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2021年5月11日 06時00分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/103355
新型コロナウイルス感染の再拡大が止まらず、患者を受け入れる病院や感染者が確認された事業所などの消毒・清掃作業の需要が高まっている。長時間、防護服を着用しての業務は過酷で、人手は不足気味。差別や偏見にも直面するが、作業員たちは「誰かがやらなければ」と日々、作業を続けている。 (太田理英子)
◆13の病室に集中治療室など7時間1人で
重症者を含むコロナ患者が入院する川崎市立多摩病院。4月30日、コロナ関連の消毒や清掃を請け負う会社「ペガサス」(東京都台東区)の女性作業員(21)が防護服姿で、廊下の手すりをゆっくりと除菌シートで拭き上げていた。病室内では、洗面台や個室トイレ、ドアノブ、車いす、床の順で拭いていく。
ペガサスは週6日、同病院の消毒・清掃を請け負っている。派遣される作業員は1日1人だけ。1人で、病室13部屋(計32床)と集中治療室(ICU)2部屋(計2床)、その付近の廊下などを約7時間かけて回る。
感染防止のため、防護服の上にエプロンを重ね、マスクと手袋を二重に装着して作業に臨む。エプロンと外側の手袋は部屋を移るたびに交換しなければならない。女性は「風を通さないので、動き回るだけで暑くて大変」と話す。トイレに行きづらく、おむつを着ける作業員もいる。
女性は以前、主にホテルの清掃を担当していた。感染が拡大し始めた昨年3月から、軽症者が宿泊療養するホテルや感染者が確認された事業所などの消毒・清掃に関わるようになった。
◆苦しむ人を目の前に
「完全防備とはいえ、感染が多い時期で不安だった」というが、作業には徐々に慣れた。それでも、今年1月から担当することになった市立多摩病院での作業は全く異なる経験だった。
中等症以上の患者の病室では消毒や清掃の作業中、患者たちのうめき声がする。「助けてくれ」「死にたい」という訴えが聞こえることも。女性は「どうしたらいいか分からない。苦しそうな人を見ることはつらい」と打ち明けた。
作業のつらさだけでなく、病院で働くようになって友人と距離を感じるようになった。最近、久しぶりに会った友人は、仕事内容に触れると、しばらくして「急用ができた」と帰っていった。後に「今の仕事が終わったらまた会おう。ごめんね」とメールが来たという。「これまでの関係を考えるとすごくショック。それ以来、仕事の話は大きな声で言えなくなった」
◆感謝の声を励みに
それでも、毎回、病院で看護師らが感謝やねぎらいの声を掛けてくれ、「役に立てている」と実感することで作業を続けられている。同居する母親の後押しも大きな励みになっている。
コロナ関係の消毒・清掃作業員は常に人手不足で、女性は感染が深刻な大阪府に出向いて作業したこともある。感染の不安は尽きないが、「やりたがる人がなかなかいないからこそ、やるしかない」と自らを奮い立たせている。
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