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西武グループの落日…主力「西武鉄道」「プリンスホテル」、利用者激減で危機深まる
https://biz-journal.jp/2020/10/post_188282.html
2020.10.31 06:05 文=編集部 Business Journal
プリンスホテルパークタワー(「Wikipedia」より)
新型コロナウイルスの影響で業績が悪化している西武ホールディングス(HD)は財務基盤を強化するため、子会社の西武鉄道とプリンスホテルが年内に800億円規模の資本増強を実施する。
西武HD傘下の2社は優先株による第三者割当増資を実施。優先株は議決権がないなどの制限があるが、普通株式よりも配当や会社解散時の財産配分で優遇されることから、普通株よりも引き受け手を見つけやすく、主力銀行のみずほ銀行と日本政策投資銀行(政投銀)が引き受ける。
金融機関と交渉して借入金の財務制限条項を「純資産2800億円以上」に引き下げた。6月末の純資産は3385億円で19年3月末に比べて2割減。減少率は主要な鉄道会社で最大という。赤字決算が不可避で21年3月期末の純資産は3010億円に減る見通し。資本増強は喫緊の経営課題だった。コロナ経済下で鉄道会社の資本増強が明らかになるのは初めてだ。
■21年3月期は630億円の最終赤字
2021年3月期の連結最終損益は630億円の赤字(前期は46億円の黒字)を見込む。過去最大の赤字で無配に転落する。売上高にあたる営業収益は前期比40%減の3320億円と大幅な減収。営業損益は560億円の赤字(同568億円の黒字)になる見通しだ。
西武グループは大きく5つの事業に分けられる。西武鉄道は東京の池袋・新宿から西に伸びている。もう1つの柱がプリンスホテルに代表されるホテル・レジャー事業だ。国内47、海外33のホテルがある。不動産、建設、埼玉西武ライオンズなどのその他の事業を加えて5つになる。
外出自粛などの影響で西武鉄道は通勤・通学の定期収入、定期外収入ともに落ち込んだ。4〜6月の運賃収入は前年同期比44%減。7月29%減、8月28%減と苦戦が続く。企業が通勤費を実費精算に切り替える動きが出ており、固定の収入源であった通勤定期が元に戻ることは難しいとみている。21年3月期の旅客運輸収入は26%減の736億円(前期は995億円)になる。
西武鉄道を中核とする都市交通・沿線事業の21年3月期の営業収益は前期比27%減の1228億円、営業損益は73億円の赤字(同229億円の黒字)を予想。新型コロナの影響による減収分は530億円と試算している。
ホテル事業も振るわない。プリンスホテルは、4〜7月に47ホテルのうち42カ所が休業。2021年3月期の客室稼働率は前年同期比74%減の4.3%にまで落ち込んだ。外国人客の姿は消え、平日のビジネス需要も戻らず、7月13.1%減、8月22.9%減と低迷。21年3月期の客室稼働率は24.0%(前期は71.9%)と想定としている。
プリンスホテルを中核とするホテル・レジャー事業は、とりわけ厳しいということだ。21年3月期の営業収益は前期比61%減の877億円、営業損益は552億円の赤字(同85億円の黒字)の見通し。新型コロナによる減収分は1660億円としている。全社の新型コロナの影響は2510億円の減収と弾いているが、その3分の2をホテル・レジャー事業が占める。
西武HDは来期以降も需要が完全に回復することはないと見ている。9月24日の記者会見で高橋薫取締役は「聖域なく、踏み込んだ経営改革に取り組んでいく」と強調した。今期は固定費を当初計画に対して620億円、設備投資を同360億円それぞれ削減する。
■若者に照準を合わせた宿泊特化型ホテル「プリンス スマート イン」を開業
「20代、30代のデジタル世代をターゲットに、プリンスホテルの入り口となるブランドにしていく。向こう10年で100カ所を展開する」
西武HDの後藤高志社長は新ブランド「プリンス スマート イン」の誕生を力強く宣言した。10月8日、東京・恵比寿に「プリンス スマート イン比寿」(客室82)を開業した。業界最大手のプリンスホテルにとって初の宿泊特化型ホテルだ。最上位の「ザ・プリンス」(ザ・プリンス パークタワー東京、ザ・プリンス箱根芦ノ湖など)やファミリー層が中心の「プリンスホテル」など4つのブランドでホテルを展開している。いずれも直営のレストランや宴会場などを持つフルサービス型のホテルだ。宿泊料金は高く顧客は50代以上が中心。先々の需要をつかむためには20〜30代の顧客の獲得は欠かせない。
「プリンス スマート イン」は、1泊1万円台の料金。宿泊客は事前に専用アプリをダウンロードすれば店頭の端末で簡単にチェックインできる。アプリ上で部屋の鍵をダウンロードし、自分のスマートフォンをルームキーとして使うことができる。これは20〜30代のデジタル世代の顧客を取り込むための工夫だ。
21年1月に熱海、同年夏に京都、22年には沖縄にスマート インを開業する計画。地方都市や空港周辺など、プリンスホテルがこれまでに進出してきたエリアとは異なる場所に開業する。
宿泊特化型のホテルは激戦になっている。専業大手のアパホテルや東横インが先行しているが、フルサービス型のホテルも続々参入。藤田観光はミレニアム世代向けの「ホテルタビノス」を、東急ホテルズも同世代向けの「横浜東急REIホテル」を2019年に開業。星野リゾートも「BEB」の多店舗展開を始め、29歳以下なら1泊4000〜5000円で泊まれる(3人利用時)「エコひいきプラン」などで新規顧客の開拓を進めている。
最後発の「プリンス スマート イン」はどうやって勝ち抜くのか。後藤社長の腕の見せどころである。
(文=編集部)
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