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JR北海道・四国、経営破綻危機…救済に税金2千億円投入、JR東日本との経営統合論も
https://biz-journal.jp/2021/01/post_200237.html
2021.01.02 06:00 文=編集部 Business Journal
JR北海道の車両『スーパー北斗9号』(「Wikipedia」より/DAJF)
JR北海道とJR四国の20年4〜9月期の連結決算は過去最大の赤字となった。JR北海道の最終赤字は149億円(前年同期は3億8800万円の赤字)。新型コロナウイルス感染拡大で旅客が低迷した。売上高にあたる営業収益は519億円で前年同期比39.2%減となった。JR四国の最終赤字は53億円(同12億円の黒字)。営業収益は115億円にとどまり、同54.4%の大幅な減収だ。鉄道のほかホテルの利用客が減ったことが響いた。
両社は経営安定基金の運用益を営業外利益として計上することによって、これまで経常黒字を維持してきたが、両社とも赤字に転落した。国土交通省と北海道は20年12月12日、JR北の経営問題をめぐり鈴木直道知事や同社の島田修社長、北海道運輸局の加藤進局長らが参加する会議を北海道庁内で開いた。国交省の上原淳鉄道局長は「この2年間の措置をもう一歩進めたかたちで支援策の充実・強化を図っていきたい」と述べ、21年度以降も財政支援を続ける考えを表明した。
国はJR北に年200億円規模の支援をしている。19、20年度で計400億円を支援した。20年度(21年3月末)で期限が切れるはずだったが、支援の期間や金額は今後調整し、年明けの通常国会に関連法案を提出する。会議にはオブザーバーとして同社が公的支援を前提に維持を検討する8区間の代表を務める道内8市の市長やJR貨物の真貝康一社長も出席した。鈴木知事が就任した19年以降、国やJR北がそろって経営問題を議論するのは初めてだった。
人口の減少が全国の鉄道会社の収益を圧迫している。なかでもJR北が運営する23区間すべてが6年連続の営業赤字。鉄道からバスへの転換などで採算改善を急ぐ。そこに新型コロナウイルスの感染拡大が直撃し、旅行客は激減。JR北は存亡の危機に立たされた。
JR四国は18区間のうち17区間で営業赤字。西牧世博社長は「閑散線区をどうするかという議論を始めざるを得ない」と述べ、不採算路線の存廃を含めて検討する必要性に言及。「5年以内に、『(議論を)始めませんか』との問いかけをする必要がある」とした。西牧社長は「未曽有の危機」との認識を示している。
JR四国は今期中に5カ年の中期経営計画を公表する。経常黒字を目標としていた20年3月期が20億円の赤字となり、国交省から指導を受けたことを踏まえての中経である。同社は鉄道施設を沿線自治体などが保有する「上下分離方式」の導入の是非を含め、協議を進めている。JR四国は2011年度〜20年度の10年間で600億円の財政支援を受けている。
■「三島会社」の苦難
JR九州の青柳俊彦社長は20年5月に初めて20線区の収支を公表した際に、「どうすれば鉄道網を維持できるのか、沿線自治体にも知恵を出してもらいたい」と強調した。赤字額をさらけ出すことで鉄道維持に向けた沿線自治体との議論の糸口を見つけたかったのだろう。
実際にJR九州は豪雨被害で寸断された北九州市と大分県を結ぶ日田彦山線の一部区間にBRT(バス高速輸送システム)を導入することで合意した。BRTは東日本大震災の大津波で損傷した東北の一部路線の復旧に使われた。しかし、鉄路とバスでは運べる人数や利便性が大きく異なる。鉄路をなくす決断を地元の自治体や企業に納得してもらうことは容易ではなかった。それでも津波の被害を受けた地域は人口が大幅に減少し、鉄路を復旧しても採算が合う可能性は極めて低かったから実現した。
JR九州はJR北、JR四国とは違って株式を上場している。鉄道以外の商業施設の運営やマンションの建設など不動産事業に活路を見いだそうとして、株式公開に踏み切った。上場企業になれば、株主の「もっと利益を」とのシビアな要求に応えなければならなくなる。
JR北、JR九州、JR四国は「三島会社」と呼ばれる。「三島会社」はJR東日本、JR東海、JR西日本に比べて経営基盤が脆弱だ。赤字路線のバス路線への転換の問題はこの3社に限った話ではない。JR西日本は18年に広島県三次市と島根県江津市を結んでいた三江線を廃止し、バス転換した。廃線区間は108キロに及び、本州では最長のバス路線となった。
経営が厳しいところにコロナ禍が追撃した。もはや「三島会社」にとって鉄道によるローカル線網維持が「聖域」ではなくなった。
JR北とJR四国の破綻が現実味を帯びてきた。当面、両社の経営破綻を回避しなければならない。JR北は最終的にはJR東日本と経営統合するか、JR東日本の子会社としてスリム化を徹底して生き残りを図るしかないという議論もある。JR四国の受け皿はJR西日本が有力とみられているが、JR東海やJR九州に共同出資を仰ぎ新会社を設立し、JR西日本、東海、九州の連合体がJR四国を支えるという構図も考えられる。
「JR東日本、西日本にも、それぞれのお家の事情があり、すんなりと支援が決まることはない。上場しており、株主の目もあり、利益の相反は許されない。JR北、JR四国を支援することについては徹底的に反対するだろう」(運輸業界幹部)
それでも倒産を回避することが国家的な命題なら協力せざるを得ないだろう。JR東海はリニア中央新幹線を開通させなければならないため、政府・自民党から強く要請されれば、なんらかの協力をすることになる。
■JR北に1200億円、JR四国に1000億円支援
政府はJR北海道に2021年度からの3年で総額1302億円の支援を行う。政府が全面出資する独立法人、鉄道建設・運輸施設整備支援機構が追加出資する。JR四国には5年間で、同じように1025億円を支援する。JR四国は老朽化した工場設備の投資や業務の効率化のためのデジタル投資に充当する。
赤羽一嘉国土交通相が20年12月25日に支援を表明した。21年3月に期限を迎える旧国鉄債務処理法の改正案を1月召集の通常国会に提出する。2社は独立行政法人からの債務を、新たに発行する株式に振り替えるデット・エクイティ・スワップ(DES、債務の株式化)を行う。金融機関に支払う利子の補給と、あわせて財務のテコ入れをする。JR北の青函トンネル、JR四国の本四連絡橋の維持費用も鉄道機構が負担する。未上場のJR貨物についても3年間で138億円を無利子で融資する。
(文=編集部)
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