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かんぽ不正どころか、みんな金融機関には痛い目に遭っている…“無料”に踊らされ結局は損
https://biz-journal.jp/2020/02/post_142877.html
2020.02.23 文=藤井泰輔/ファイナンシャル・アソシエイツ代表 Business Journal
昨年12月、記者会見で頭を下げる日本郵便の横山邦男社長(当時、以下同)、日本郵政の長門正貢社長、かんぽ生命の植平光彦社長(左から)(写真:毎日新聞社/アフロ)
かんぽ生命の不正販売の問題では、販売者側が知名度を武器に、高齢者を中心に顧客に不利益となる契約を無理矢理に結んでいた実態があきらかになりました。実は、こんなにマスコミが大々に取り上げる問題だけではなく、若者も含めたみなさん消費者が、金融機関から痛い目に合わされていることは結構多いのです。しかも、そのことに気付いていない人もたくさんいることが、今の日本の本当の問題です。
そこで、最近良く耳にするようになった「金融リテラシー」の観点から、金融商品を購入するに際して、みなさんは最低限どれだけの知識を持っていなければならないのかを考えてみることにしたいと思います。
■金融リテラシーとは
金融リテラシーとは、金融に関する知識や理解というような意味で、実際には金融商品を自分の生活に活かす能力(金融活用力)といったものです。日本人は、この能力が他の先進国に比べて劣っているという調査結果があります。
保険販売の仕事をしていて思うのは、確かにそうだろうなという実感です。生命保険の見直しの相談を受けていると、年間何十万円も支払っている商品について、その内容すら理解していない人が驚くほどいるのです。「担当者を信頼して加入したんだけど」と言われると、「それは、人を信じることで、自分で考えて判断することを放棄しているということですよ」と言いたくなります。
金融リテラシーは高いに越したことはありませんが、要は、金融商品に関しては、知識に見合った購買を心がけることが大切です。定期預金の金利が0.01%で、今は預金より投資の時代だというマスコミの情報についつい乗っかって、銀行などに勧められるまま安易に投資信託や外貨建ての生命保険を購入したり、入院への備えは医療保険だと、テレビや新聞の宣伝を鵜呑みにしてあまり考えもしないで商品を購入したりすることが問題です。かんぽ生命の問題にしろ、購買者が特に必要と感じていない商品を購入してしまっていることが最大の問題といえるのです。
つまり、良くわからないまま商品に手を出してしまうことが一番の問題ということです。「わからないものには手を出さない」、これが金融商品と付き合うための基本中の基本です。少しでも金融商品を自分の生活に活かそうと考えるのであれば、最低限の金融リテラシーを持とうということです。
■まずは、サービスは有料であるという意識を持つ
私は、結構昔からコンピューターを使っているのですが、インターネットが出始めの頃、「こんな情報がタダで取れてもいいのか?」と疑問に思ったものです。今では、インターネットも当初と違って一定部分が商用と結びつき、情報が広告などと絡んでタダではないという認識も多くの人が持っていますが、それにしても、日本人の情報やサービスに対するコスト意識は低いように感じます。
生命保険販売の現場では、無料相談というのが最近幅を効かせています。では、なぜ彼ら(私と同じ保険代理店)は、ことさらに無料相談を掲げて人を集めたがるのでしょう。それは、取りも直さず相談に来た人たちから契約を取ることが目的であることは容易に想像がつきます。銀行や証券会社など金融機関が催す無料相談会や無料セミナーなども同じ趣旨です。
保険販売の仕事をしていて特に思うのは、多くの人の意識に、「サービスは本来有料である」ということが欠けているのではないかということです。私のところへも、「本を読みました」「記事を拝見しました」などと言って、保険の相談を持ちかけられることがあります。そのこと自体はありがたいのですが、依頼に対して誠意を持って対応した挙げ句、その内容を参考にして近所の代理店で契約をしましたと平気で言ってくる人がいるのには閉口します。それならば、最初からそこで相談すればいいのに……。量販店で説明を受けて、家電製品をネットで購入するのと同じ扱いです。
それよりもっとひどいのは、時間を掛けてつくった回答に対して、礼のひとつも言ってこない人もいるのです。
それもこれも、保険相談は無料、サービスはタダという認識がそうさせているのではないかと思います。ただ、問題は、そうした方法で安直に金融商品の購入を決めた人には、金融リテラシーは身につきにくいということです。
話が少し脱線してしまいましたが、金融商品一般について、人の手が介在しているところには必ずコストが掛かっているわけで、本当に無料などということはないことにまずは意識を持っていかなければいけないということです。それが一見無料のようでも、情報発信をする側は、なんらかの形でそのコストをカバーしようとするのが自然で、それは、結局購入者が支払うのが道理だということです。
投資信託にしても、投資の対象を人が選んで商品を組み立てている以上、そこにコストは掛かるわけですし、それが販売手数料や信託報酬として、購買者側の負担になることは誰にでもわかる事実です。最近では、競争が激しく、売る側も手数料収入の減少に苦慮しているようですが。
そうした金融商品に掛かるコストをしっかりと計算することなく、過去の運用実績のみを頼りに商品選びをするようでは、金融リテラシーはゼロと言わざるを得ません。
■知識を金融リテラシーまで高めるには、販売者が提供する情報をそのまま知識として置き換えるだけでは心もとない。
例えば、生命保険には、掛け捨てと貯蓄型の2種類があるというのは、よく言われることですが、こうした単純な知識だけでは、その金融商品の本質は見極められず、掛け捨ては損で、貯蓄型のほうが得という短絡的な結論を導きがちなのです。
しかし、実際は、保険はその商品性からしてすべて掛け捨てであるということと、貯蓄型と言われるのは、掛け捨てと積立が合わさっただけの商品であることを知っていれば、自ずと、今の超低金利時代に今後何十年も超低金利で積立をすることが得かどうかの判断は容易につくはずです。
かんぽ生命の問題しかり、外貨建保険の問題しかり、「名の知れた販売者を信じる能力(性癖)」は、金融リテラシーとはまったく相容れない能力なのです。販売者側から提供される情報や知識は、商品を売るために都合の良いものであることがほとんどです。販売手数料やコストなど売る側にとって都合の悪い情報を声高にいうことは決してしないのです。だから、その金融商品の都合の悪い部分をしっかりと認識した上で購入を検討することが必要です。
そんなの当たり前だと思う人もいるかもしれませんが、実際にはそうなっていないのが現実です。生命保険文化センターと組織があります。そこでは、「公正・中立な立場で生活設計と生命保険に関する情報を提供しています」ということになっていますが、私から見ると、販売者の都合が色濃くにじむ情報も少なくなく、金融商品では、「公正・中立」という言葉には特に注意が必要です。
自分にとってどういうお金の備えが必要なのか、そのための手段は、貯金、保険、投資信託などの投資商品なのかをきちんと判断する能力こそが、金融リテラシーなのです。商品パンフレットを読み漁ってそこからの知識だけを積み上げてもあまり意味はありません。増えたら嬉しいけど、減っては困るお金を、金融商品に廻すのは、よくよく考えてみる必要があるのです。
次回は、ぜひ知っておいてほしい金融リテラシーを上げる具体的な知識をいくつか紹介します。
(文=藤井泰輔/ファイナンシャル・アソシエイツ代表)
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