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“復興バブル終焉”が建設業界を襲い始めた…被災地の工事減少で倒産増加、五輪バブル崩壊も
https://biz-journal.jp/2020/02/post_141569.html
2020.02.17 文=長井雄一朗/ライター Business Journal
東日本大震災の津波によって破壊された岩手県大船渡市の中心部(「Wikipedia」より)
2011年の東日本大震災以後、被災地の建設投資は活況を呈していた。宮城県仙台市では建設関係者が飲み歩く姿が随所で見られるなど、復興が景気を刺激していたことは確かだ。同時に、人手不足で東京やほかの地域から建設職人が引き抜かれる動きも活発化した。
しかし、東北地方全体が潤ったわけではなく、建設投資の増加は太平洋側に限定された。そして、いわば“復興特需”を謳歌していた建設業界の雲行きが怪しくなっている。
19年4月には、福島第一原子力発電所事故による除染工事を請け負うなど、復興工事で実績を上げていた全建設事業協同組合が東京地方裁判所へ民事再生法の適用を申請した。東京商工リサーチの「2019年(1-12月)建設業倒産状況」によると、震災や自然災害の復旧・復興工事が一巡した東北の建設業の倒産件数は、18年の82件から19年は86件(前年比4.8%増)に増加した。
東京商工リサーチ情報本部情報部の増田和史課長は「東日本大震災に伴う建設業の“復興バブル”は、すでに崩壊したと見ていいでしょう」と語る。
■福島と宮城だけで50社が倒産
被災当時、東北の建設業界は氷河期で休廃業・解散を選択する業者も多く、一人親方の建設職人は転職してコンビニエンスストアで働くケースもあったが、復興により需要が高まったことで、建設業に復帰した例も多いという。復旧・復興工事ではとにかく人手が必要な現場も多く、人手不足が続いたことで、建設職人の大移動が始まった。東京をはじめ、近隣の山形県や秋田県などからも職人が手配されたのだ。
これは、悪くいえば引き抜きである。当時、被災地の専門工事会社の職長は、応援に来た山形の建設職人に対して「これだけ出すから、ここに留まってくれないか」と言って人材を獲得していたという。仕事が豊富で稼げるため、そのまま被災地に留まる建設職人も多かったようだ。また、そういった建設職人が飲み歩くことで被災地の繁華街が賑わうという副産物も生まれた。
「基本的に、福島第一原発事故による除染工事、高台移転工事、解体工事などは、それほど高い技術を要しない工事です。ただ、実施するには重機などを購入しなければならないため、会社としては負担が大きい。そのため、それらの工事を継続して受注することができれば問題ないのですが、工事の案件自体が減少すると、会社としては経営が行き詰まってしまうのです」(増田氏)
東北の建設業者の倒産事例を見ると、土木工事、除染工事、解体工事、木造建築工事をメインにしている会社が多い。復興需要に伴い規模を拡大したが、需要のピークアウトによって倒産するケースが増えているようだ。また、負債10億円規模の大型倒産ではなく、中小規模の業者が多い。前述の全建設事業協同組合の負債総額は7億4636万円で、重機設備購入などに伴う借り入れが重荷になっていたという。
金融業界では地方銀行の合併問題が本格化しており、建設業界内では「地銀の合併とともに、地方のゼネコンの合併問題も浮上するのでは」とささやかれているようだ。すでに、準大手の戸田建設が福島県に本社を置く佐藤工業を完全子会社化しており、今後はゼネコンの合従連衡が活発化することが予想される。
全国で見ると、19年の建設業の倒産は1444件で前年度比0.9%増、11年ぶりに増加。復興需要やオリンピック需要で活況を呈し、倒産抑制の牽引役となっていたが、今後の推移が注目される。
都道府県別では、東京180件、大阪158件、神奈川・愛知が107件、埼玉80件の順。東北の建設業者の倒産を県別に見ると、青森12件、岩手9件、宮城35件、秋田4件、山形11件、福島15件となっている。宮城に次いで多い福島は原発事故に伴う除染工事で潤ったが、それもほぼ終了したことが影響している。
一方で、倒産を避けられたケースもある。たとえば、大手ゼネコンが被災地で行った工事に下請けとして入った地元の専門工事会社は、その数年間で大手との関係をうまく構築する。そして、今度は東京五輪関連で首都圏で建設需要が高まると、大手ゼネコンはそちらのプロジェクトに参画することになり、その専門工事会社も再び下請けとして受注するという流れだ。その専門工事会社は東京営業所を設立し、首都圏の建設職人の拠点となっているという。
「被災地の復興工事は、今は高い技術を要するものに質が変わってきています。そのため、被災地の工事が縮小していくと業者の倒産も増えるでしょう。もともと工事が少なかったところに、復興のために設備投資や職人確保がなされましたが、今はそれが重荷になっているのです。技術がある会社は引き続き受注し、経営が安定しますが、土木、除染、がれき処理、解体などに依存していた業者は厳しいでしょう」(同)
■復興バブルの終焉
また、もうひとつの課題が高齢化だ。東京商工リサーチの調査によると、最近の人手不足関連倒産は、代表者や幹部役員の死亡、病気入院、引退などによる「後継者難」型が多くなっている。「経営者の年齢層が高いほど、業績が悪くなる傾向にあります」(同)
東京商工リサーチの19年「休廃業・解散企業」動向調査によると、19年に休廃業・解散した企業は全国で4万3348件、代表者の年齢は60代以上が8割を超えている。産業別では建設業が7027件と多く、高齢化による事業承継の難しさが浮き彫りになっている。
今夏の東京五輪が終わった後、“五輪バブル”崩壊後の建設業界がどのような道筋をたどるかは不透明だが、少なくとも、東日本大震災の復興バブルはすでに終焉したといえそうだ。
(文=長井雄一朗/ライター)
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