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コロナ危機で「働く人を全員守る」デンマークと日本の驚くべき大違い 非正規も正規も関係ない
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/71514
20120.04.07 竹信 三恵子 現代ビジネス
コロナ危機で「解雇・雇い止めラッシュ」が勃発!
「新型コロナ感染症」拡大の中、厚労省は、3月末までの2カ月で解雇・雇い止めが1000人を超したと発表した。
2008年のリーマンショックでは、派遣社員などの雇止めが相次ぎ、「年越し派遣村」が開設されて、非正規労働の問題点がクローズアップされた。感染をともなう今回は、それ以上の被害をもたらしかねないとの懸念も出ている。
同月相次いで実施された複数の労組による労働電話相談結果からは、いまや働き手の4割近くに膨らんだ非正社員の実態を無視し、雇用差別も放置した感染対策のちぐはぐが見えてくる。
今回、3月に行った新型コロナ感染にかかわる電話労働相談のうち、ネット上で相談結果を公表している連合、東部労組、全国ユニオンの相談結果を横断的に分析した。さらに、外国籍労働者の状況をつかむため、多言語ホットラインを実施した「ユニオンみえ」に電話取材した。
相談内容をタイプ別に分けると、(1)休業や労働時間削減についての補償の欠如や不足、(2)顧客の減少に伴う雇い止め、(3)休ませない、マスクを着けさせない、などの安全衛生の無視、(4)非正規に対する感染防止策の対象外扱い、(5)一斉休校要請に見られる家族ケアの無視、(5)学生に対する内定切りや障碍者の雇用保障策の欠如、などが浮かぶ。
まず見えてくるのは、政府の「要請」や「対策」が貧困への道に直結しかねない非正社員の実態だ。
政府は感染対策として時差出勤を促した。だが、中小企業でアルバイトとして働く20代の女性は、その結果、8時間の契約が5時間となり3時間分の減収となり、生活が立てられなくなると不安を訴えている。
「無給」になった人たち
また、契約社員からは、感染拡大で顧客が減り、「仕事がないから休んで」と言われて1カ月半すぎ、「このままでは生活ができない。公共料金すら払えない。電気もガスも止められてしまう。どうしたらいいか」との相談もあった。
時給や日給制で働く非正社員は、休めば即無収入だ。昨年5月の10連休でも、「大型連休」がはやされる一方で、「月の半分近くが休みで無給となり生活できない」と非正社員から悲鳴が上がった。だが、これに向き合った政策は実施されなかった。
今回も、非正規が休業補償の外に置かれる事態が横行している。「3月1日から休んでくれと言われたが補償がない」「休業補償は出たものの1日1000円では生活できない」というパートからの訴えは、その一例だ。
深刻なのは、非正規であることを理由にした別扱いが当たり前のように起きていることだ。
「正社員には休業手当を支給するが、非正規は別といわれた」「非正規は有給休暇を使って休んでくれと言われた」「新型コロナの影響で仕事がなくなって休業となり、正社員は有給だがパートは無給と言われた」といった相談は、その典型例だ。
中には「理由を聞いたら『パートだから』と言われた」という露骨なものまであった。
制度上は、非正規でも雇用保険に入っていれば休業補償のための助成金の対象になる。さらに、非正規への対応を問う声の高まりに押され、4月からは雇用保険に入っていない働き手にも対象が拡大された。だが、政府が当初から、「非正社員も対象内」とする姿勢を強く打ち出していれば、こうした事態は防げたはずだ。
一斉休校という「追い打ち」
これに、追い打ちをかけたのが、首相による「一斉休校要請」だ。
突然の「要請」に困惑する親たちに、子どもの世話で休む場合は非正規も含め休業補償を出すとの対策が打ち出されたが、現場に徹底しておらず、次のような相談が女性たちから相次いでいる。
「子どもが 2 人いるが、会社からパートは補償の対象ではないと言われた」「臨時職員は休むと無給になると言われた」「保育園でパートとして勤務しているが、小学校の子どもを 2 人抱えているため仕事を休んでいる。年次有給休暇を 8 日間取得するが、あとは無給で休むしかないのか」。
ほかにも、「公立中学校で非常勤嘱託職員として働いている。休校の関係で欠勤するように言われた。年次有給休暇もないので今後の生活に不安」「(休校に伴う)制度はいろいろあっても公務非常勤の身では利用できない」……。
シングルマザーからは「パートには休校に伴う休業補償はないと言われたが、同居の母が入院し、父は以前から病気。両親は高齢で感染リスクが高く、3月いっぱいは有給で休みたいといったが回答がなかった」といった相談も寄せられ、高齢者ケアへの配慮の欠如も浮かんだ。
東部労組のまとめでは、相談者の6割が女性だ。女性の半数以上は非正規で、休業による貧困が直撃しつつあり、そこに家族のケアの過重が加わるという複合負担が生まれたことになる。
しかも、女性の就労が多い「接待を伴う飲食業」や「風俗業」の関係者が、「暴力団員」などと並んで一斉休校に伴う補償の対象外とされていることも判明し、ここでも、職業差別との批判が高まっている。
このように、政府の価値判断で恣意的に支援対象を選別する手法では、発症しても休んでいられない働き手が多数生まれかねず、「感染対策」がダダ漏れになりかねないどころか、ただでさえ弱い立場の働き手の貧困を一段と促進することになる。
コロナ「便乗切り」が横行
この4月からは、「同一労働同一賃金」と銘打って、同じ仕事なら非正規でも手当や休暇などの待遇を同じにしなければならない制度が施行される。これを生かせれば休業補償も要求しやすくなるはずだ。
だが、その活用には非正社員の特徴である「短期契約」という壁が立ちはだかる。待遇に苦情を言うと、「雇い止め」(契約更新の拒否)に遭いかねないからだ。
こうした雇い止め相談の中には、感染拡大への世間の危機感を利用した「便乗切り」と疑えるものも少なくない。
「社内の同僚の契約社員が、コロナを理由に次々と雇い止めにあっている。私の契約期間終了はまだ先だが、会社は今、私を自主退職させようとしている。辞めてもいいが、自分から退職するのは嫌。会社都合退職にして欲しい」という声は、そのひとつだ。
このような便乗的な雇い止めが大量に起きれば、給付金や生活保護などの安全ネットに頼らざるをえない人々が急増し、システムは破綻してしまう。
こうした仕事の打ち切りが、さらに容易なのは、「多様な働き方」として政府が旗を振ってきたフリーランスによる業務委託や請負だ。雇う側の「雇用責任」がないため、仕事がなくなれば「解雇」の手続きなどが必要ない働き方だからだ。
相談では、これらの働き手からの「請負契約なので補償がない。3 月は少し物流の仕事があるが、4月以降の目途が立たない」「業務委託の仕事がなくなった」「教室の生徒が激減したが自営扱いなので休業補償がない」という声も相次いだ。
こうした中、「3月からイベント関係の会社に正社員雇用される予定だったが、新型コロナの影響で仕事が激減し、入る予定だった寮にも入れず、しばらくはネットカフェに寝泊まりすることになりそうだ」という、「派遣村」の時に似た住宅喪失の相談も寄せられ始めている。
工場の稼働を支えてきた外国籍労働者の事態も深刻だ。
自動車部品工場などが多い東海地方を中心に活動する「ユニオンみえ」には、3カ月が普通だった派遣契約が、すぐに切れるよう1カ月、2カ月に短期化されているとの情報や、「4月からの契約更新を拒否された」、「残業手当を稼げる夜のシフトから昼だけの仕事に切り替えられ収入が激減し、ぎりぎりだった賃金がさらに下がって生活が立てられなくなる」といった相談が相次いだ。
「ユニオンみえ」の神部紅書記長は、感染拡大が契約更改期の年度末にぶつかり、4月からの「同一労働同一賃金」施行を前にしていることで、ここで契約を切っておこうという意識が働いているのでは、という。
会社への発言力が弱い非正規
非正規の立場の弱さは、感染対策の要である職場の安全衛生にも影を落としている。
同ユニオンによると、工場での集団感染を防ぐとして外国人労働者が会社の送迎バスに乗り込むとき、全員に体温測定を求め、37・5度以上だと一律にバスに乗せない措置も取られている。
だが、休業補償が出されない現状では、乗車を拒否は即、生活苦につながる。
これでは、発熱を押し隠したり、ほかの仕事に出かけたりする事態につながりかねず、そうなれば、工場内の感染拡大は防げても工場外の感染対策は無意味になる。
このような、工場内や会社内の安全衛生には気を遣っても、「社外」への影響は意識の外、という発想は、一般企業の事務派遣についても目立つ。
事務派遣たちの「悲鳴」
一般企業の事務派遣については以下のような声がすでに出ている。
「職場(派遣先)に濃厚接触者が出た。本人(相談者)は微熱が続いているので医師からは休むように言われている。派遣先からは 37.5 度以上でなければ、出社しろといっている」
「派遣先の正社員が在宅ワークや自宅待機になった職場で、持病があるので正社員と同じく在宅ワークができないかと聞くと、派遣は年休を使って休むように言われた」
「派遣先では管理者だけが出社し、他の正社員が出社すると、派遣社員の前で『感染したら大変なんだから出社するな!』と叱責した。派遣は感染してもいいと思われているようで、悲しくなった」……。
上記のような相談が相次ぐのは、派遣労働が、実質は社員として働いているのに所属は派遣会社とされ、労務管理を派遣会社任せにできるというサービスだからだ。このようなダブルスタンダードで、十分な感染対策はできるのだろうか。
安全衛生の不備は、他の非正社員からも聞かれる。「ウチは客商売。市内からは感染者は出ていないのでマスク着用は不可」と言われたパートからの相談や、学習塾の講師からの、声がこもって生徒に聞こえないので講師はマスクをしてはいけない、と指示されているという訴えもあった。
こうした事態は、職場にしっかりした労組があればかなり防げる。
だが、労組に加入しにくい非正社員を増やした結果、労組の組織率は17%を切り、働き手の声を会社に伝えるパイプも激減してしまった。
デンマークでは「均等待遇」
介護労働に詳しいデンマーク在住の小島ブンゴード孝子さんにこれらの相談結果を送り、デンマークの状況と比べてもらった。
デンマークでは感染の拡大を防ぐために非常事態宣言が出され、10人以上の集まりや、濃厚接触の可能性が高い事業の営業の禁止などを政府が発表している。
だが、家族と仕事の両立や、自力で学べる仕組みへ向け、日常的にIT教育に多額の公的資金が支出されてきたため、感染防止のための在宅ワークや在宅学習への移行は円滑だという。
日本との大きな違いは、働き手のために税金を使うという基本姿勢が、非常時の安心をつくっている点だ。また、企業別ではなく職業別の労組が67%(2016年時点)の組織率を維持し、会社や雇用形態を越えて同じ仕事なら同じ賃金と労働条件が確保されてきた点も大きい。
その結果、パートタイム労働者は正規労働者扱いであり、労働条件はフルタイムと変わりない。年金も含め、それが労働者の最大の安心・保証に繋がり、今回の局面での政府の保障措置も、すべての働き手に行きわたりやすい。
日本では、非正規、フリーランスなど雇用保障が極端に弱い働き手が増やされ続け、リーマンショック、大災害と緊急時のたびに大量の働き手が貧困化する構造を作り上げてしまった。そんな構造が、「労働弱者」とも言える働き手への差別も増幅させた。
感染拡大による経済的影響は一般家庭にも及びやすく、家族による安全ネットが弱い働き手が被害の中心だった「派遣村」の時期より、広範な対応が必要になりうる。
そうした事態に真に対応するには、一見、迂遠なようでも「企業の活躍より働き手の安心」を軸にした労働政策の大転換という長期の視点が不可欠なことを、今回の感染拡大は語りかけている。
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