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54歳で貯金200万円、保険見直しで65歳で2620万円…子どもの独立が見直しの好機
https://biz-journal.jp/2020/10/post_185871.html
2020.10.24 05:40 中村芳子/アルファアンドアソシエイツ代表、ファイナンシャルプランナー Business Journal
「Getty Images」より
退職が現実に迫ってくる50代。先日、まもなく子どもが大学を卒業するので、保険を見直して貯金を増やしたいというカップルの相談を受けた。現在の貯金は200万円。果たして、退職までに十分な貯金をつくれるだろうか。
■子どもの大学卒業、就職は、保険と貯金見直しの好機
『50代のいま、やっておくべきお金のこと 新版』(中村芳子/ダイヤモンド社)
相談に来られたのは埼玉県にお住まいの54歳の会社員の夫と52歳の専業主婦の奥さま。来年3月にひとり息子が大学を卒業するので、生命保険を見直したい、老後のためにちゃんとためたいという相談だ。
加入している保険は、夫が5本、妻が2本、息子が3本の合計10本。多いがけっして珍しいケースではない。会社で勧められたり、広告で興味を持ったり、親戚が保険会社に就職したり、保険ショップで勧められたり、保険はいつの間にか増えてしまいがちだ。
子どもが小さいときは、稼ぎ手の夫が若くして亡くなったときのために生命保険に入るのが一般的。妻と子の生活費、それから子の教育費を死亡保険金で備えるのだ。会社員だと亡くなったときに3000万〜6000万円くらいの保険金が払われる保険に入っているケースが多い。
だが、子が独立すれば、もう子の教育費も生活費も残さなくてよくなる。妻の生活費分はどうだろう。試算してみると、たいてい遺族年金や貯金、死亡退職金で十分生活していけることがわかる。夫の死亡保障はほとんどいらなくなる。だから、子の独立は保険を見直す絶好の機会となる。
相談者が加入していた保険は次の通り。保険料のトータルは月6万6600円。さあ、これをどれだけ減らせるだろう。
拡大→http://img.asyura2.com/up/d12/318.jpg
■定期付終身保険の特約を全部外したら、月3万4000円の保険料が1400円に!
一番保険料が高いのが、大手生命保険会社の「定期保険特約付終身保険」だ。今では時代後れになりあまり売られていないが、今の50代が一番多く加入している保険のひとつだ。
仕組みはこう。一生、死亡保障が続く「終身保険」に、60歳までなどの一定期間、掛け捨ての「定期保険」で死亡保障をプラスする。これに、だいたい医療特約や介護特約などのおまけがついている。相談者の保険は、終身保険が150万円。定期特約が62歳までで2600万円。これに介護特約や医療特約がついている。医療特約は入院1日1万円、この介護特約は要介護2以上になったときに100万円の一時金が払われる保障だ。
奥さまと話すと「子どもの教育費のための保障はいらなくなるけど、万一彼が亡くなったとき、生活していくためやなんかに2,000万円くらいは必要なんじゃないかしら」と考えておられた。そこで、万一ご主人が亡くなったら、お金がどうなるか考えてみた。
結論からいうと、妻にはお金を残さなくても大丈夫、ということに。どうしてなのかみていこう。
■夫の死亡で住宅ローンがなくなる、遺族厚生年金を受け取る、死亡退職金が払われる
今の夫の手取り年収が600万円くらいだから、夫が亡くなった後も、暮らしていくのに年400万円くらいは必要じゃないか、と奥さんは考えておられた。ところがそんなには必要ない。
まず住宅ローンの返済がなくなる。たいていの住宅ローンには団体信用生命保険がついているので、借り手が亡くなると(保険でローンが完済され)ローン返済がなくなる。独立する子の学費、生活費もこれから不要になる。夫の小遣いや個人支出がなくなる。これを家計簿から計算してみると、今の毎月の支出35万円が、約14万円ですむことがわかった。
また夫が会社員なので、亡くなると遺族厚生年金が払われる。『ねんきん定期便』の数字から試算すると、月11万円が払われそうだ。
A:現在の生活費:月35万円 => B:夫の死後の妻だけの生活費:月14万円
C;遺族厚生年金(予想額): 月11万円
C;生活費の不足額:B―C=月3万円
すると、足りない生活費は月3万円。年36万円。これに毎月はかからないけど年単位でかかる費用や、余暇の費用を加えても、年50〜100万円あれば、今の生活レベルを下げずに暮らしていける。13年後の妻65歳から、自分の基礎年金を受け取り始めると、月々の生活費はほとんど公的年金でまかなえることになるだろう。
また、夫は大手企業に勤めているので、退職前に亡くなると相応の死亡退職金が払われる。今の貯金は200万円で少し心もとないが、これがあれば、年金をもらい始めるまでも安心、もらい始めてからも不安はない。
■独立した子から家賃、食費、光熱費を徴収しよう
先の試算で、夫の死亡後、妻の生活費は遺族年金だけだと月3万円ほどの赤字となったが、独立した子が同居するなら、月5〜10万円の家賃、食費、光熱費を徴収することができる。ひとり暮らしをすれば、最低これくらいはかかるのだから、子の金銭感覚にもプラスになる。
こんなふうに、この相談者のケースでは、夫が亡くなって保険で残すお金がゼロでも、妻はお金で困らないことがわかった。つまり、夫の死亡保障はもういらない、ということだ。
■終身保険150万円を死後整理費用に
ただ、現実には、5000万円の死亡保障があった人が、ゼロにするのは心理的に難しい。こうしてはどうだろう。
葬式代、死後整理費用として、終身保険の150万円を残す。この保険料は月1400円で、しかも60歳で支払いが終わり、保障は続く。続ける価値はある。
定期保険特約は解約。介護特約もあまり必要がないので解約。医療特約は続けてもいいが、古い保険なので、保障が80歳で終わってしまう。今、解約して問題はないだろう。医療保障がないと不安、という場合は、保障が終身続く「医療保険」に新たに入り直すといいだろう。これは次回お話ししよう。
終身保険だけを残して、特約をすべて解約すると、保険料は今の3万4000円から1400円になる。月3万2600円の保険料カット。年39万円だ。
■そのほかの保険、死亡保障のための共済はいらない。がん保険は残す
ほかに、夫、妻、子ともに複数の共済に加入していた。一つひとつの共済の掛け金は2000〜6000円とさほど高額ではないが、合計では月2万3600円。年28万円だ。共済は商品にもよるが、60歳や65歳で保障が小さくなる、掛け金が上がるものが多く、若い人には使いやすいが50代以降にはあまり向かない。死亡保障がいらないので、これらは全部、解約をすすめた。
残すことにしたのは、夫婦のがん保険、子のがん保険だ。保険料は6000円と3000円。ただし子の分の保険料は、独立後は自分で払ってもらう。
この見直しの結果、生命保険料は、月6万6600円から1万400円に減らすことができた。月5万6200円、年67万円の保険料の節約になる。
■これから年200万円以上貯金できる! 65歳で2620万円に!
4月から子が独立することで、子にかかっていた教育費、月5万円がかからなくなる。子から食費などとして徴収するお金のうち月3万円を貯金に。今までの貯金額は月3万円だったが、月11万円できることになる。年132万円。ここに先の保険料節約分、年67万円を加えると年199万円。さらにボーナスから21万円をプラスすれば、年220万円ためられる。
現在54歳。退職まで11年。年220万円の11年で2420万円ためられる! 今の200万円と合わせると2620万円。一部を運用すればもっと増える可能も十分ある。
65歳で住宅ローンが終わる。2620万円の貯蓄ができて、退職金を受け取れば、老後の資金は大丈夫だ。54歳貯金200万円、と不安げだった夫が笑顔になった。奥さまもにっこりしていた。
さらに見直す余地があった、住宅ローンの金利が2.8%と高いのだ。昔借りた固定金利のフラット35。返済期間があと11年で残高が1000万円あまりある。1%以下のローンに借り換えることで、毎月の返済額、総返済額を抑えられるはずだ。これは、ご自分で金融機関に問い合わせていただくことにした。
50代、これからの人生のため、お金の見直すべき点はたくさんある。保険はそのひとつ。
この相談者は、子どもの独立をきっかけに保険を見直すことで、老後資金の見通しをたてることができた。この例を参考に、あなたも実行してください。
次回は50代での医療保険について考えてみよう。
(中村芳子/アルファアンドアソシエイツ代表、ファイナンシャルプランナー)
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