階級社会イギリスは、オーウェルの「1984年」監視社会を実現した、最初の国だった。 監視国家の現実 2020年02月04日 http://tokaiama.blog69.fc2.com/blog-entry-1019.html
私が中学生になるころ、娯楽といえばテレビだったのだが、群を抜いて面白い番組があった。 「プリズナー6」という。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%97%E3%83%AA%E3%82%BA%E3%83%8A%E3%83%BCNo.6
このドラマの面白さは、最後まで主人公を監視し、拘束する組織の正体が分からないことだった。いったい誰が? 何の目的で、一人の諜報員を拘束し、暴力的に監視し続けるのか? ストーリーは、極めて哲学的な示唆に富んだもので視聴者を惹きつけた。 この番組は、イギリスで制作されたものだったが、そのイギリスは、中国共産党の監視社会が成立するまでは、世界一の監視国家だった。 2月2日、ロンドンで仮釈放中の、イスラム国思想の影響を受けたテロ活動家が単独で3名を刺傷し、直後に、監視中だった警官に射殺された。 https://www.bbc.com/japanese/51352236 容疑者は、世界一といわれる密度の監視カメラで追跡され、テロ行動と同時に近くにいた警官が駆けつけて射殺したのだが、その対応の早さに驚かされた。 いつも誰かに見られている、超監視社会ロンドン 人口1人当たりの監視カメラの台数で、ロンドンは世界トップだという https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/18/032300130/ このニュースを見て、プリズナー6を思い出したのは、私一人ではないだろう。 イギリスは、オーウェルの「1984年」監視社会を実現した、最初の国だった。 https://ja.wikipedia.org/wiki/1984%E5%B9%B4_(%E5%B0%8F%E8%AA%AC) なぜ、イギリスが、かほどの監視体制を必要とする国だったのか? それは、歴史的な、もの凄い格差社会であり、社会資本や人的資源の流動性がなく、人々は、支配階級と被支配階級(奴隷階級)に歴史的に固定され、体制に対する憤懣をぶちまける手段が、テロしか残されていなかったからだろう。 それは、最初に民族的対立のなかで起きていた。 アイルランド共和軍 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%82%A4%E3%83%AB%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%89%E5%85%B1%E5%92%8C%E8%BB%8D イギリスは「テロとの百年戦争」の最中にある ロンドンは、ずっと過激派の標的だった https://toyokeizai.net/articles/-/96503 私の世代は、イギリスがIRAによって、激しいテロの標的にされ続け、ちょうど、中東の無差別自爆テロのモデルになっていたような時代が長く続いたことを知っている。 だから、ロンドンでテロが繰り返されても、イギリス国民は、日常的風景として大きな驚きを持たないのである。 イギリスは民主主義国家などと言われるが、実態は、王室と特権階級による独裁社会である。 人々の身分は、生まれた家や土地によって定まり、土地の所有権すら、英王室と地方領主貴族が大半を独占し、ほとんどの英国民が小作人=農奴に貶められている。 http://www2.ashitech.ac.jp/civil/yanase/essay/no07.pdf 生産手段を持たない小作人の家に生まれたなら、社会全体の硬直した価値観によって、底辺の労働者階級としての人生以外の選択肢はない。 これは移民に対しては、より苛酷であり、だから、移民でテロに走る若者が多いのである。 これに対して、支配階級は監視と法的な弾圧で対抗してきた。 イギリスにおける監視社会とは、固定された領主が、自由を求める底辺庶民の怒りを封じ込めるためのシステムであった。 現在、体制の利権を固定し、庶民の怒りを封じ込めるためのシステムを、世界でもっとも必要としているのが、中国共産党社会である。 新型肺炎対策にドローン、中国が誇示する監視国家の姿 ロイター2月3日 https://jp.reuters.com/article/column-apps-idJPKBN1ZY0CI 以下引用 先週のある日、中国・成都市の路上に住民数人が集まって座っていた。小さなドローンが近づいて空中停止すると、話し始めた。 「感染症が広がっているときの屋外麻雀は禁止されています」ドローンから声がする。「見つかっていますよ。麻雀をやめて今すぐそこを離れなさい」、「子どもさん、ドローンを見てはいけません。お父さんに今すぐ離れるように言いなさい」。 新型コロナウイルスの感染拡大抑止に向けたドローンの「創造的な活用法」だと中国共産党系英字紙グローバル・タイムズが報じたこの動画は、海外の多くの人々にとっては未来のディストピア(暗黒世界)の1シーンに映るかもしれない。 しかし中国政府指導部が、これを誇るべきことと考えているのは明らかだ。動画は中国のソーシャルメディアで拡散され、英語メディアで海外にも紹介された。 この一件は、2つの重要なことを示していそうだ。第1に、中国はあらゆる手段を駆使して新型コロナウイルスの感染拡大を食い止めようとしているだけでなく、これを機に世界一高度な監視国家である自らの能力を強化し、誇示する可能性が十分にあるということだ。 第2の点は言うまでもないが、小型で無人の媒体やプラットフォームが、大衆の監視だけでなく、直接的な社会統制の手段としても急速に普及しつつあることが鮮明になった。この傾向は独裁主義的な国々以外にも広がる可能性が高く、民主主義国家はこの点について、これまで努力してきたよりずっと公開かつ参加しやすい議論を積極的に行っていく必要がある。 <法の執行> 法の執行や警備体制が手いっぱいの国々は既に多いため、こうした機器が活用されるのは目に見えている。ロンドンで2日、最近釈放されたばかりのイスラム過激派思想の男に2人が刃物で切りつけられた事件では、危険と見なされる人物を追跡する当局の能力に疑問が投げ掛けられた。顔認識ソフトウエアなどの自動化技術を使えば追跡はもっと容易になるが、多くの人々を不安にさせるのも間違いない。 米国ではカリフォルニア州のオークランドやバークリーなど、いくつかの市や町が法執行機関による顔認識技術の利用を禁じている。他にも管理を強化している州や地域があるが、米国および西側世界の大半の地域では、ほぼ気付かれず、議論もされないままに新たな監視技術が次々と導入されている。 中東地域などでの米軍の活動では、武器を搭載する大型無人ドローンが何年も前から主役を演じている。米国が始めたことに、中国はしばしば追随するため、サウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)など、米国からのドローン輸出が制限され不満を抱く国々にとって、中国は武装ドローンの主な供給源になっている。 米国防高等研究計画局(DARPA)は昨年8月、ジョージア州フォート・ベニングの米軍訓練施設で、ドローンの集団を使って特定の建物内─この場合は市庁舎の想定だった─の特定の対象を見つけ、監視するという最新技術を披露した。250ものドローンがたった1人のオペレーターにコントロールされ、あるいは機体が個々に独立して動作するといったことを可能にするのが狙い。こうした水準の移動式監視は以前なら不可能だった。 <ドローン技術> 中国は数十年前からドローンと監視技術に資源を投入してきた。2018年、香港の英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポストは、見た目や動きを鳩などの鳥に似せた無人ドローンについても、中国が開発中だと報じた。国境地帯や、イスラム教徒への弾圧で知られる新疆ウイグル自治区で既に活用中だという。 同紙によると、このドローンは羊の群れの上を飛ばしても羊たちが飛行物体に騒がないほどの性能が証明されている。羊は通常、飛行機に非常に敏感に反応する。中国政府がこの技術をカメラや顔認識データベースなど、他の監視手段と組み合わせて使おうと考えているのはほぼ間違いない。中国は他に、歩き方の癖で人を認識するシステムなども開発中だと報じられている。 ただ、冒頭のグローバル・タイムズが報じた動画は、明らかに人間がコントロールしており、声は拡声器から流されていた。江蘇省の別の動画では、婦人警察官が横断歩道でドローンを使い、通行人がマスクを着用しているかをチェックしていた。「電話中のハンサムなお兄さん、マスクはどうしましたか。着けて下さいよ」と拡声器から呼びかける。「食べ歩き中のお嬢さんたち、マスクを着けて下さいね。おうちに帰れば食べられますよ」。 こうした光景を見ると、旧東ドイツのような、かつての監視国家のように、中国もまだ人間による人間の監視に頼っているようだ。しかし状況は急速に変わりつつある。人工知能(AI)のアルゴリズムと、過去に蓄積された膨大なデータの組み合わせがターゲティング広告を一変させたのは周知の事実だ。 グローバル・タイムズによると、春節(旧正月)の催しが中止になり、自宅にこもる中国の人々にとって、成都市の動画は格好の娯楽となっている。動画が本物かどうかは別の問題だが、世界中も思ったより早く、同じような課題に直面するかもしれない。 ***************************************************************** 引用以上 こうしたドローン監視社会は、いずれ、日本や欧州にも拡大することは間違いなさそうだ。社会全体に格差と差別の固定した社会では、必ず底辺の人々に矛盾がしわ寄せされ、やり場のない憤懣が貯まってゆく。 あらゆる手段で、こうした不満・憤懣が抑圧されるなら、最期は必ずテロ暴発に向かうのが人間社会の法則である。 固定された特権階級=一級国民は、何が怖いかといえばテロが怖い。直接、個人が狙われるテロリズムでは、特権階級にとって逃げ道がないのだ。 だから、社会の個人的暴発を防ぐための監視と弾圧に、持てる最大の力を注ぐことになる。これは、世界中で同じことなのだ。 ただ、知っておいてもらいたいことは、本当は、「無差別テロ」を戦略として用いる政治思想は存在しない。例えば、中東や欧州で横行している無差別自爆テロは、ほとんどの場合、イスラエル=モサドが背後にいると考えるべきだ。 イスラエルは、旧約聖書創世記に記された「イスラエル人に約束の地を与える」という文言に脅迫されて、ユーフラテスとナイルの間の広大な土地をイスラエルにするシオニズム運動(大イスラエル主義)を行っていて、このため、この地域の人々を自爆テロによって追い出す作戦を実現しているのである。 イスラムの若者が、モサドの陰謀作戦によって洗脳され、自爆テロに利用されているのが真実である。 本当の民族テロに自爆作戦は存在しない。ただIRAのようなテロが存在するだけだ。 しかし、どちらにせよ、特権階級がテロ被害を防止しようとすれば、電子機器による監視を強化し、住民統制支配をAI化する方向に進むのは間違いない。 こうした電子監視が誰に利益をもたらすのかといえば、少なくとも民衆には利益はない。財産と特権を守ろうとする特権階級に大きな利益をもたらすだけなのだ。 しかし、こうした発想には、大きな落とし穴がある。 監視社会を強化すれば、ますます個人の人権はいびつに弾圧され、住民の生活は極端に息苦しくなってゆく。 こんな苦しい社会から、人間を解放しようとする思想が湧き上がってくるのが自然の成り行きである。 だから、中国でも英国でも、監視社会の眼をくぐった裏社会の秩序ができあがってゆくことが避けられない。 かつての中国の主役は、青幇・紅幇に代表される裏社会の秘密結社だった。例えば、戦前は、青幇は国民党軍と重なっていて、蒋介石は、どちらもの頭目だった。 通州事件・南京事件の大虐殺の命令者は蒋介石だった。 監視社会の背後では、再び、青幇=蒋介石のような人物がのし上がってくる必然性があり、中国人は、表の監視社会に従うフリをしながら、実は、裏の秘密結社に帰依するというような人生を送る者が激増することだろう。 それに、米中軍事衝突が起きれば、最初に、両国ともに、必ずEMP核爆弾を上空400Kmで爆発させ、相手の電子機器をすべて破壊するところから戦争が始まるのである。 もちろん、日本上空でもEMPが爆発することだろう。 EMP爆発の瞬間から、コンピュータ機器、AI機器、監視機器は、すべて破壊される。本当に生身の人間による第二次世界大戦以前の戦争に戻ることになる。 このとき、はたして中国共産党は、どの程度の実力を発揮できるのか、極めて面白い見物である。 おそらく、共産党も軍も、利権によって完全に腐敗しきっているので、統制もとれずに大混乱に陥るのではないだろうか? 現在の中国の戦争システムは、一人っ子政策で、屈強の男子がいなくなった社会のなか、ほぼコンピュータに依存しきっていて、コンピュータや監視機器が破壊されたとき、何が起きるのか? 考えてみればいい。 http://tokaiama.blog69.fc2.com/blog-entry-1019.html ▲△▽▼ 2020年02月20日 働かない人の収入が働く人より多い世界 マネー経済が実体経済を圧倒 上位数人が下位半分の資産を所有している 働くより金転がしが儲かるのでこうなる 画像引用:https://fashionmarketingjournal.com/wp/wp-content/uploads/2017/02/thejick01-1.png マネー経済が実体経済を圧倒
1%の超富裕層が富の半分を所有している、というような説明を聞いたことがあると思います。 アメリカでは上位3人(ゲイツ、バフェット、ベゾス)の合計資産約30兆円が下位半分の資産を上回っている。 アメリカ人の5人に1人が資産ゼロで、3割程度が10万円ほどの預金額しか持っていない。 さらに世界の上位62人は世界の個人資産の半分を持っていて、彼らの大半は世襲や相続で資産を引き継いだ。 この状況は19世紀以前に王や皇帝や貴族が支配していた頃と同じで、封建時代より格差が酷いという。 江戸時代の殿様は意外に貧乏で、食事や生活は質素だったので、現在より格差が小さかったかも知れない。 現代の格差拡大はマネー経済の拡大と実体経済の縮小が原因と言われています。
実体経済は生産や移動やサービスなど物理的な行動を伴う経済で、GDPという数字で表されます。 対して「ビットコインが値上がりした」ように物理的な行為が伴わないものを、マネー経済などと呼んでいます。 現金と預金などの通貨流通量は100兆ドルで世界のGDP合計は約80兆ドル(2018年頃)とマネーの方が大きい。
GDPは物理的行為をお金に換算した合計なので、働くよりお金を転がした方が儲かるのを意味している。 例えば苦労して東大に入り一流企業に入り経営者に上り詰めた人より、親から相続したお金を転がして遊んでいるほうが儲かる。 これが格差を拡大していて、まじめに働くより寝ていた方が儲かるから、どんどん差が開いています。
働いたら負けの社会
マネー経済の拡大によって2030年には上位1%の資産家が全世界の富の3分の2を所有する、とオックスフォード大教授などが言っています。 超格差を予言したピケティ教授の『21世紀の資本』がベストセラーになったが、当時は空想と思えたことが現実になっている。 ビケティによると格差が拡大する理由は労働によって得られる賃金より、不労所得である財産の伸び率が高いからです。 その結果が全世界GDP合計80兆ドルに対して通貨流通量は100兆ドルになったので、今後さらに差が開きます。
こうした社会では一生寝ずに働いたとしても、寝転んで資産運用する人よりずっと少ない資産しか作れません。 10年ほど前にネットで「働いたら負け」という言葉が流行したが、今の世界は正に働いたら負けで、働かない人が巨万の富を持っている。 千年以上前から「労働は美徳」としてきた日本人はこういう生き方が苦手であり、労働によって尊敬や称賛を得るのが当然だと考えて来た。
欧米では労働は刑罰であり、偉い人は働かず命令したり遊んだり、非生産的な事ばかりしてきた。 例えば10億円を持っている人が年2%で運用したら2000万円を得られるが、労働で2000万円得られるのは芸能人など限られた職業です。 非正規や派遣労働者の多くは年収200万円程度ですが、これは1億円を2%で運用するのと同じ金額です。
年2%なら投資の才能がゼロでもこつこつ積み立てるだけで良いので、ほぼノーリスクで得られるリターンです。 日本では実質賃金が増えていないが先進国共通の現象で、全世界「働いたら負け」になっています。 こうした世界がいつまで続くかですが、マネー経済は何も生み出していないので、実体経済が作ったものを浪費しているだけです。
実体経済が生み出したお金をマネーゲームの勝者が総取りする不合理な経済が、永遠に続くとは思えない。 王や貴族の支配が終わったように、マネー貴族の世界もいつかは終わるでしょう。 http://www.thutmosev.com/archives/82236298.html ▲△▽▼ イギリスは、社会不安が「巨大暴動」という形で再燃してもおかしくない状況に 2020.02.26 イギリスもまた超格差社会である。『今日のイギリスは、先進国の中で最も不平等な国の1つ』と英社会学部教授は指摘する。
イギリスでは5人に1人が貧困状態で暮らしている。50万人近くがフードバンクを利用している。女性の中には生理用品が買えないという理由で学校を休んでいる女性もいるほどだ。(鈴木傾城) 先進国の中で最も不平等な国の1つ、イギリス
EU(欧州連合)離脱を成し遂げたイギリスのボリス・ジョンソン首相だが、EUを脱退したからと言ってイギリスが急に明るい国になるわけではない。イギリス国内はグローバル化の毒が社会の隅々にまで染み渡っている。 私たちはアメリカが激しい競争社会であり、格差がとめどなく広がっているいびつな社会であることは知っている。しかし、イギリスもそうなっているというのはあまり知らない。 イギリスもまた超格差社会である。『今日のイギリスは、先進国の中で最も不平等な国の1つ』と英社会学部教授は指摘する。 イギリスでは5人に1人が貧困状態で暮らしている。50万人近くがフードバンクを利用している。女性の中には生理用品が買えないという理由で学校を休んでいる女性もいるほどだ。 さらに子供の貧困も凄まじく、100万人の子供が適切な住居で暮らしておらず、空腹のまま学校に行かざるを得ない状況に陥っていると言われている。 ホームレスも増えて、バッキンガム宮殿のまわりにもホームレスだらけと化している。移民もまた昨今の不景気で次々とホームレス化している。 途上国の話ではない。イギリスの話である。 イギリスに来て成功している移民もいるが、逆に苦境に堕ちている移民も多い。低賃金と不安定な雇用でいつまで経っても生活の基盤が安定せず、白人系の低所得層と共に貧困に喘いで対立している。 人種問題・移民問題・差別問題・格差問題・貧困問題
イギリスの最底辺は荒廃している。 イギリスでは2011年7月23日にエイミー・ワインハウスという女性シンガーがドラッグとアルコールの過剰摂取で死んだ。彼女は家の近くの路地でいつもコカインを手に入れていた。 彼女はスラムに住んでいたわけではなく、ちゃんとしたところに住んでいたのだが、それでもドラッグの売人が路上で危険な薬物を売買する環境にあったのだ。 (ブラックアジア:エイミー・ワインハウス。名前にふさわしい死を迎えた歌手) 彼女が絶命した1ヶ月後、イギリスでは大規模な暴動が起きていたのも記憶に新しい。 これはロンドン北部にあるトッテナムで、29歳の黒人の男が警察官に射殺されたことで自然発生的に起きた暴動だった。 この射殺は不当だったとして家族と地元住民が警察署に抗議デモを行ったのだが、それを聞きつけて多くの黒人たちが警察署を取り囲み、日頃の警察官による差別的な言動を激しく抗議する状況になった。 こうしているうちに興奮した抗議デモ参加者の何人かがバスに放火したり、建物を壊し始め、あっと言う間に抗議デモが破壊と略奪を含む暴動と化した。 そこに社会の底辺で仕事もなく鬱屈していた白人の男たちも乗りかかった。そのため、暴動と破壊と放火は急拡大して他都市にも拡散していった。この暴動には人種問題・移民問題・差別問題・格差問題・貧困問題のすべてが爆発したものだった。 イギリスは、2008年のリーマン・ショックで直接的ダメージを受けた国のひとつで、その後も2010年のドバイ・ショックにも巻き込まれ、ギリシャ・ショックにも巻き込まれ、2011年は出口のない不況にもがいていた。 多くの若者が失業し、暴動が起きたトッテナム地区に限って言えば、失業率は20%近くもあった。 この20%が爆発したのが2011年8月のイギリス暴動だった。 EUを脱退してもグローバル経済から脱退できない
しかしながら、底辺の国民がいくらイギリス政府に不満をぶつけたところで事態は改善される見込みはなかった。経済的苦境はイギリス政府だけが問題なのではなく、先進国すべての問題になっていたからだ。 言うならば、グローバル経済という一国ではどうにもならない弱肉強食の資本主義システムでは、「労働者」はもはや単なるコストであり、使い捨ての対象なのである。 イギリスでもこうした状況が放置され続け、大量の移民が入り込んでますます労働環境が悪化していき、ついに移民反対派が反旗を翻してEU脱退を迎えることになった。 しかし、イギリスがEUを脱退したからと言って、すぐに格差問題や貧困問題が解決されるわけでもないし、「人種問題・移民問題・差別問題・格差問題・貧困問題」が解決されるわけでもない。 イギリスはEUを脱退しても、「グローバル経済」から脱退できない。今後も多国籍企業が下層の労働者を使い捨てにしながら肥え太っていくシステムは変わらない。 多国籍企業は、常に安い労働力を探して、労働力を安価で使うだけ使って、用済みになったら労働者を捨てるか、工場ごと捨てて去っていく。 労働者は使い捨てなので、労働環境を整えるとか終身雇用で面倒を見るような「コストのかかること」は絶対にしない。そうやって多国籍企業は世界の労働市場を荒らし回って莫大な利益を貯め込み、税金も回避して世界中を逃げ回る。 アップルも、グーグルも、アマゾンも、マクドナルドも、スターバックスも、世界各国で莫大な利益を計上しながら税金をうまくすり抜けているのを咎められて、あちこちの国で追徴課税命令を受けている。 しかし、これらは氷山の一角でしかない。 莫大な利益は巧みに隠され、株主と経営者と言ったステークスホルダーがその利益にありつき、労働者は賃金を抑えられた上に酷税が敷かれてどんどん貧しくなっていく。 人間の歴史の中で変わらない普遍的な方式とは?
かくしてイギリスの底辺では貧困が定着したまま放置され、怒りが充満したまま現在に至っている。このままではイギリスは再び巨大な暴動が起きるのではないかと噂する人もいる。 「貧困の増大と社会システムの行き詰まりは暴力を産み出す」という社会現象は、人間の歴史の中で変わらない普遍的な方式でもある。これらの根っこにあるのは、まさに貧困の増大と社会システムの行き詰まりだ。 イギリスにはそれが顕著になっている。だから、私自身もイギリスではEU脱退による後遺症が広がると、再度、大きな社会不安が巨大暴動という形で再燃してもおかしくないと考えている。 果たしてボリス・ジョンソン首相は、うまく舵取りができるのだろうか。 まずいことに、今後のイギリスはEUと切り離された形で生きていかなければならないのだが、そこに中国発の新型コロナウイルス問題が湧き上がっている。世界経済は暗転する。そのダメージをイギリスはまともに食らうことになる。 つまり、イギリスが経済的苦境に堕ちるのは確実な情勢となっている。 そうであれば最も大きな影響を受けるのがアンダークラス(貧困層)である。イギリスで2011年の大規模暴動が再現するような事態になっても不思議ではない。 今でもイギリスの底辺では経済環境の悪化に追い詰められる人たちが増えており、ますます不満と怒りをマグマのように溜めているのである。まさに「貧困の増大と社会システムの行き詰まり」の真っ只中だ。 イギリス社会がこの問題をどうやって解決できるのか誰も分からない。 『分解するイギリス: 民主主義モデルの漂流(近藤 康史 )』 https://www.amazon.co.jp/gp/product/4480069704/ref=as_li_qf_asin_il_tl?ie=UTF8&tag=asyuracom-22&creative=1211&linkCode=as2&creativeASIN=4480069704&linkId=0285d334d40558ea6b00a9c46899fad9
https://blackasia.net/?p=17284 ▲△▽▼ 2012年にロンドンで開催されたオリンピックでは治安システムの強化に利用されている。元々イギリスは監視システムの強化に熱心な国だが、オリンピックを利用してさらにシステムを強化した。 例えば顔が識別でき、街頭での話を盗み聞きできる監視カメラを張り巡らせ、ドローン(無人機)による監視も導入、通信内容の盗聴、携帯電話やオイスター・カード(イギリスの交通機関を利用できるICカード)を利用した個人の追跡も実用化させたと言われている。海兵隊や警察の大規模な「警備訓練」も実施され、本番では警備のために軍から1万3500名が投入されたという。 https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202005010000/
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