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「まさか、家をなくすとは…」コロナで住宅ローン払えずに競売通告 年末にさらに増える見込みも
https://dot.asahi.com/aera/2020101500015.html
2020.10.17 08:00 野村昌二 AERA dot. AERA 2020年10月19日号より抜粋
住宅ローンを滞納した埼玉県の男性(48)のもとに銀行から届いた、自宅マンションの「競売通告」(個人のプライバシーを守るため、一部を黒塗りにしています)(撮影/写真部・戸嶋日菜乃)
新型コロナの影響から住宅ローンを払えなくなる人が増えている。それに伴い、任意売却や返済条件の見直しを迫られる人も多い。人間にとって大切な生活の基盤が今、揺らぎ始めている。AERA 2020年10月19日号はその実情を追った。
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「まさか、家をなくすとは思ってもみませんでした」
イベント関連の運送会社でドライバーをしている埼玉県の男性(48)は、言葉少なに語る。
男性は20年ほど前に埼玉県内に2700万円のマンションを購入し、住宅ローンを組んだ。月給は約26万円で、月々の支払いは約12万円。母親と2人暮らしで余裕はなかったが、順調に返済できた。
そこに新型コロナウイルスが直撃した。
3月に入ると大規模イベントは軒並み中止となり、会社の業績は悪化。男性の給与は減らされ、手取りで月20万円近くにまでなった。転職したくても50歳を前にして仕事はない。今の職場で働くことにしたが、貯金はなく、4月になると住宅ローンを払えなくなった。ローン残高は1500万円近くあった。
収入が戻らなければ自分の力ではどうにもならない。6月、借り入れた銀行から競売通告の書類が自宅に届いた。
■任意売却の相談が増加
ついにきたか──。
男性は少しでもいい条件でマンションを売りたいと思い、任意売却を決めた。
任意売却とは、住宅ローンが残っている状態で金融機関の合意を得て通常の方法で売却し、その代金によって残債務を解消する方法だ。市場価格よりかなり安く落札される競売と異なり、有利な条件で売却できるメリットがある。
先の男性は、マンションの買い手が見つかれば立ち退きとなるので、今はマンション近くで家賃の安いアパートを探しているという。男性はこうこぼす。
「家をなくさないために、仕事を頑張って働いてきたのに」
住まいは、人間が安心して生活をする上で最も大切な基盤だ。その基盤が今、コロナによって失われようとしている。
任意売却を専門に行う不動産会社「明誠商事」(東京都)の飛田芳幸社長によれば、「住宅ローンが払えなくなった」という深刻な相談は8月以降、急激に増えたという。
「7月ごろまでは1人10万円の特別定額給付金や貯金などで何とかしのいでいたのが、それも使い切り、夏のボーナスも出なかったのでローンが払えなくなった人が多く見られます」
同社には、任意売却の相談だけで月30〜40件あり、コロナ前より10件近く増えた。30代、40代が多く、業種はコロナ禍で大打撃を受けたエンタメや観光、飲食関係に勤める人が多い。
「コロナ禍で倒産が増え続けているので失業者はさらに増え、これから年末にかけ住宅ローンが払えなくなるという人は多くなると思います」(飛田社長)
■返済条件見直しに柔軟
住宅ローンを扱う独立行政法人「住宅金融支援機構」によると、全国のコールセンターに寄せられたコロナに起因する住宅ローンの条件変更の相談は、2月から8月までの間に計3360件。当初は高齢者や自営業者が多かったが、最近は若い会社員からの相談も増えているという。同機構では返済期間を延長して月々の返済額を減らすなどの対応を行っていて、担当者はこうアドバイスする。
「審査はありますが、コロナ禍でもあるので、多くの金融機関が返済条件の見直しに柔軟に対応しています。慌てて金利が高いカードローンなどで借りるのは避けて、住宅ローンの返済に困ったら、まず金融機関に相談してほしい」
(編集部・野村昌二)
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