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年功序列は消滅するのか 同一労働同一賃金の衝撃 非正規賃金格差改善せず
https://mainichi.jp/articles/20200329/k00/00m/040/137000c
毎日新聞 2020年3月29日 18時24分(最終更新 3月29日 20時36分)
同一労働同一賃金の徹底による格差是正を訴える全国生協労働組合連合会の関係者=東京都内で2020年3月25日午後2時2分、梅田啓祐撮影
「給与、賞与は年齢や在籍年数にかかわらず、職責や業績を適切に反映する体系にする」――。毎日新聞が主要企業126社に対して実施したアンケートの回答で、ある証券大手はこう断言した。年功賃金を「既に見直した」「今後見直す予定」と答えた企業は5割。正社員と非正規社員との間の格差是正を目指す同一労働同一賃金の来月からのスタートで、賃金を仕事の成果で決める「成果主義」や仕事の内容で決める「職務給」に切り替えようとする動きが目立つ。
「定期昇給26歳まで」広がるジョブ型雇用
物流大手の日本通運は同一労働同一賃金の開始をにらみ、勤続年数で賃金を上げる仕組みを廃止した。代わりに職務内容や能力、成果に基づき決める。同社は廃止について「従業員のモチベーション向上」と、法改正による制度開始への対応を理由とした。旅行大手JTBの「年齢の定期昇給は26歳まで」という回答もあった。
成果主義を強く打ち出す企業も。繊維大手の帝人は既に成果主義を導入済みとし、営業部門では「個人の営業達成の度合いを給与に反映させる」と回答した。
同一労働同一賃金は、個々の仕事の内容が同じ働き手には同程度の賃金を支払うべきだという考え方に基づく。だが、日本では長年勤務し、蓄積した知識や能力、経験といった点を評価して給与を決める「職能給」が一般的だ。年功賃金はこの考え方が基礎になる。先に人を雇ってから仕事を割り当てるため「メンバーシップ型雇用」といわれる。
一方、雇用に流動性がある欧米では仕事ごとの内容に応じ、適した人を雇う「ジョブ型雇用」が主流。賃金体系は職務給となる。同一労働同一賃金の考え方は職務給、ジョブ型雇用に近い。
年功賃金見直しは「賃下げの代替措置」
同一労働同一賃金の導入が進み、正社員と非正規労働者の格差是正が進めば、雇用形態を問わずに条件のよい仕事を求めて転職する人が増え、雇用の流動性が高まるとされる。一方で、企業にとっては年齢や勤続年数だけで給与を上げざるを得ない賃金体系に比べ、人件費抑制の手段にもなり得る。企業が賃下げを考えても労働関連法の規定などで制限があることから、ある厚生労働省幹部は「今後、賃下げの代替措置として年功賃金を見直すケースが出てくるかもしれない」とみる。
年功賃金の仕組みの元で働いてきた正社員側の受け止め方はさまざまだ。大手自動車メーカーの男性社員(39)は「仕事の内容次第で、あるいは頑張るほど賃金が増える仕組みなら、モチベーションも上がって競争力強化につながる」と評価する。一方、大手生命保険会社の女性社員(33)は「格差是正のためなら仕方ないが、会社の雰囲気が変わってしまうかも」。日本人の働き方にじわりじわりと影響が及び始めている。【阿部亮介】
非正規「モノ」扱い変わらず
「非正規であることを理由に、ずっと『モノ』同然に扱われてきただけに、4月から急に待遇が良くなるとは思えない」。群馬県内で派遣社員として働く男性(54)は語る。
マスクをつけて通勤する人たち=東京都中央区で2020年3月4日、小川昌宏撮影
長野県内の高校を卒業後、大手電機メーカーに正社員として約10年勤務したが人間関係が原因で退職。それからはアルバイトや派遣社員などの仕事を転々としてきた。今は大手コンビニエンスストアの食品製造工場の期間契約社員だ。
多数の企業を渡り歩き、給与や賞与、教育などの面で格差を味わった。同一労働同一賃金に期待はあるが、派遣元の企業から詳しい説明はない。「安倍さん(首相)は『非正規という言葉をこの国から一掃する』と言ったが、企業は積極的に取り組みそうにない。非正規の待遇改善は後回しされ、うやむやになりそう」と肩をすくめた。
主要企業へのアンケートでは非正規労働者との格差是正など同一労働同一賃金への対応で総人件費が「増える」とした回答は約6割あったが、今後、幅広く労働者に恩恵が行き渡るか。労働界からは懸念を示す声が上がる。
パート労働者が多く加入する全国生協労働組合連合会(生協労連)の柳恵美子・中央執行委員長は25日、東京都内で記者会見を開き「今年の春闘で、ある生協では同じ日数の休暇でも正規は有給、パートは無休にするとの回答があった。労働組合がある生協でさえ恩恵は薄い。労組がない企業では格差是正が進まない恐れがある」と指摘した。
福利厚生、教育訓練でも格差、不明確な国指針
厚生労働省=東京都千代田区霞が関で2019年2月2日、本橋和夫撮影
政府が同一労働同一賃金を働き方改革の柱に据えたのは、非正規の働き手が増える一方で、賃金格差が一向に改善しないことへの危機感が背景にある。
各都道府県の労働局への労働者からの相談件数は2018年度で2525件だったが、賃金や福利更生施設の利用、教育訓練の機会など正規、非正規間の格差を巡る相談が873件(前年度比383件増)で4割を占めた。19年度も同様の相談が増加傾向という。全雇用労働者のうち、非正規労働者は約4割。だが、厚労省の賃金構造基本統計調査によると、18年時点の平均月給は正社員32万3900円に対し、非正規20万9400円と、格差は歴然だ。
制度導入へ政府が旗を振る一方で、正規、非正規労働者間の格差是正を進める上での判断基準となる厚労省のガイドライン(指針)には、企業から不満の声が漏れる。アンケートでは14社がガイドラインに対し「グレーな部分が多く判例も少ない。規定作りに苦慮している」「個社の判断に委ねる部分や不明瞭な点が多く判断が難しい」などと戸惑う様子を見せた。
労働者側の懸念と企業側の困惑。制度の導入はスムーズにいきそうにない。【梅田啓祐】
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