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コンビニ店舗オーナーから「本部はヤクザ、詐欺」と悲鳴…約束反故にされ800万円借金
https://biz-journal.jp/2020/09/post_178979.html
2020.09.13 06:05 文=鷲尾香一/ジャーナリスト Business Journal
「Getty Images」より
ついに、公正取引委員会(公取委)によるメスがコンビニ業界に入ることになる。
9月2日に公取委は「コンビニエンスストア本部と加盟店との取引等に関する実態調査について」(以下、実態調査)を発表。その結果、コンビニ本部によるさまざまな独占禁止法(独禁法)違反の可能性を指摘し、「本部自ら現状を点検し、取引環境が改善に向かうことを強く期待する。もし違反行為に接した場合は厳正に対処したい」との強い姿勢を示した。
実態調査はコンビニオーナーへのWebアンケートを中心に、大手コンビニエンスストア8本部に対する聞き取り調査などを実施した。大手8チェーンの全加盟店全国5万7524店に実施し1万2093店(21.0%)、オーナー数ベースでは3万1107人中8432人(27.1%)から回答を得た。
調査結果からはコンビニ店の厳しい経営状態が赤裸々になっている。まずは、オーナーの人物像を取り上げると、平均年齢は53.2歳で50代が最も多く、50代以上が60%超となっている。オーナーとなった時の年齢は30代が33.3%、40代が33.2%。加盟年数の平均は14.2年となっている。
また、他の収入源を持たない者が76.7%で、個人(世帯)資産額は500万円未満の割合が60.8%を占め、債務超過状態にあるオーナーが17.3%もいる。ここから見えてくるのは、「片手間ではなく、コンビニ店経営を仕事に定め、それでも経営難(債務超過)に陥っているオーナー」の姿だ。
報告では、本部との間のさまざまな問題について、オーナー自らの言葉で赤裸々に語られている。なかには本部による“詐欺まがい”“脅迫まがい”の行為にまで言及したものが多々ある。こうした行為は、コンビニ店オーナーになる契約段階からすでに始まっている。その一つとして、契約を急かされた例として、以下のようなものがあげられている。
・場所も分からないのに「明日までに返事を下さい」と言われた
・本部の決算期近くで、明らかに急いでいた
・繁忙期までに開店したいという意向で急かされた
・本部の出店ノルマがあるため、締日の月末までに決めなくてはならなかった
・開店後分かったのだが、店舗は作ったもののオーナーのなり手がなく、開店が延期されていた物件だった
・取りあえずサインして印鑑を押してください、細かいことは後で、と言われた
さらに、加盟店の開店準備金などの説明では、以下のような驚くべき実態が述べられている。
・150万円あればできるという説明だったが、実際は800万円ぐらい借金した
・防犯カメラ100万円、釣銭40万円、その他備品、保険、保守契約等合計200万円以上は別途掛かった
・募集要項で提示している金額よりも実際に用意する金額がかなり多い。募集説明会などでの説明はなく、後戻りできない状況で追加分を請求される
■非情なドミナント出店
そして、せっかくコンビニ店のオーナーとなっても、その経営は順風満帆ではない。コンビニ店は10年前に比べて店舗数は1.3倍に増加し、1店舗あたりの人口は2010年から17年までで約2割減少し、競合が激化している。
同じチェーンのコンビニ店がすぐ近くにある光景をよく見かける。これは、各コンビニ本部が進めるドミナント出店(ある地域に集中的に出店する戦略)だ。オーナーたちからは次のような声が出ている。
・500m 以内に出店しないと口頭で説明されたが、300m の場所に出店された
・100m 圏内に同一チェーンの店舗が 2 店舗も開店するとは加盟前には夢にも思っていなかった
・4年前自店より700m のところで同一チェーンができた。指導員は5%しか売上げは下がらないと言ったが、実際当店の売上げは30%下がった
公取委は加盟店の近隣には出店しないという約束を本部が一方的に破る行為について違反にあたる可能性があるとの見解を示している。
■減少をたどる店舗売上
では、コンビニ店の経営実態はどのようなものなのか。1店舗の平均日販は53.5万円だが、その売上は減少傾向をたどる一方で、人件費を中心に経費が増加していることで、経営は厳しくなっている。以下が、年間の売上高と営業費を直近と5年前で比較したものだ。
直近 5会計年度前 差額
売上高 1億8600万円 1億9345万円 ▲745万円
営業費 2299万円 2213.5万円 +85.5万円
廃棄ロス 468万円 478.5万円 ▲10.5万円
従業員給与 1500万円 1417万円 +83 万円
その他営業費 90万円 64 万円 +26 万円
この結果、倒産または休廃業した店舗数は10年の91店から、19年には約3.5倍の316店に拡大している。加盟前に本部から受けた「予想売上げまたは予想収益の額に関する説明」と加盟後の「実際の状況」では、「加盟前に受けた説明よりも実際の状況の方が悪かった」が41.1%で最も多く、「説明を受けていない」が18.4%と20%近くいることも明らかになっている。
コンビニ店オーナーたちの87.3%が週のうち6.3日は店頭に立ち、1カ月に約1.8日しか休暇を取っておらず、仕事を32.5%が「どちらかといえば辛い」、30.2%が「非常に辛い」と回答している。コンビニ店は年中無休の店舗が95.6%を占めている。
その一因が「24時間営業」と「人手不足」が関係している。特に、24時間営業については、近年も大きな社会問題ともなった。24時間営業は91.0%が実施しており、午後22時から翌5時までの採算状況では77.1%が「赤字」と回答している。「引き続き24時間営業を続けたい」は33.2%にとどまっている。一方で、66.8%が「時短営業に切り替えたい」「一度実験してみたい」と回答している。
しかし、オーナーからの「24時間営業をやめることができると最初に説明があったが、2年後申込みしようとしたらそれは絶対にできないと拒否された」「24時間営業は付属契約なので後で変更が可能と聞いていたが、実際は変更不可能だった」という声は多い。
公取委は本部が加盟店に24時間営業を強制することは独占禁止法の禁じる「優越的地位の乱用」にあたる恐れがあると指摘している。
「人手不足」では加盟店1店舗当たりの従業員・アルバイトの平均人数は14.8名となっており、人数が「不足している」が45.7%、「足りているが、少しでも辞められると不足する」が47.8%となっている。
アルバイトの平均時給は5年前の平均819円から現在の926円に上昇している。わずかな上昇ではあるが、前述の通りに売上が減少している中での人件費の上昇は経営の大きな負担となっている。
実は経営不振時には本部の支援などが受けられるのだが、オーナーたちからは以下のような声が相次いでいる。
「融資の申込みをしたが断られた」
「補償は廃業寸前といった売上げの低い店が対象であるため、ほとんどの店は基準に該当せず苦しい生活状況に追い込まれる」
「最低保証があるので生活に困らないと聞いたが、自己資本割れすることがあり、その都度銀行から借入れをしている」
■「解約には1000万円必要」
筆者の知人のコンビニ店オーナーはこうした苦しい経営状況と過酷な労働状況から閉店を決意したが、「閉店までには本部とのさまざまな戦いがあった」という。報告でも、「加入後、解約には1000万円を超える違約金が必要と言われた」「閉店を相談したら違約金や閉店費用は全額加盟店負担と威圧をかけられた」などの声が出ている。
公取委はこの調査を報告書として本部8社に対して取引状況の点検と自主改善を要請し、11月末までの報告を求めている。さらに、無断発注、年中無休・24時間営業、ドミナント出店等についてフランチャイズ・ガイドラインの改正を行う方針だ。果たして、コンビニ業界は“自浄作用”を働かせることはできるのか。注目される。
調査の中で、「加盟店からみた本部のイメージ」についてのオーナーたちからは、「監視官」「支配者と奴隷の関係」「江戸時代の悪代官」「上納金を徴収する組織」「ヤクザ」「鵜飼いと鵜」などの回答が相次いでいるのが、この問題の根深さを物語っている。
(文=鷲尾香一/ジャーナリスト)
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