にできないのは、オフィスで熾烈な競争を続ける母親を家で待つ、大勢の子供達だ。(Patrick J. Buchanan, The Death of the West : How Dying Populations and Immigrant Invasions Imperil Our Country and Civilization, New York : Thomas Dunne Books, 2002, p.33.) 現在のアメリカでは教会と子宮で閑古鳥が鳴いている。

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  なるほど、キャリアを優先させれば、高額所得者になって優雅な生活を営めるし、友達に対しても見栄を張ることができる。しかし、晩婚化時代になると、30代後半で初婚となるから、妊娠・出産するのが38歳とか42歳とかになる危険性も生じてくる。無事に出産となっても第二子を望めないから、一人っ子家庭が増え始め、兄弟の居ない核家族が日本社会の主流となってしまう。厚労省の赤い官僚や脳天気な大学教授は、金太郎飴みたいに「日本の人口を維持するためにアジアからの移民を受け容れましょう」と提唱するが、そんなことをしても日系人の子供は増えず、むしろ現象化に拍車が掛かってしまうだろう。だいたい、普通の日本人はどう考えているのか? たとえ日系人の子供が減っても、アジア人と混血児の数が増えれば、日系日本人の親は嬉しいのか?

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( 左 : 黒人学校の授業風景 / 右 : 抗議活動を行う黒人学生 )

http://kurokiyorikage.doorblog.jp/archives/68881400.html  

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