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国際2020.03.17 37 by 津田慶治『国際戦略コラム有料版』
米国やイタリア、スペインをはじめ世界各国で非常事態が宣言されるなど、感染拡大が止まらぬ新型コロナウイルス。3月12日にはNYダウ平均が過去最大の下落幅を記録し、経済への影響も世界規模となってきました。今回のメルマガ『国際戦略コラム有料版』では日本国際戦略問題研究所長の津田慶治さんが、新型コロナ流行が世界恐慌を引き起こす可能性について考察するとともに、日本政府が取るべき「思い切った政策」を提案しています。
■産業危機から世界恐慌になるか?
新型コロナウィルス流行から産業危機、そして世界恐慌になる危険が出てきた。その可能性を検討しよう。
■米国株価
NYダウは、2月12日29,568ドルまで上昇して史上最高株価になった。3月6日25,864ドルでしたが、3月9日2,013ドル安の23,851ドルでサーキットブレーカー発動し、2013年2月に制度導入後初である。3月10日は1,167ドル高の25,018ドル、3月11日は1,464ドル安の23,553ドル、3月12日は2,352ドル安の21,200ドル、12日はセリング・クライマックスになっているようで、サーキットブレーカーが2回も発動した。
3月13日は一転して、1,985ドル高の23,185ドルになった。というような歴史的1週間になった。
1987年10月「ブラックマンデー」(下落率21.1%)以来の大きな下げになっている。今回のコロナショックの下げは、2月12日から3月12日までの下落率は28%である。「ブラックマンデー2.0」とも言える暴落である。13日は、トランプ大統領が、新型コロナウイルスに関して国家非常事態を宣言し、政策を総動員する姿勢を示したことで米景気に対する投資家の不安心理が後退。しかし、まだわからない。
トランプ大統領は、12日に欧州からの入国を止め、給与税を引き下げるとしたし、FRBは、2日間で1.5兆ドルもの資金を短期市場にするが、金融市場の流動性が干上がっているようだ。それと、600億ドルの国債購入を発表した。しかし、それでも12日2,352ドル安になった。13日に大規模な財政出動とトランプ大統領が言ったことで、株価は1,985ドル上昇した。政策の総動員ということで、3月17日、18日のFOMCでも、利下げ1%に追い込まれそうである。
やっと、安倍首相との電話会談で、トランプ大統領も新型コロナウィルスの危険性を認識したようで、本腰を入れて対策を打つことにした。それが国民や投資家に伝わった。しかし、まだ、米国の苦難は始まったばかりである。
今まで、中央銀行バブルで株価は上昇したが、GDPは変わらないし、企業の利益も変わらないので、株価と業績の乖離が拡大していたが、それを巻き戻しているだけとも言える。
もう1つが、株の信用取引が多かった。この取引の追証や強制売却が起こり、大幅な暴落が起きたようである。このため、手持ち資金がなくなり、ドルの流動性が枯渇した。
しかし、ナスダックの下落は、NYダウやSP500に比べて小さいし、BtoB企業は厳しいが、BtoC企業はまだよい。中小企業が厳しい。キャッシュを持つ企業は良いが、キャッシュがない企業は厳しい。
そして、米国も新型コロナで、国家非常事態宣言も出た。FRBの利下げもQEも効果はない。1929年の下落曲線が似ているので、大きく下げて、一度戻して、しかし、また下げるという1929年の株価の動きになるようである。
そして、もう少し新型コロナ感染が早ければ、サンダース氏になったはずが、民主党候補にはバイデン氏になりそうである。1929年と同じようなに、ルーズベルト大統領の社会主義的な政策になると見たが、そうはならないようだ。国民皆保険制度もお預けになった。
■日本株価
日経平均株価は、2018年10月2日に24,448円でバブル崩壊後高値になり、3月6日20,749円であったが、3月9日1,050円安の19,698円、3月10日168円高の19,867円、3月11日451円安の19,416円、3月12日856円安の18,559円、3月13日1,128円安の17,431円、13日は午前9時59分から裁定取引に対する制限を実施して、証券会社の自己取引で現物株の売りを出せないが、結果は大幅下落になった。13日はSQ日で、4兆円もの売買ができている。
13日は、1万7,000円での日銀のETF買いと、海外勢の売りの攻防戦はすごかった。そして、13日午後に2,000億円規模の日銀買いが入り、海外勢が買戻しに動き、急速に株価が戻したが、14時半からまた、海外勢の売り攻勢で、1万7,000円半ばになった。ドル円は105円であり、株安の割に円高にならない。海外勢が米国で、ドル流動性不足から、日本株を売って、円売りドル買いをしたので、円が動かなかったようだ。ドル不足解消のドル買いが発動したようである。
日銀は、ETF買いの増加と国債の買取額を大きくするなどの対策を出すが、このような政策では、限界がある。
3月16日は、上げから始まることになるが、当分下値を追う展開になると見る。
そして、下値のめどを探るために過去の株価を見ると
24,448円:バブル崩壊後高値(18年10月02日) から
19,027円:ブラックマンデー級(下落率21.1%:87年)
17,431円:2020年3月13日(下落率28.7%)
17,072円:チャイナショック級(下落率29.1%:15年)
15,072円:列島改造バブル崩壊級(下落率37.5%:73年)
13,215円:ITバブル崩壊級(下落率45.2%:00年)
11,551円:リーマンショック級(下落率52.1%:08年)
6,994円:バブル後最安値(08年10月28日)
となり、まだ、始まったばかりとも言える。2波、3波の下落がある可能性を視野に入れておくことが重要だ。
日本の新型コロナへの対応は、重症患者への対応を中心にして、検査を行い、医療崩壊は避けた。新型コロナ法案で、広範な施設での隔離が可能となり、やっと、軽症者への検査も実行することになったようだ。1つの模範となる感染症対応策を取ったと思う。
しかし、WHOは、韓国・中国の完全に感染者数を洗い出す対応策を模範と推奨している。米国も車で来て、検査できるようにするという。
この韓国の真似をして、イタリアは医療崩壊を起こして、死亡者数が急激に増えている。イランの死亡者数の増加は、医療体制が脆弱なことによる。しかし、検査をしやすくしても、米国は医療崩壊しない。検査費用が高いので、上流階級の人たちしか受けられない。
東京オリンピックの開催は、中止か延期になるでしょうが、中止になると日本売りがすごいことになる。トランプ大統領も東京五輪を1年延期にした方が良いと発言。IOCは、WHOの勧告を尊重するという。
■新型コロナによる経済恐慌
新型コロナ感染流行で、世界の景気は落ちて、石油消費量は減少することが明らかである。
このため、サウジはOPECプラスに減産提案をしたが、ロシアが拒否したことで協調減産が決裂した。すると、サウジは、一転、原油を増産するとしたことで、原油価格が30ドル/バーレル以下になった。
シェールオイルの原価は、新規では55ドルであるが、既存設備では35ドル程度であり、30ドル以下になると赤字になる。4月・5月には、シェール企業の倒産が出てくる。
シェール企業はハイ・イールド債(ジャンク債)を大量に起債しているが、このジャンク債がデフォルトになる。ジャンク債を集めてリスクを低めたのが、CLO債であり、このCLO債を大量に購入したのが、地銀と農林中金であり、CLO債の暴落で地銀と農林中金の損失は、非常に大きいことになる。CLO債が崩れると金融危機が日本で起きると言われていたが、それが本当に起きることになる。
2月26日には、CLO債から資金が68億ドル流出している。保険のCDSも上昇してきて、3月4日には社債市場からも143億ドルも流出している。
ということで、原油価格が下落すると、債券市場も崩壊する可能性が高い。
そして、米国にも新型コロナが上陸して、人が集まる場所の閉鎖、飲食街の閉鎖などで、今後米国の消費が落ちるが、GDPに占める個人消費が75%もあるので、企業は雇用を削減して景気悪化に備えることになる。最初にサービス業が傷つき、徐々に製造業も傷つくことになる。
そして、今まで株価を上げるために借金をした結果、企業の借入金は15兆ドルもあり、債券6兆ドルと銀行からの融資が1兆4,000億ドルである。借金して資産を買っていたが、借金と資産を増やす両建て経営の破局を迎える。
このため、資産を売却しても、資産価格の大幅な下落で資金が入ってこない。一方、債券市場が混乱すると、金利が上昇して、企業の起債ができなくなり、債券のデフォルトが増え、かつ資金の確保ができなくなり、運転資金がなくなり倒産が多発することになる。
債券市場の混乱は、「灰色のサイ」と呼ばれるミンスキー・モーメントとなり、株、債券、不動産も金など資産の全部売りになる。銀行の融資も飛ぶので、金融危機にもなる。
ということで、パンデミックから産業危機になり、その後金融危機になるが、その上に原油価格暴落から債券市場の崩壊が重なることになる。大きなドミノ倒しが始まっている。
このため、ムニューシン財務長官を中心に、PPTメンバーが徴集されて、株式市場の株価維持の対策を打っている。このため、13日のNYダウは上がったが、まだ予断を許さない。このため、FRBも日銀と同じ様に、株を買えるようにする法律の改正も検討課題に挙がっているという。
同様に欧州でも感染が拡大してきたが、日銀と同様に金融政策には限界がある。しかし、財政出動は、ドイツが反対しているので、欧州の経済も大きく落ち込むことになる。
逆に、日本の大企業の内部保留額は500兆円もあり、1年間ぐらいは耐えられる体質になっている。米国企業の身売りが出て、日本の大企業は、米企業の買収が選り取り見取りのような状態になるはず。
現時点でよいこととしては、中国の感染収束が期待できる状態になり、サプライチェーンの復活で、製品が出回れば、インフレを抑えることができる。このため、中国の早い復活を期待したい。ここにしか、希望を見いだせない状態でもある。
4月までに新型コロナが収まれば、ブイ字回復になるが、4月以降になれば企業倒産が増えて、産業危機や金融危機になり、経済回復は、長時間がかかることになる。
もし、半年、世界的な感染拡大が続き、同時に世界的な景気後退も起きると、新型コロナ感染で死ぬより、経済的な問題で死ぬ人の方が数百倍も多くなる危険性もある。
■経済政策が重要
GDPは、10月から12月で7.1%も落ちているので、経済政策としては、思いきった政策が必要で、日銀は、一層の量的緩和を行い、株価が2万円になるまでは、無制限にETF買いを行うことが必要である。そして、日銀内特別会計で、株の管理をして、2万数千円で株を売り、収益を得て、次の経済混乱に備えることである。透明性を確保して、株の売買を行うことだ。
量的緩和では、地銀や農林中金が持つCLO債を起債金額で買うことである。これにより金融危機を起こさないことが必要である。
政府は、大規模な財政出動して、中小企業の借金を棒引きするような徳政令を出し、半年程度の融資を行い、銀行には、中小企業への融資金額を債権化して、それを政府・日銀が買うことである。
フリーランスや非正規雇用者には、金を配り、中小企業の正規雇用労働者は給与分の補助金を政府が出すことである。そのようにして、この疾病が収束した後の景気回復を早期にできる準備をするしかない。時間を止めて、その間の生活費を政府が面倒を見ることである。
消費税は、ゼロではなくマイナスにするのも面白い。中国での生産が軌道に乗っているなら、消費税マイナスで、政府が後で補填するようなことでもしないと、ぜいたく品や耐久消費財の消費が動かない。日本も米国ほどではないが、消費がGDPの65%を占めるので、消費の活性化は必要である。それで消費を繋ぐしかないように思う。
新型コロナウィルスの由来論争から米中貿易戦争中止へ
このコラムでは、新型コロナウイルスが、人工物か自然物の議論を止めているが、米中間で、このウィルスを生物兵器としての人工物とした論争が起きている。米国は、武漢ウィルスと言い、中国は、米国が武漢でこのウィルスをばら撒いたという。
この論争にも注目する必要がありそうだ。米中論争の切欠になる。米国は、中国からの輸入品がなくなると、インフレになり景気後退で、スタグフレーションになる。どこかで、米中貿易戦争を止める必要が出てくる。
ということで、米中での貿易戦争終結の段階に入ることになる契機になる可能性もある。トランプ大統領は、中国との思想的な論争を望んでいないし、新型ウイルスの由来にも興味がない。経済的な観点だけしか興味がない。
このため、米国のスタグフレーションを解決するためには、中国からの輸入品が必要になる。そのために、米国は対中輸入関税UPを止めることになると見る。
中東での動乱
イランの感染拡大と死者の増加で、イラン国内に不満がたまっている。この国内の不満を海外に敵を作り、国民の目をそちらに向けさせる政策を打つような気がする。
イラクにある米軍基地をロケット弾で攻撃して、米兵2名を殺した。この報復として、親イラン民兵の基地を空爆したが、それが発展すると、中東戦争になる。
トルコとシリアの戦闘は、ロシアの仲介で停戦になったが、まだ予断を許さない。
中東戦争で原油が止まると、原油価格は上昇するので、債務危機は起こらない可能性もある。それを狙っている国がいるような気もする?
さあ、どうなりますか?
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