★阿修羅♪ > 近代史4 > 1034.html
▲コメTop ▼コメBtm 次へ 前へ ★阿修羅♪
黒沢清 LOFT ロフト (日活 2005年)
http://www.asyura2.com/20/reki4/msg/1034.html
投稿者 中川隆 日時 2020 年 9 月 19 日 15:00:03: 3bF/xW6Ehzs4I koaQ7Jey
 

(回答先: 黒沢清 CURE キュア(大映 1997年) 投稿者 中川隆 日時 2020 年 9 月 18 日 20:46:10)

黒沢清 LOFT ロフト (日活 2005年)


監督・脚本:黒沢清
撮影:芦澤明子
美術:松本知恵
音楽:ゲイリー芦屋



『LOFT ロフト』(ロフト)は、2005年の日本・韓国合作のホラー映画。


ストーリー


小説家の春名礼子(中谷美紀)は、スランプに陥っており、新作を書けずにいる。最近は体調が優れず、吐き気に襲われることがある。担当編集者の木島(西島秀俊)の厚意で、東京郊外にある木造二階建ての洋館に引っ越してきた彼女は、向かいに建つ相模大学の研修所に何かを運び入れている考古学者の吉岡誠(豊川悦司)を目撃する。気になって調べていくうちに、吉岡たちが1000年前のミイラを沼から引き上げたらしいということを彼女は突き止める。


教育映画社の村上(加藤晴彦)の協力を得て、友人の野々村(鈴木砂羽)と共に『ミドリ沼のミイラ』と題された戦前の記録映画を見ると、そのフィルムにはミイラのような存在が映っていた。郊外に戻ってきた礼子は、研修所に忍びこみ、吉岡が運び入れたものの正体を知る。それは長い髪のミイラであった。吉岡は同僚の日野(大杉漣)にミイラの展示を勧められていたが、そのことに違和感を感じたため、無断でミイラを研修所に運び入れたのである。吉岡は礼子に、大学生たちが研修所にやって来るので、今後数日間だけ、ミイラを預かっていてほしい、と言う。その依頼を礼子は快く引き受けたものの、小説の執筆を進められずにいた。


そんな折、前の住人が残していった小説の原稿を洋館で発見した礼子は、それを書き写して、ついに新作の出版にこぎつける。洋館を訪れた木島は、前の住人が亜矢(安達祐実)という小説家志望の大学生であったことを礼子に告げる。亜矢は木島に殺されたはずなのだが、亜矢の幽霊が吉岡の目の前に度々現れるので、吉岡は自分が亜矢を殺したのではないかと混乱している。吉岡は、彼の無実を信じる礼子と一緒に、木島が亜矢を埋めたはずの森へ向かう。木島はそこで地面を掘り返す二人に襲いかかるが、警察に逮捕される。


礼子は新作小説の原稿を燃やし、吉岡はミイラを研修所の焼却炉に放り込む。二人は、森を抜けた先にある湖の桟橋へ行き、亜矢の死体が入っているかもしれない棺を引き上げ、その中に何も入っていないことを確かめる。吉岡の無実を確信して安堵した彼らは抱擁し、永遠の愛を誓いあう。しかし、その直後、吉岡は湖に落ち、ミイラ化した亜矢の死体が湖から姿を現す。


キャスト


春名礼子 - 中谷美紀
吉岡誠 - 豊川悦司
木島幸一 - 西島秀俊
亜矢 - 安達祐実
野々村めぐみ - 鈴木砂羽
村上 - 加藤晴彦
日野 - 大杉漣


監督の黒沢清は、テレビのニュース番組で楼蘭の美女を見て本作のストーリーを思いついた、という[2]。
https://ja.wikipedia.org/wiki/LOFT_%E3%83%AD%E3%83%95%E3%83%88
 

  拍手はせず、拍手一覧を見る

コメント
1. 中川隆[-8678] koaQ7Jey 2021年1月02日 23:53:45 : WlRsmkTSXA : dXRtcGJHMUpmMVk=[47] 報告
【第252回】『LOFT ロフト』(黒沢清/2006)
netfilms.jp 2015/10/19

 黒沢は2000年代に入り、『アカルイミライ』と『ドッペルゲンガー』の2本をほぼ同時に撮り終えた後、長編劇映画からおよそ2年半遠ざかる。その間に幾つかの野心溢れる短編とテレビ作品を残す。まずは『タイムスリップ』。翌年の2003年、刑事(デカ)まつりの一編として7分の短編を撮る。そして『アカルイミライ』の115分を新たに92分に編集し直したインターナショナル・ヴァージョンを公開。NHKの朗読紀行 にっぽんの名作の中の1篇『宮沢賢治 風の又三郎』を撮る。この現場では小泉今日子との出会いがあり、作曲家の大友良英とも出会っている。翌2004年、雑誌「Invitation」の確か1周年記念の企画として、浅野忠信主演で23分の短編を発表。当時「Invitation」の付録DVDに収録されていた。宝塚酒造に協賛を仰ぎ、お酒を呑む場面をPRとして入れた実験的な作品である。「Invitation」はその後残念ながら休刊している。

世界3大映画祭に招待され、カンヌでは国際批評家連盟賞を受賞したことのある黒沢も、2000年代に入り急速に変化していく映画業界の流れの中で苦戦していた。映画は果たして娯楽なのか?それとも芸術なのか?この議論は古今東西、あらゆるところで繰りかえされてきた問題だが、我々のように芸術性を尊ぶ連中がいる一方で、大ヒットする作品こそが映画なのだという流れもまた存在するのは紛れもない事実である。多くの投資家が参入し、映画はひょっとすると儲かるかもしれないということで出資者が続々集まってくる。資本主義としてはごく当たり前の流れの前で、なかなか長編劇映画が撮れない日々が続いた。

そんな黒沢に助け舟を出したのが、韓国のミロビジョンという会社だった。韓国映画よりもアート性の強い映画の製作・配給を手掛け、時には映画祭向けの作品を手掛けるこの会社から、ホラー映画としてヒットするものをという無言の圧力を感じつつ製作された。『LOFT』というタイトルは、もともとの脚本が倉庫のような屋根裏部屋のある家に越してきた主人公が、そこで死体を発見する物語から仮で名付けられていたのだが、実際には東京にはそんな場所がなかった。そこで黒沢はスランプの小説家が郊外の自然に囲まれた古い洋館に引っ越し、そこで1000年の眠りから醒めたミイラに遭遇するという物語に設定を大幅に変更する。そうして新しく出来た物語は、まるで『奴らは今夜もやって来た』や『スウィートホーム』の頃に立ち返ったかのような面白さに満ちている。

スランプに陥った芥川賞作家の春名礼子(中谷美紀)は、編集者・木島(西島秀俊)の勧めで、郊外の一軒家に引っ越すことになる。緑に囲まれた静かな環境に身をおいた礼子だったが、ある夜、一人の男がシートに包んだ人間のような物体を、向かいの建物に運び込む様子を目撃する。やがて礼子は、男は吉岡誠(豊川悦司)という大学教授で、1000年前のミイラを沼から引き上げたことを知る。

冒頭の床にもんどり打って倒れ、床を這いずり回る中谷美紀のショットがいつになく怖い。女はスランプというよりも、何か悪いものに取り憑かれているようにしか見えない。外出先でもつわりのような状態になり、その場に突っ伏して咳き込み続ける。彼女はストレスの多い都会での生活を捨て、郊外の森の中に居を求めるのである。そこは緑の森に囲まれた自然豊かな場所で、隣の家には誰も住んでいないらしい。彼女はこの自然の中で一人だけの生活を満喫するかに見えたが、夜、窓から目をやると停車した車の中から、男が人間の死体のようなものを運び出そうとしている。男の表情は見えないが、明らかに大柄で怪しい雰囲気を醸し出している。これは黒沢には珍しく、見ることと見られることの物語である。

その光景を見た瞬間から、主人公はこの男の行動を探り始める。一体何を運び込んだのか?何をするつもりなのか?磨りガラスの向こうに主人公のシルエットが一面に広がり、中から男もゆっくりとその磨りガラスに近づいていく。顔が見たいのに見えない、実体はあるのにその姿をなかなか拝むことが出来ないのは、自作『地獄の警備員』での表現の再来であろう。かつて『スウィートホーム』のエントリに、当初予定していた草稿には、古い洋館で幽霊を見た母親が、恐怖のあまり自殺してしまい、元いた幽霊と母親の幽霊の二者が幽霊として現れると書いた。結局、その草稿は資金が集まらずボツになったが、今作の安達祐実扮する幽霊とミイラの二重構造はまるでその頃の映画の断片を焼き直したようにも思えてくる。今作では『奴らは今夜もやって来た』に始まり、『スウィートホーム』や『地獄の警備員』に漂っていたクラシック・ホラーの佇まいが全開になっている。

やがて『ニンゲン合格』では感情をあまり表に出さない男を、これに続く『蟲たちの家』では妻に激しい束縛をする嫉妬深い夫を演じた西島秀俊の、爽やかな風貌の裏に隠されたとんでもない事実を目撃することになるのだが、それ以上に不可解なのは、いったい安達祐実は何度死に、何度蘇ってくるのかということである。そもそも安達祐実と1000年前のミイラとの接点や因果関係とはいったい何なのか?肝心なところがどうもはっきりとしない。

今作を無理矢理ジャンル映画の型にはめるとすれば、どこに収めるのが適当だろうか?一番多くの票が集まるのはおそらくホラー映画だろうが、途中の西島秀俊の優しい顔の裏に隠されたとんでもない事実を目撃するところは完全に猟奇ミステリーであり、中谷美紀と豊川悦司の見ることと見られることの関係性はラブ・ストーリーの要素さえ孕んでいる。そういう重層的な構造の揺らぎが物語を支えているのである。

思えばこれまでの黒沢映画において、ゆっくりとした動きというのはあまり見られなかった。森の中での彼らの振る舞いは常に全力疾走か、せいぜい早歩きであり、歩くことなどほとんどなかった。だが今作においてはヒロインである中谷美紀のゆっくりとした美しい歩き姿が何度も見える。豊川悦司も階段を駆け上がることなど一度もなく、そのゆっくりとした歩みは鈍重にさえ見える。物語の重層的な構造の中で、登場人物たちのこのゆったりとした動きは決してアクセントにはならず、どちらかと言えば映像に深く溶け込んでいくようにさえ見える。

クライマックス前に、彼らが乗り物に乗らないのも意外に思う。彼らは最初から橋の突端に立ち、まるで神の裁きを受けるような深刻さに包まれている。やがてゆっくりと引き上げられた木箱の中に、男が取り憑かれたイメージはどこにも入っていない。だからこそラスト・シーンの恐ろしい早さには心底肝を冷やした。それと共に、あぁやっぱりホラー映画だったのねという思いが浮かぶのである。

今作は35mmフィルムで撮られているが、原色の美しさの中でも特に青々とした緑の発色が際立っている。黒沢は今作で初めてカメラマンに芦澤明子を起用している。それによりロング・ショットの魅力や長回しの魔力は幾分後退したものの、明らかに色調が90年代の黒沢とはまったく違うベクトルに足を踏み出したように見える。おそらく黒沢は盟友・万田邦敏の『Unloved』の映像を観て、カメラマンを芦澤明子に決めたのだと思うが、これから先、『Seventh Code』や『ビューティフル・ニュー・ベイエリア・プロジェクト』をのぞく全ての作品で芦澤明子とコンビを組むことになる。それは新作『岸辺の旅』でも同様である。

https://note.com/compactdisco/n/n03a8900769e4

▲上へ      ★阿修羅♪ > 近代史4掲示板 次へ  前へ

  拍手はせず、拍手一覧を見る

フォローアップ:


★登録無しでコメント可能。今すぐ反映 通常 |動画・ツイッター等 |htmltag可(熟練者向)
タグCheck |タグに'だけを使っている場合のcheck |checkしない)(各説明

←ペンネーム新規登録ならチェック)
↓ペンネーム(2023/11/26から必須)

↓パスワード(ペンネームに必須)

(ペンネームとパスワードは初回使用で記録、次回以降にチェック。パスワードはメモすべし。)
↓画像認証
( 上画像文字を入力)
ルール確認&失敗対策
画像の URL (任意):
最新投稿・コメント全文リスト  コメント投稿はメルマガで即時配信  スレ建て依頼スレ

▲上へ      ★阿修羅♪ > 近代史4掲示板 次へ  前へ

★阿修羅♪ http://www.asyura2.com/ since 1995
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。
 
▲上へ       
★阿修羅♪  
近代史4掲示板  
次へ