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コロナ下で上場“熱狂”、リーマン後の最大数に…AI・金融工学・クラウドがブーム
https://biz-journal.jp/2020/12/post_197022.html
2020.12.17 06:00 文=編集部 Business Journal
「Getty Images」より
日本取引所グループ(JPX)は2020年の国内証券取引所への新規株式公開(IPO)企業数が前年比8社増の102社になる見通しだと発表した。春先に新型コロナウイルスの感染拡大で延期や中止が相次いだが、その後の株価の回復を受けて盛り返した。
100社を上回るのは07年(121社)以来13年ぶりの高水準。リーマン後の09年に19社に落ち込んだ後、徐々に回復。17、18年は90社、19年は86社で推移してきた。今年は感染拡大による株価急落で3月以降、18社が上場を中止した。IPOは2カ月以上休止状態となり、再開したのは6月だった。年間で前年比3〜4割減るとの見方もあったが、7月以降、急回復した。
各国の中央銀行が大規模な金融緩和を続けたことや、ワクチン開発への期待から株式市場へ資金が流入し、一転して株高の流れとなった。日経平均株価(225種)は夏以降、上昇傾向が鮮明となり、2万6000円台を回復し、約29年ぶりの高値となった。東証マザーズ指数も10月に14年ぶりの高値を記録した。
こうした流れを受け、春先にいったん上場を中止した18社のうち10社が上場企業となった。
今年の上場で目立つのはクラウドやインターネットといったIT(情報技術)系や、巣ごもり消費の恩恵を受ける消費系など。コロナ下でも成長できる企業群だ。テレビ通販や量販店で実演販売を行っているコパ・コーポレーションは1度上場を中止した後、再び承認を受けて6月に上場を果たした。株価は8月末に9320円と公開価格(2000円)の約4.7倍に上昇した。
9月末に上場した人工知能(AI)システム開発のヘッドウォータースの初値は公開価格(2400円)の11.9倍(2万8560円)に暴騰した。ただ、今年のIPOは小粒だ。これまで上場した企業のうち、初日の時価総額がもっとも大きかったのは雪国まいたけの約832億円だった。
大型上場として期待されていた半導体メモリー大手、キオクシアホールディングス(旧東芝メモリホールディングス)は、10月6日に予定していた東証への上場を延期した。米政府の取引規制によって、大口取引先である中国通信機器最大手、ファーウェイ向けの売り上げが計上できなくなるためだ。“米中貿易戦争”のとばっちりを受けた。キオクシアの時価総額は約1兆5000億円強が見込まれ、2020年最大のIPOになるはずだった。
■年末にIPOラッシュが到来
例年12月はIPOラッシュの月だ。今年も月後半に前年を5社上回る26社の新規上場が予定されている。東京証券取引所は22年4月をメドに、現在の4市場を3市場に再編する方針だが、新市場の上場基準の詳細がまだ明らかになっておらず、新たな基準が明らかになる前に駆け込み的に上場しようとする動きが顕在化。例年以上のIPO人気となった。
なかでも12月17日は5件のIPOが集中した。前日の16日にも3件の上場が予定されている。時価総額ベースで大型のIPO案件になると見られている電子楽器のローランドは16日に東証第1部に再上場する。
12月17日には、BtoC向けにクラウド上で顧客情報管理(CRM)システムを提供するビートレンドが東証マザーズに上場する。利用する企業は中堅・大手クラスの外食・小売業が中心で、毎月の契約更新率は95%を超える。
22日にはウェルスナビが東証マザーズに上場する。金融工学を活用して個人投資家の資産運用を指南するロボットアドバイザーの国内最大手。新しいトレンドの上場企業の誕生といっていいかもしれない。
米グーグルが出資するプレイドは17日に東証マザーズだ。顧客の行動を解析するクラウド型CX(顧客体験)プラットフォーム「KARTE(カルテ)」を展開する。グーグルが日本国内に投資する企業としては2例目の株式公開となる。
元テレビ朝日アナウンサーの中村紀子氏が会長を務める保育サービスのポピンズホールディングスは21日に東証だ。東証第1部になるか同2部かは未定である。ベビーシッター派遣を中心として在宅サービス事業と保育・学童施設の運営を行っている。
マザーズを中心にした新興市場では、新規にIPOした銘柄を買うために、個人投資家が手持ちしている新興株を換金売りするケースが目立ってくる。新規のIPOはメリットとリスク(デメリット)が隣り合わせなのだ。
12月は年末ということもあって、多くの企業が手を挙げるから、有望株を探しやすくなる、ともいわれている。事実、19年12月のIPO銘柄をチェックしてみると、フリー、メドレー、JMDC、JTOWER、AIinsideなどで今やマザーズ市場の主力クラスに育ったものがある。今年のIPOの中からも、明日の有望銘柄が誕生するのだろうか。
(文=編集部)
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