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レバノン特別法廷:ヒズボラやシリアがハリリ暗殺に関与した証拠はない
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202008180000/
2020.08.19 櫻井ジャーナル
レバノンの総理大臣を1992年1月から98年12月まで、また2000年10月から04年10月まで務めたラフィク・ハリリが暗殺されたのは05年2月のことだった。この事件を裁くため、2007年に設立されたSTL(レバノン特別法廷)は今年8月18日、事件にヒズボラやシリアが関与した証拠はないという結論を出した。
STLはSTLは国連の機関ではなく、年間85億円程度だという運営資金はサウジアラビア、アメリカ、フランス、イギリス、レバノンなどが出している。暗殺にヒズボラやシリアが関与した可能性は低いと当初から言われていたのでSTLの結論は当然なのだが、ヒズボラやシリアと対立関係にある勢力をスポンサーにするSTLがそうした結論を表明したことは興味深い。
ハリリは1965年にサウジアラビアへ仕事のために移動、建設業界へ入る。1978年にはサウジアラビアの市民権を獲得した。ビジネスの世界で成功したハリリがレバノンへ戻り、政治の世界へ身を投じたのは1980年代に入ってからだ。
政治家になってからもサウジアラビアとの関係は続き、バンダル・ビン・スルタンの顧問を務めている。バンダルは1983年10月から2005年9月までアメリカ駐在大使を、また12年7月から14年4月まで総合情報庁長官を務めた人物で、ブッシュ家と親密な関係にあることから「バンダル・ブッシュ」とも呼ばれている。
バンダルがアメリカへサウジアラビア大使として渡った1983年当時、アメリカの副大統領はジョージ・H・W・ブッシュ。その父親はウォール街の大物で、巨大資本の弁護士でもあったアレン・ダレスと親しくしていた。ダレスはOSSやCIAの幹部として有名だが、その関係もあってか、ジョージ・H・W・ブッシュはエール大学でCIAにリクルートされたと信じられている。
ジョージ・H・W・ブッシュの息子、ジョージ・W・ブッシュが大統領だった2003年にアメリカ軍はイラクを先制攻撃してサダム・フセイン体制を破壊し、フセインを処刑した。親イスラエル体制を樹立する予定だったようだが、失敗。そこでワッハーブ派やムスリム同胞団を中心とする武装勢力による不正規戦に切り替える。
シーモア・ハーシュが2007年3月5日付けニューヨーカー誌に書いた記事によると、アメリカ、イスラエル、サウジアラビアがシリア、イラン、そしてレバノンのヒズボラに対する秘密工作を開始、その中心には副大統領だったリチャード・チェイニー、国家安全保障問題担当次席補佐官だったエリオット・エイブラムズ、そしてザルメイ・ハリルザドやバンダル・ビン・スルタンがいるとしている。
ところで、ハリリが暗殺された直後、この事件を調査することになったのは国連国際独立委員会のデトレフ・メーリス調査官。2005年10月に彼は「シリアやレバノンの情報機関が殺害計画を知らなかったとは想像できない」と主張し、「シリア犯行説」に基づく報告書を安保理に提出している。イスラエルやアメリカの情報機関が殺害計画を知らなかったとは想像できないと彼は考えなかったようだ。メーリスの調査が杜撰だということも明確になり、彼は2006年1月に辞任している。
彼の重要証人だったフッサム・タヘル・フッサムはシリア関与に関する証言を取り消し、レバノン当局の人間に誘拐されて拷問を受け、そのうえでシリア関与の証言をすれば130万ドルを提供すると持ちかけられたと話している。それ以外にも証言の信頼度が低いことが明らかになり、責任を取らざるをえなくなったのだろう。
本ブログではすでに書いたことだが、ドイツ人のメーリスはアメリカの情報機関との緊密な関係にあり、検察官としてアメリカやイスラエルの関与をもみ消すこともしていたと言われている。2000年代の前半にはWINEP(近東政策ワシントン研究所)の研究員になっているが、この研究所はイスラエルロビーのAIPACと深く関係している。
これもすでに書いたことだが、爆破現場には深いクレーターがあり、メーリスの主張とは違い、自動車による自爆テロでなかったことを示している。ハリリの死体を見ると、金製の腕時計は溶けているのだが、シャツの襟は残っている。体もあまり炭化していない。体がバラバラになっているわけでもない。金の時計を溶かすほど高温になったが、その際に無酸素状態を作り出したと見られている。
また、ハリリが乗っていた装甲車両に同乗、負傷してフランスの軍事病院で治療を受けたバッセル・フレイハンから濃縮ウランが検出されている。本ブログでも何度か書いたが、イスラエルがレバノンへ軍事侵攻した直後、ウルスター大学のクリストファー・バスビー教授はレバノンで濃縮ウランを見つけたという。濃縮ウランを使った何らかの兵器、例えば数十センチ程度の長さのミサイルが暗殺に使われた可能性があると考えられている。
ハリリ暗殺の翌年、2006年7月から9月にかけてイスラエル軍はレバノンに軍事侵攻したが、ヒズボラに敗北してしまう。その際にイスラエルが誇るメルカバ4戦車も破壊された。それ以降、イスラエルはレバノンへ地上軍を侵攻させられなくなる。
その当時、レバノンにおけるアメリカの武装工作を指揮していたのは国務省次官補だったデイビッド・ウェルチ。その背後にはネオコンのエリオット・エイブラムズがいたと言われている。
エイブラムズは1980年代にイラン・コントラ事件に絡んで上院外交委員会で偽証、起訴されたものの、ジョージ・H・W・ブッシュ大統領の恩赦で救済された。
ドナルド・トランプ政権は対イラン戦争を遂行するためにイラン行動グループを2018年8月に編成、その責任者にブライアン・フックを据えたが、そのフックが今年8月6日に辞任を表明、その後任はエイブラムズになると伝えられている。
フックが辞任を表明する直前、8月4日午後6時過ぎ(現地時間)にレバノンの首都ベイルートで大きな爆発があり、数分後にはさらに大きな爆発があった。インターネット上に流れている映像には核爆発を思わせるキノコ雲や衝撃波が映っている。
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