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【コロナ】JALとANA、事実上の休業状態に…航空業界、未曾有の経営危機に直面
https://biz-journal.jp/2020/04/post_152489.html
2020.04.20 06:30 文=真壁昭夫/法政大学大学院教授 Business Journal
羽田空港(「Getty Images」より)
新型コロナウイルスの感染拡大が世界の航空業界を直撃している。人々の移動が抑制され、旅客数は大幅に減少している。それに伴い、世界の航空業界の業況が急速に悪化している。今後、国内外の旅客需要がどの程度落ち込むか見通しが立たない。航空各社の危機感は日に日に高まっている。航空業界は、これまでに経験したことがないほどの異常な事態を迎えているといえる。
航空旅客需要は、世界経済全体のGDPの変化に大きく影響される。リーマンショック後、日本の航空業界はかなり厳しい環境に直面した。2010年には日本航空(JAL)が会社更生法の適用を申請し、経営破綻に陥った。その後、世界経済が緩やかに回復し、2012年12月から日本の景気は回復局面に移行した。その中で、日本への外国人観光客などが大幅に増えたことなどが、ANAをはじめ国内航空業界の回復を支える大きな要因となった。
現在、そうした動きが急速に止まり始めている。5月の連休、夏休みの航空旅客需要がどうなるかは読めない。今後の感染動向によって、ANAの事業環境が想定される以上に不安定化する可能性は排除できない。そうした不確実性に同社がどう対応するかは、国内経済全体の先行きを考える上で重要と考える
■リーマンショック後のANAの業績動向
ANAをはじめとする航空各社の業績は、世界経済全体の動向から大きく影響される。端的に、世界経済全体で景気が良い場合、業績は上向く。反対に、景気が減速すると、業績には下押し圧力がかかることが多い。まず、この基本的なポイントを確認しよう。
2008年9月のリーマンショック後、世界経済の成長率は大きく低下した。2009年、世界経済全体のGDP成長率はマイナス0.075%に落ち込んだ。それとともに世界各国で企業収益と人々の収入が減少した。
世界全体で海外出張や海外旅行に出かける人が大幅に落ち込んだ。それが、航空旅客需要を低迷させた。ANAの業績は悪化し、2010年3月期の営業損益は542億円の赤字に落ち込んだ。その後、中国の4兆元(当時の邦貨換算額で57兆円程度)の景気対策や、米国経済の緩やかな持ち直しに支えられ、世界経済は徐々に回復した。それが、ビジネスや観光目的でのエアライン利用客の増加を支えた。
世界経済全体が上向く中、ANAは国際線の拡大を進めることによって業績を拡大させた。同社の旅客数合計に占める国際線の割合は、2009年3月期の9%から2019年3月期には16%にまで上昇した。見方を変えれば、ANAは経済のグローバル化への対応を進めることによって業績の拡大を実現した。
具体的には、わが国が観光を成長戦略の一角に位置付け、中国、韓国、台湾などを中心に外国人観光客が増加したことがある。2017年4月、ANAはインバウンド需要の取り込みなどを目指してLCC(格安航空会社)であるピーチ・アビエーションへの出資比率を引き上げ、連結子会社とした。また、中国の需要など海外の要因に支えられて日本経済が緩やかに回復し、ビジネスや旅行目的でエアラインを利用する個人も増えた。その結果、2019年3月期、ANAの営業利益は1,650億円に達した。この間、経営再建が進められたJALの業績が改善したことも併せて考えると、航空業界の収益は各社の事業戦略に加え、世界経済全体の動向に大きく左右されることがわかる。
■新型コロナウイルスの感染拡大とANA
中国を震源地に新型コロナウイルスが世界に拡散したことがANAの事業、業績、財務内容に与える影響はかなり深刻だ。リーマンショック後、世界各国は、中国の需要取り込みなどを重視した。それに沿って、世界的に、中国を中心とするアジア地域向けの航空旅客輸送が増加した。2018年ごろからは米中の通商摩擦の影響や、中国経済の成長の限界などから中国向けの旅客需要には鈍化の兆しが表れた。それでも、米国の労働市場の改善や低金利環境に支えられ、世界経済全体はそれなりの落ち着きを維持した。それが、航空業界の収益を支えた。
その中、欧州を中心に中国の需要取り込みを重視する国が増えた。2019年、イタリア政府は中国の提唱する広域経済圏構想である「一帯一路(21世紀のシルクロード経済圏構想)」への参加を表明した。これはG7参加国で初めてだった。その上、両国政府は文化・観光面の振興を重視し、直行便を増発した。景気の低迷や財政難などの難題に直面するイタリアにとって、中国の需要にアクセスすることは自国経済の安定を目指すために欠かせなかった。
イタリアで新型コロナウイルスの爆発的な感染が発生した背景には、こうした中国への接近が無視できない影響を与えたはずだ。さらに、欧州各国は人の自由な移動を認めることによってEU域内の経済関係の強化を目指した。人の自由な移動によってコロナウイルスがドイツやスペイン、フランスなどに拡散され、各国で医療体制は限界に直面している。
この状況下、日米欧をはじめ世界各国が人の移動を制限し、新型コロナウイルスの感染拡大を抑えようと必死だ。感染を抑えるために各国は国境の封鎖や外出の制限あるいは禁止など人の動線を絞らざるを得ない。
渡航制限などの影響から、4月、ANAは国際線を通常の85%に削減する。当たり前だが、航空業界で飛行機を飛ばすことができなければ旅客収入は得られない。羽田空港などのカウンターを訪れる人もまばらであり、ANAをはじめとする航空業界全体が事実上の開店休業状態に陥り始めている。
■広範な経済活動への影響の懸念
ANAが直面している状況は、他の企業にとっても他人事ではない。人の移動が制限されると、経済活動全体が縮小する。重要なことは、どの程度の期間、このような状況が続くかが読めないことだ。ワクチンの開発には1年程度の時間がかかるとみられる。その状況下、いつ、どのように感染が収束に向かうかが見通せない。感染の影響が長引けば、その分、航空需要は落ちる。欧州各国や米国、さらには日本での感染状況を見る限り、企業も個人も政府も、長期化を念頭に置いて今後の方策を練ることが重要だろう。
ANAが直面する航空旅客需要の急減は、世界経済全体で需要と供給のバランスが大きく崩れていることを示す。実体経済の悪化は避けらず、2020年の世界経済の成長率がマイナスに落ち込むことは不可避の状況にある。
この状況下、企業などは対応が可能な段階で、できるだけの対策を徹底しなければならない。足許、先行きの市況反転を念頭に置いて戦略を練ることよりも、これまでの投資戦略や資金調達などの計画を見直し、守りを固めることの重要性が高まっている。ANAは事業拡大路線を修正し始めた。同社はハワイ路線のシェア拡大に向けて投入を目指していた仏エアバス社のA380の受領を半年程度先延ばしするという。また、ANAは国内7行から約1000億円の借入を検討し、政府系金融機関からの資金調達も目指されていると報じられている。
リーマンショック後、ANAは自己資本を積み増し、財務体質を改善させてきた。ある程度の収益の下ぶれに耐えられる体制はできてはいると考えられる。ただ、新型コロナウイルスの感染の影響がどう推移するか先行きは読めない。状況によっては、金融機関の業績が悪化し、企業の資金調達の不確実性が高まる可能性がある。需要の落ち込みが続けば、自助努力での対応もかなり難しくなるかもしれない。
こうした展開を念頭に、ANAは環境変化への対応を進めようとしている。航空業界はグローバル化の進展とともに業況を拡大させてきた。今後、同社の事業・経営体制がどう変化するかは、新型コロナウイルスが国内外の経済・金融市場に与える影響を考える際の重要な視座となろう。
(文=真壁昭夫/法政大学大学院教授)
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