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旧MRJ失敗で“三菱グループ”内の序列崩れる…三菱重工は失墜、三菱地所が台頭の機運
https://biz-journal.jp/2020/03/post_145303.html
2020.03.09 06:10 文=小川裕夫/フリーランスライター Business Journal
MRJ90(「Wikipedia」より/Marc Lacoste)
三菱重工業(三菱重工)が社運をかけて取り組む国産ジェット機の開発が、苦境に立たされている。
三菱グループの御三家は、祖業の海運・造船業を手がけてきた三菱重工がその筆頭格とされる。その三菱重工は、かねてから国産ジェット機の開発に血道をあげてきた。それは、もはやビジネスの枠を超えて“三菱の力”を国内外に誇示するため――などとも、政財界では冷ややかに語られてきた。
三菱重工は国産ジェット機スペースジェット(旧MRJ)の開発にあたり、2008年に子会社の三菱航空機を設立。そこから足掛け10年以上の歳月と莫大な資金を投じてきたが、いまだに飛行機はテイクオフできていない。14年前後には「間もなくロールアウト(発売開始)」とも喧伝されたが、待てど暮らせど朗報は届かなかった。そして、このほど6回目の納入延期が発表され、ロールアウトは早くても21年度以降になることが決定。
今回の納入延期は、公式発表前から情報を掴んでいた日本経済新聞とNHKが報道していたが、三菱重工はそれを頑なに否定していた。三菱重工にとって、納入延期は三菱グループ全体を揺るがす一大事でもあったからだ。経済紙の記者は言う。
「3度目の納入延期あたりから、記者たちの間では『もはや飛ばないのでは?』という疑問が芽生え始め、今では特に延期が発表されても驚くニュースではなくなりました」
ここまでの失態を演じている三菱重工だが、実は航空機分野のみならず他分野でも苦戦を強いられている。三菱重工は造船業を18年に分社化。祖業でもある造船業を切り離したことは、三菱の退潮を予感させる出来事だった。
■三菱商事の孤軍奮闘
しかし、三菱御三家のなかで苦戦を強いられているのは三菱重工だけではない。三菱UFJ銀行もゼロ金利や長引く不況、フィンテックによる金融業界の勢力図再編など、厳しい環境下にある。そうしたなか、三菱商事だけが孤軍奮闘している。2000年前後、ITによって業者間が直につながることが容易になった。これまで業者間の仲介役を務めることで利益を得て巨大化してきた商社は存在意義を失う。そのため、この時期は商社不要論が強くなった。ある大手商社の社員は、言う。
「私が入社したのは2010年代に入ってからですが、このときはすでにITの登場で商社の屋台骨であるトレード事業は見る影もない状態でした。それで、ファイナンスという分野に進出したわけですが、この分野もフィンテックによって侵食されつつあります。そうした逆風もあり、商社は20年代には生き残れないという悲観論もありました。
しかし、もともと商社の強みだった資源・エネルギー・食糧の3分野が最近になって息を吹き返しています。資源や食糧は需要や価格が安定しないので、売り上げの変動が激しく、黒字と赤字を繰り返すことになりますが、だからこそ長期的なビジネス戦略の取れる商社の出番なのです。また、世界中にネットワークを構築している商社だからこそ、全世界での取引が可能で、食糧の安定供給に商社は欠かすことができないプレイヤーです。エネルギー分野においては、再生可能エネルギーがこれから伸びる分野で、これまで商社が培ったスキルやネットワークが本領を発揮できる分野です」
■勢いに乗る三菱地所
商社全体が息を吹き返し、5大商社のトップに立つ三菱商事は売り上げを伸ばす。当然、グループ内での地位は自然と上がる。こうなると、三菱重工と三菱UFJ銀行を凌ぐ発言力を持つようになると思われがちだが、実際は簡単に序列が入れ替わることはないのが実情のようだ。
そして、御三家に迫るほど勢いをつけているのが、“丸の内の大家さん”と呼ばれてきた三菱地所だ。丸の内という一等地に安住してきた三菱地所だが、ここ数年間は“丸の外”で奮闘してきた。それらが実を結びつつあるなかで、再び丸の内に目線を向けている。
三菱地所は21年からの今後10年間で、大丸有(大手町・丸の内・有楽町)に6000億円〜7000億円を投資すると発表。大丸有が再び変貌しようとしている。三菱地所にとって、10年間で6000〜7000億円という投資額は決して大きな額ではない。これまでにも三菱地所は大丸有の開発に十分すぎるほどの莫大な投資をしてきたが、さらに投資をするのだ。それだけに、今回の発表は「大丸有開発の主導権を取りにきた」「三菱グループ内での覇権争いではないか?」といったさまざまな憶測を呼んでいる。
三菱重工と三菱UFJ銀行が逆風にさらされているのを尻目に、三菱商事、そして三菱地所が着々と歩を進めている。
(文=小川裕夫/フリーランスライター)
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