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・・・ 新型コロナウイルス 治療薬・ワクチンの開発動向まとめ【COVID-19】(6月26日UPDATE) ・・・
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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬・ワクチンの開発動向をまとめました。
covid−19ウィルス
https://gansokaiketu-jp.com/Gazou/answers10-keisai_2020-7-1_14-47-26_No-00.png
治療薬
開発中のCOVID-19治療薬は、ウイルスの増殖を抑える抗ウイルス薬と、重症化によって生じる「サイトカインストーム」や「急性呼吸窮迫症候群(ARDS)」を改善する薬剤に分けられます。いずれも既存薬を転用するアプローチが先行していますが、COVID-19向けに新たな薬剤を開発する動きもあります。
抗ウイルス薬
現在、COVID-19に対する抗ウイルス薬の候補に挙がっている既存薬は、▽レムデシビル(米ギリアド・サイエンシズ)▽ファビピラビル(富士フイルム富山化学の「アビガン」)▽シクレソニド(帝人ファーマの「オルベスコ」)▽ナファモスタット(日医工の「フサン」)▽カモスタット(小野薬品工業の「フオイパン」)――など。
抗ウイルス候補の薬剤
https://gansokaiketu-jp.com/Gazou/keisai-kou-wirususu-kouhono-yakuzai.png
このうちレムデシビルは、5月7日に日本で新型コロナウイルス感染症治療薬として承認(製品名・ベクルリー)。米国ではFDA(食品医薬品
局)が同月1日に緊急使用許可を出しました。
レムデシビル(米ギリアド)
レムデシビルはもともとエボラ出血熱の治療薬として開発されていた抗ウイルス薬。コロナウイルスを含む一本鎖RNAウイルスに抗ウイルス活
性を示すことが明らかになっており、COVID-19の治療薬として最も有望視されている薬剤の1つです。
米FDA(食品医薬品局)は5月1日、レムデシビルについて、COVID-19の重症入院患者を対象に緊急時使用許可を与えました。許可の根拠とな
ったのは、米国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)主導で中等症から重症の患者を対象に行われた臨床第3相(P3)試験と、ギリアドが行っ
ている重症患者対象のP3試験。NIAID主導の試験では、回復までの期間をプラセボに比べて31%早めることが示され(レムデシビル群11日、プラ
セボ群15日)、死亡率も有意差はつかなかったものの改善傾向が示されました(レムデシビル群8.0%、プラセボ群11.6%)。
日本では、FDAによる使用許可を受けて特例承認を適用する方針が示され、ギリアドが5月4日に承認申請。同7日に開かれた厚生労働省の薬事・
食品衛生審議会医薬品第二部会が特例承認を了承し、厚労省は即日承認しました。
ベクルリー(レムデシベル)の概要
https://gansokaiketu-jp.com/Gazou/keisai-remudesiberu-no-gaiyou.png
ギリアドは2本のP3試験を行っており、4月末に公表された重症患者対象の試験の主要結果(対象患者約6000人のうち397人分の解析結果)で
は、5日間の投与で10日間投与と同等の効果が得られる可能性が示されました。中等症患者1600人を対象としたもう1本の試験は、6月1日に初期
の結果(584人分の解析結果)が発表。レムデシビルを5日間投与した患者は、標準治療のみの患者に比べて投与11日目に臨床症状の改善が見ら
れた患者の割合が有意に高かった一方、10日間投与した患者と標準治療のみの患者では有意差はありませんでした。
現在使われているレムデシビルは点滴薬ですが、ギリアドは吸入剤の開発に着手しています。P1試験に入っており、安全性が確認されれば8月
にCOVID-19患者を対象とした試験を開始する予定。成功すれば、軽症患者にも外来や自宅で投与しやすくなり、同社のダニエル・オデイCEOは
「パンデミックを食い止めるのに重要な意味を持つ」とコメントしています。
ファビピラビル(富士フイルム富山化学)
ファビピラビルは2014年に日本で承認された抗インフルエンザウイルス薬。新型インフルエンザが発生した場合にしか使用できないため、市場
には流通していませんが、新型インフルエンザに備えて国が備蓄しています。
ファビピラビルは、インフルエンザウイルスの遺伝子複製酵素であるRNAポリメラーゼを阻害することでウイルスの増殖を抑制する薬剤。
COVID-19を引き起こす新型コロナウイルスもインフルエンザウイルスと同じRNAウイルスであることから、効果を示す可能性があると期待され
ています。ただし、動物実験で催奇形性が確認されているため、妊婦や妊娠している可能性がある人には使うことができず、妊娠する可能性が
ある場合は男女ともに避妊を確実に行う必要があります。
日本では、富士フイルム富山化学が3月にCOVID-19を対象にP3試験を開始。臨床試験登録サイトに掲載されている情報によると、対象は重篤で
ない肺炎を発症したCOVID-19患者約100人で、肺炎の標準治療にファビピラビルを追加した場合の効果を検証しています。米国でも4月からP2試
験が進行中です。
藤田医科大は5月26日、COVID-19患者にファビピラビルを投与した観察研究の中間報告(同月15日現在)を日本感染症学会のホームページで公
開しました。観察研究には同日時点で全国407医療機関から2158人の患者が登録。中間報告では「軽症患者に投与された場合にはほとんどが回
復している一方、重症患者では治療経過が思わしくないことも多いことが読み取れる」としていますが、比較試験ではなく、COVID-19は軽症の
まま自然に治ることも多いことから、「慎重に結果を解釈することが必要だ」としています。
シクレソニド(帝人ファーマ)
シクレソニドは、日本では2007年に気管支喘息治療薬として承認された吸入ステロイド薬。国立感染症研究所による実験で強いウイルス活性を
持つことが示され、実際に患者に投与したところ肺炎が改善した症例も報告されています。
国内では、無症候または軽症のCOVID-19患者を対象に、対症療法と肺炎の発症または増悪の割合を比較する多施設共同の臨床試験が国立国際医
療研究センターを中心に行われています。
その他
タンパク分解酵素阻害薬ナファモスタットや同カモスタットは、COVID-19の原因ウイルスであるSARS-CoV-2の細胞内への侵入を阻止する可能性
があるとされ、日本では東京大付属病院などでファビピラビルとナファモスタットの併用療法を検討する臨床研究が進行中です。
ナファモスタットをめぐっては、先発医薬品「フサン」の製造販売元である日医工に、第一三共、東京大、理化学研究所を加えた4者が、共同
で吸入製剤の開発に着手。7月から非臨床試験を始め、来年3月までの臨床試験開始を目指しています。カモスタットの先発医薬品「フオイパ
ン」を製造販売する小野薬品も、6月5日からCOVID-19を対象とした臨床試験を開始しました。
腸管糞線虫症と疥癬の治療薬として承認されている駆虫薬イベルメクチン(MSDの「ストロメクトール」)もウイルスの増殖を阻害する可能性
があるとされており、日本では北里大病院が医師主導治験の実施を検討しています。
一方、一時、治療薬の候補として期待された抗HIV薬ロピナビル/リトナビル(米アッヴィの「カレトラ」)は、中国の研究グループが3月に有
効性が認められなかったとする臨床試験結果を米医学誌ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシンで報告。同じく治療薬候補として
注目された抗マラリア薬のクロロキンとヒドロキシクロロキンも、治療効果が乏しいとして米FDAが緊急使用許可を取り消し、WHO(世界保健機
関)も臨床試験を中止すると発表しました。
重症患者に対する治療薬
COVID-19が重症化すると、サイトカインストームと呼ばれる過剰な免疫反応に重篤な臓器障害を起こしたり、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)とい
う重度の呼吸不全を起こしたりすることが知られています。
こうした重症患者に対する治療薬としては、サイトカインの一種であるIL-6(インターロイキン-6)の働きを抑える抗体医薬や、サイトカイン
による刺激を伝えるJAK(ヤヌスキナーゼ)を阻害する薬剤が候補に挙げられています。
covid-19による重症肺炎や、急性呼吸窮迫症候群の治療薬候補
https://gansokaiketu-jp.com/Gazou/keisaijyuushouhaien-nadono-tiryouyaku-kouho.png
武田薬品工業は、米CSLベーリングなど血漿分画製剤を手掛ける海外の製薬企業9社と提携し、原因ウイルスSARS-CoV-2に対する高度免疫グロブ
リン製剤の開発を進めています。10社は、原料となる血漿の採取から臨床試験の企画・実施、製造まで幅広く協力し、ノーブランドの抗SARS-
CoV-2高度免疫グロブリン製剤を共同で開発・供給する計画。今夏にも、NIAIDと協力して成人患者を対象としたグローバル試験を始める予定で
す。
イーライリリーは6月1日から、カナダのアブセレラと共同開発しているSARS-CoV-2に対する抗体医薬「LY-CoV555」のP1試験を米国で開始しま
した。LY-CoV555はCOVID-19の回復者の血液から同定された抗体で、試験結果は6月中に明らかになる見通し。リリーは中国・上海のジュンシ
ー・バイオサイエンシズとも抗体医薬の開発で提携しており、こちらも6月8日からP1試験が始まりました(開発コードは「JS016」)。リリー
はLY-CoV555とJS016の併用(カクテル)も検討しています。
リジェネロンも6月11日から、2つの中和抗体を混合したカクテル抗体「REGI-COV2」の臨床試験を開始。米ビル・バイオテクノロジーは2つの抗
ウイルス抗体(VIR-7831とVIR-7832)の開発で英グラクソ・スミスクライン(GSK)と提携し、今夏にP2試験を始める予定です。米アッヴィ
は、米ハーバーバイオメドやオランダ・ユトレヒト大などと抗体医薬の開発で提携しています。
ビルは米アルナイラム・ファーマシューティカルズと共同でSARS-CoV-2を標的とするsiRNA核酸医薬も開発しており、開発候補として吸入型の
siRNA「VIR-2703(ALN-COV)」を特定。今年の末をメドに臨床試験を始める見込みです。今年5月、国産初の核酸医薬となるデュシェンヌ型筋
ジストロフィー治療薬「ビルテプソ」(ビルトラルセン)を発売した日本新薬も、新型コロナウイルスに対する核酸医薬の開発を検討。バイオ
ベンチャーのボナックもCOVID-19向け核酸医薬の研究を進めています。
米メルクは米リッジバック・バイオセラピューティクスと提携し、同社が開発した抗ウイルス薬「EIDD-2801」のP1試験を米国と英国で実施
中。ファイザーはSARS-CoV-2に対する抗ウイルス活性を示すプロテアーゼ阻害薬候補を特定しており、今年7〜9月期にも臨床試験を始める予定
です。塩野義製薬も北海道大との共同研究でCOVID-19に対する抗ウイルス薬の候補を特定。今年度中の臨床試験開始を目指して研究を進めてい
ます。
オンコリスバイオファーマは鹿児島大と契約を結び、同大が見出した抗ウイルス薬の開発に着手。カネカは国立感染症研究所と共同で治療用抗
体を開発しており、製薬会社と組んで21年度中に臨床試験を始めたいとしています。
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ワクチン
感染を予防するワクチンの開発も進んでいます。
WHOの6月24日時点のまとめによると、現在、臨床試験に入っているCOVID-19ワクチンは、▽英オックスフォード大/英アストラゼネカのウイル
スベクターワクチン「ChAdOx1-S/AZD1222」▽米モデルナのmRNAワクチン「mRNA-1237」▽中国カンシノ・バイオロジクス/北京バイオテクノロ
ジー研究所のウイルスベクターワクチン▽米イノビオ・ファーマシューティカルズのDNAワクチン「INO-4800」▽独ビオンテック/米ファイザー
のmRNAワクチン「BNT162」▽米ノババックスのナノ粒子ワクチン「NVX‑CoV2373」――など16種類。このほかに125のワクチンが前臨床の段階に
あります。
COVID−19向けワクチンを開発している主な企業・研究機関
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オックスフォード大とアストラゼネカのアデノウイルスベクターを使ったワクチンは、英国で5月下旬からP2/3試験に入りました。モデルナの
mRNA-1237もP2試験が始まっており、7月にはP3試験を始める予定です。一方、感染の拡大が落ち着いてきたことで、ワクチンの有効性を検証す
るのは難しくなっています。オクスフォード大ジェンナー研究所のエイドリアン・ヒル所長は英テレグラフ紙に対し、「(開発は)収束するま
での時間と戦い」と指摘し、「現時点では結果が全く得られない確率が50%」と語りました。
ワクチン開発には欧米の大手製薬企業も続々と名乗りを上げています。
米メルクは5月26日、オーストリアのテミスを買収し、COVID-19ワクチンの開発に乗り出すと発表しました。買収で獲得するのは、麻疹ウイル
スベクターを使ったワクチンで、今年後半に臨床試験を開始する予定。メルクは非営利国際組織「国際エイズワクチン推進機構」(IAVI)とも
協業し、IAVIが開発中のCOVID-19ワクチンの実用化を共同で進めます。こちらのワクチンも今年後半に臨床試験に入る予定です。
米ジョンソン・エンド・ジョンソンは、開発中のワクチン「Ad26.COV2-S」のP1/2a試験について、9月の当初予定を前倒しして7月後半に開始す
る予定だと発表。サノフィとグラクソ・スミスクラインは、共同開発中のワクチンについて今年後半にP1試験を開始し、来年後半に開発を完了
させることを目指しています。両社のワクチンは、サノフィの組み換えDNA技術に基づくSタンパク質抗原とGSKのアジュバントを組み合わせた
もの。サノフィは米トランスレート・バイオともmRNAワクチンの開発で提携しており、GSKも抗ウイルス抗の開発で提携するビル・バイオテク
ノロジーズとワクチン開発でも協力しています。
アンジェス、塩野義、第一三共などが開発
国内では、大阪大とアンジェスが共同開発するDNAワクチン「AG0301-COVID19」が、近く大阪市立大医学部付属病院でP1/2試験を始める予定
です。臨床試験登録サイトに掲載された情報によると、対象は20〜65歳の健康成人で、目標症例数は30例。アジュバントを含む同ワクチンを2
週間間隔で2回、筋肉内注射し、安全性と免疫原性を評価します。
塩野義製薬は、グループ会社のUMNファーマで組換えタンパクワクチンの開発を進めており、年内の臨床試験開始に向けて厚生労働省などと協
議を進めています。KMバイオロジクスも不活化ワクチンの開発に着手しており、年度内の非臨床試験終了が目標。アイロムグループのIDファー
マはセンダイウイルスベクターを使ったワクチンを開発中で、9月にも臨床試験を開始する考えです。第一三共は、mRNAワクチンの臨床試験を
来年3月ごろに始めることを目指しています。
田辺三菱製薬もワクチン開発に乗り出しています。カナダ子会社のメディカゴが植物由来ウイルス様粒子を使ったCOVID-19向けワクチンを開発
中。非臨床試験の中間結果で良好な結果が得られたことを明らかにしており、8月までに臨床試験を開始するために規制当局と協議していま
す。順調に進めば、臨床試験は来年11月に終了する予定です。
(前田雄樹)
(公開:2020年2月28日/最終更新:2020年6月26日)
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