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1996年に50万部のベストセラーとなった著書『患者よ、がんと闘うな』(文藝春秋)でがん治療の問題点を真正面から指摘し、「がんは放置せよ」という新たな理論を提唱した近藤誠医師。医学界でたびたび論争を巻き起こしてきた近藤医師がいま、新型コロナワクチンの接種を待つ日本国民に、「コロナと闘うな」と呼びかけている。
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世界中で新型コロナワクチンの接種が開始され、日本でも高齢者向けの接種が始まりました。ワクチンを打つか打たないか、悩んでいる人は多いですが、どちらにせよ新型コロナ対策に過剰に追われる必要はないと思います。
ワクチンは原理上、新型コロナの発症や重症化を防ぐ可能性はあるものの、いま問題になっている変異株についても効果を発揮するという保証はありません。
副反応が疑われる死亡者も世界中で確認されています。このあたりは著書『新型コロナとワクチンのひみつ』(ビジネス社)のなかで解説しましたので、詳しく知りたい方は読んでいただければと思います。
本来、新型コロナの対策は、「死亡者を減らす」という一点に尽きるはずです。現時点で日本は欧米に比べて死亡者が桁違いに少なく、変異株の流行後も感染者の死亡率はさほど上がっていません。日本人は基礎疾患を持つ患者が少ないことが影響しているとみています。
むしろ、いまは過度な自粛生活で神経をすり減らし、「コロナうつ」による自殺者が増加しています。とりわけ高齢者は他者との交流や会話がなくなると認知症が進行することが分かっており、運動不足は体の虚弱化に直結する。
こうなると新型コロナ感染時の重症化リスクも高くなる。本末転倒も甚だしい話です。これはがん治療に過剰な期待や希望をした末に手術や抗がん剤のダメージで逆に死期を早めてしまったがん患者と同じに思えて仕方ないのです。
「一度は罹る」という覚悟
新型コロナは風邪ウイルスに似ており、人間社会から消えてなくなることは、おそらくないでしょう。一度感染した人が変異株に再度感染する可能性は否定できないし、ワクチンも効果は一時的だと思います。私たちはこのウイルスとずっと共存していかなければならないのです。
ただ、それは新型コロナの脅威が半永久的に続くことを意味しません。重症化、死亡する人は、新たな感染症の常として時間の経過とともに減っていくはずです。
いずれウイルスが弱毒化するか人々に免疫がつくかして、「ただの風邪」になるでしょう。2009年に感染が拡大した新型インフルエンザも、いまや「ただの風邪」でしかない。
人間社会で風邪を完全に防ぐことなどできるはずがなく、どんなに対策しても、罹る時は罹る。ウイルスはがんと同じく「闘う」相手ではないのです。医療崩壊という事態は避けねばなりませんが、「一生に一度は誰もが感染する」と考えて新型コロナと向き合うほうが、よほど現実的ではないでしょうか。
ある意味、人の力ではどうしようもできない「自然の理」と捉える姿勢が肝要だと考えます。
※週刊ポスト2021年5月7・14日号
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