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トヨタ“裸の王様”章男社長の独裁、社員が辟易…囁かれる息子の世襲、会社私物化批判も
https://biz-journal.jp/2020/03/post_146053.html
2020.03.14 06:30 文=河村靖史/ジャーナリスト Business Journal
「CES 2020」、トヨタが実証都市構想を発表(写真:AFP/アフロ)
トヨタ自動車が4月1日付けで副社長職を廃止することに対して、社内で動揺が広がっている。豊田章男社長が絶対的なトップとして今後も君臨し続けるとともに、息子である豊田大輔氏を次期トップに据えるための体制づくりを着々と進めるという章男社長の思惑が透けて見えるからだ。
社長に就任して10年以上が経過し、トップ交代を期待していた社員は落胆の色を隠せないでいる。多くの取り巻きに囲まれ、不平や批判は一切耳に入らない「裸の王様」の専横は、当分続くことになりそうだ。
トヨタは2011年に取締役の人数を27人から11人に減らすなど、章男社長主導で役員体制を段階的に見直してきた。2017年には取締役の人数を社外取締役を含めて9人体制に減らすとともに、元社長など、取締役経験者らのポストで61人いた相談役・顧問を9人に削減するなど、スリム化を進めてきた。
2018年にはトップダウン経営を明確化するため、副社長を各社内カンパニーのトップ兼本部長と位置付けた。章男社長は記者会見で自身と副社長6人を「7人の侍」と呼び、記者から冷笑を浴びせられていた。それから約2年。トヨタは副社長職を廃止することになり、副社長は「6人の落武者」と揶揄されることになる。
現在の副社長のうち、販売全般を担当するディディエ・ルロワ氏と、技術開発を担当する吉田守孝氏の2人が退任し、残り4人の副社長は「執行役員」に降格となる。ルロワ氏は兼務する取締役は留任するものの、4月以降、業務にはタッチしない。
「ルロワ氏は、お追従しか言わない副社長のなかで唯一、章男社長にも反対意見を述べる人物。昨年の東京モーターショーで、章男社長肝煎りのイベントとして実施した公開経営会議にも参加しなかった」(関係者)
そのあたりが退任の理由と見る向きがある。また、カルロス・ゴーン氏の問題でゴタゴタしていたルノーの次期トップとしてルロワ氏の名前が何度か挙がったことに「章男氏が不快感を示した」との声もある。
また、開発担当の吉田氏が退任するのは「自動車業界の世界的なトレンドとなっている電動化や自動運転への対応が遅れた責任を追及されたから」との声もある。
トヨタでは、4月に降格となる4人の副社長を含めて、執行役員の21人は全員、同格の立場となる。つまりトヨタの業務執行の階層は社長と、その下にそれぞれ担当を持つ執行役員が並列でぶら下がるだけで、社長に権限を集中させる。サプライヤーなどから「最早、章男氏の暴走は誰も止められない」(全国紙記者)との懸念も出ている。
■役員体制変更の狙い
さらに今回の役員体制の変更の発表資料に記された章男社長のコメントに、落胆した社員も少なくない。章男社長は、副社長ポストを廃止する役員体制の変更は「次世代のために『トヨタらしさ』を取り戻すため」と説明。ただ「『トヨタらしさ』を取り戻す。それをしなければ、次世代にタスキをつなぐことはできない」としており、トップの地位にとどまり続けることを宣言している。ある関係者は「役員体制の変更と、章男氏のコメントから、息子の大輔氏がトップに就任するまで、自身がトップに居座り続ける気だ」と感じたという。
トヨタは2019年に常務役員、常務理事、基幹職1級・2級、技範級を一括りして「幹部職」に集約した。これが大輔氏を幹部にするのが目的と見られている。大輔氏は現在、トヨタの自動運転技術の開発子会社TRI-ADのシニア・バイス・プレジデント。以前ならトヨタ本体に復帰した場合、無理に昇格させても「基幹職2級」程度どまりと見られるが、制度改正でいきなり幹部職に就くことができるようになった。加えて、従来、トヨタの社長は副社長の中から選抜してきたが、今回の副社長職の廃止で、次期社長候補となる執行役員に大輔氏が就くまでの期間を大幅に短縮できる。
■章男社長の味わった苦労
トヨタが経営の階層を極限まで減らしているのは「章男氏が経験した社長になるまでの苦労が関係している」と指摘する声がある。章男氏がトヨタの取締役に就任した2000年。当時会長だった奥田碩氏は「取締役までは豊田家に配慮して、その後は実績で評価する」と述べていた。豊田章一朗名誉会長の意向を受けた張富士夫社長(当時)は、着々と章男氏を昇格させたが、張氏の後任社長の渡辺捷昭氏は章男氏をまったく評価していなかった。
このため、章一朗名誉会長がリーマンショックの経済危機で赤字に転落した責任を半ば強引に追及して渡辺氏をトップの座から引きずり降ろし、章男氏が社長に就任したが、「実力からいってリーマンショックがなければ(章男氏の)社長の芽はなかった」と見る向きは強い。役員になっても周囲を納得させながら、トップになるまでの階段を一段一段上がっていく苦労が身に染みている章男氏は、大輔氏を簡単に後継者に引き上げるため、経営陣の階層を減らしているというわけだ。
ただ、意見する幹部を遠ざけて、周囲は子飼いの茶坊主だけで固め、大手広告宣伝会社も使って社外に「章男さんはスゴイ」と強要するやり方に反感を持っていた社員は少なくない。章男氏は2009年にトヨタの社長に就任、在任10年を超えているだけにトップ交代の期待は高まっていた。しかし、今回の役員体制の変更で、章男氏はさらに権力を集中させて、その地位に踏みとどまると同時に、実力も未知数なのに「豊田家」出身というだけで息子を後継者にする道を拓いているように映る。
トヨタは上場会社で、豊田家全体でも出資比率は1%程度。オーナー企業ではないトヨタが世襲制を続けることには「会社の私物化」として批判する声も強い。数多くの不平・不満を抱えた巨大自動車メーカーの先行きを懸念する声は確実に強まっている。
(文=河村靖史/ジャーナリスト)
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